スイフトの洗練性は向上 機敏な身のこなし
走り出せば、スズキ・スイフトの引き上げられた洗練性に感心する。新しい防音材と肉厚なカーペット、油圧エンジンマウントなどを採用し、ルノー・クリオ(ルーテシア)に劣らずスムーズだ。
【画像】小さなハッチバックは魅力的! スズキ・スイフト ルノー・ルーテシア 同等サイズの競合モデルは? 全172枚
2台とも、高速域では風切り音が大きめに聞こえる。しかし、驚くほど穏やかな気持ちで高速道路をこなせる。
スイフトは5速MT、ルーテシアは6速MTだが、トップギアのレシオは燃費重視でロング。急な坂道は例外だが、頻繁なシフトダウンは必要ないほどトルクが太い。市街地を越えて、遠くを目指そうという気になる余裕がある。
乗り心地では、フランス車のルーテシアに一日の長がある。サスペンションはストロークが長くしなやかに動き、うねるような区間でも、アスファルトが剥がれた穴にも、見事に対応。低いスピードでも快適といっていい。
スイフトはやや硬めながら、路面へ落ち着いて追従。舗装のつぎはぎの多い市街地では、やや落ち着きが足りないように感じた。そのかわり、郊外の道を飛ばしたり、コーナーを積極的に駆け抜ける場面でキラリと光る。
ステアリングは正確で、重み付けも丁度いい。シャシーの四隅にタイヤがレイアウトされたプロポーションと、1tを切る軽い車重も相まって、ルーテシアの比較にならないほど機敏に身をこなす。
走りを輝かせる1.2L 3気筒エンジン
カーブへ突っ込めば、フロントタイヤは粘るようにラインへしがみつき、リアアクスルが横方向の負荷を適度に受け止め、ドライバーを中心に旋回。アクセルペダルを緩めれば、ラインが内側へ絞られていく挙動も気持ちイイ。
運転する楽しさを、スイフトはしっかり宿している。乗り込む度に、気が散る運転支援システムをオフにする手間を忘れさせるほど。もっともこれは、欧州の安全規制へ対応させた結果ではあるのだが。
さらにこの走りを輝かせるのが、宝石と称したくなるようなスズキの1.2L 3気筒エンジン。自然吸気で最高出力は82psと小さいにも関わらず、スターター・ジェネレーターが低回転域でのトルクを加算し、小気味良く走れる。
回転上昇は意欲的で、サウンドも好ましい。キビキビとシフトレバーを動かし、限られたパワーを引き出すという面白さもある。
もちろん、ルーテシアも運転は楽しい。より落ち着いたマナーで、大人な印象を伴う。優しい乗り心地と、操縦性がバランスしている。だが、スイフトのように魅力的な快活さはない。6速MTのフィーリングは、僅かに曖昧だとも感じた。
ステアリングホイールはより軽めで、情報量は少なめ。サスペンションはスイフト以上のボディロールを許し、滑らかな路面以外では影響が出てしまう。不安なくカーブを駆け抜けていけるものの、正確性では及ばないだろう。
タイヤのグリップを活かしきれないのか、ルーテシアはアンダーステアも早め。トラクション・コントロールが介入し、意図せずブレーキがかかってしまう。
ファミリーカーとしての能力はルーテシアが上
加速力では、ターボチャージャー付きで90psのルーテシアの方へ軍配。中回転域から16.2kg-mの太いトルクが生み出され、差は小さいとはいえ、スイフトより速い。ブースト圧が高まると、急にパワーが増すような振る舞いを好きな人もいるだろう。
しかし、低回転域でのレスポンスではスイフトが優れる点も興味深い。最大トルクは、11.4kg-mなのだが。
それぞれに強みを備える、今回の2台。日常的に一般道を長く走り、都市部まで通勤し、時々遊び心を解き放ちたいと考えるドライバーなら、スイフトの訴求力が勝るだろう。新しいマイルド・ハイブリッドは燃費も良く、21.0km/Lを簡単に出せるのもうれしい。
ルーテシアは、英国ではエントリーグレードの価格が大きな魅力。好印象なインテリアはスイフトより僅かに広く、乗り心地は優しく快適。角の取れた上質なマナーで、ファミリーカーとしての全体的な能力では上だろう。
それでも、この時代に小さなハッチバックを選び、内燃エンジンを楽しみたいと考えるなら、スイフトへ惹かれるはず。リソースを活用し、幅広い特徴を提供できる事実を知ると、複数が生産終了へ追い込まれたことが一層残念に思えてくる。
この2台のクルマとしての価値が、従来以上に高まっていることは明らかだ。こんな楽しい比較を、数年後もできることを祈りたい。
スイフトとルーテシア ハッチバック2台のスペック
スズキ・スイフト 1.2マイルド・ハイブリッド・ウルトラ(英国仕様)
英国価格:1万9799ポンド(約380万円)
全長:3860mm
全幅:1735mm
全高:1495mm
最高速度:168km/h
0-100km/h加速:12.5秒
燃費:22.7km/L
CO2排出量:99g/km
車両重量:945kg
パワートレイン:直列3気筒1197cc 自然吸気+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:82ps/5700rpm
最大トルク:11.4kg-m/4500rpm
ギアボックス:5速マニュアル(前輪駆動)
ノー・クリオ(ルーテシア) TCe 90 エボリューション(英国仕様)
英国価格:1万7795ポンド(約346万円)
全長:4053mm
全幅:1798mm
全高:1439mm
最高速度:173km/h
0-100km/h加速:12.2秒
燃費:18.9-19.2km/L
CO2排出量:118-120g/km
車両重量:1178kg
パワートレイン:直列3気筒999cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:90ps/5000rpm
最大トルク:16.2kg-m/2000rpm
ギアボックス:6速マニュアル(前輪駆動)
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みんなのコメント
交差点を曲がるだけでも気持ちよく運転できることに驚きました。
エンジンはスポーツ以外はちょいアンダーパワー