F1第16戦イタリアGPのレーススタート前、レコノサンスラップを終えて16番グリッドにマシンを止めた角田裕毅(RB)は、このグランプリから新しく担当のレースエンジニアを務めることとなったエルネスト・デジデリオを探して歩を進めた。レース前、無線ではなく、肉声で会話する最後のチャンス。角田はデジデリオと最新の情報交換と最後の確認を行った。
そのふたりにゆっくりと近づいていく人物がいた。前戦オランダGPまで約3年半、角田のレースエンジニアを務めてきたマティア・スピニだった。角田の横に立ったスピニだが、ふたりの会話に割り込むことなく、まるでふたりを見守るかのように、静かに会話を聞いていた。角田も横にいるかつての盟友と目を合わせることもせず、新しいレースエンジニアのデジデリオだけを見つめ、デジデリオの話を集中して聞いていた。
角田裕毅、接触の損傷で7周リタイア「とても悔しい。ニコがぶつかってきた」新パッケージ評価の機会を失い嘆く代表
こうして、角田とデジデリオは、ふたりによる初めてのレースに臨んだ。
前戦オランダGPでは、スタートでポジションを落とした角田。その後、データを確認したところ、原因は角田のクラッチをつなぐときのパドルのリリース操作に関係していたことが判明した。
「そんなに複雑なことではなく、モンツァに向けてはこれまで以上に気をつけた」と言う角田は、ポジションを維持して1コーナーを通過していった。その後、1周目のバックストレートで2台を抜いて14番手にポジションアップした角田は「タイヤもマネージメントできていたので、いいレースができる」と感じながら、周回を重ねていた。
ところが、1周目のポジション争いで後退していたニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)が、徐々に角田の背後に迫ってくる。そして、5周目の1コーナーで角田のインに飛び込む。しかし、ブレーキをロックさせたヒュルケンベルグは止まりきれずに、角田と接触した。
「ハースのマシンがすごく遠いところからタイヤスモークを上げながら突っ込んできて、僕のインサイドにヒットしてきました。僕には何もすることができませんでした」
順位を下げながらも次の周も走行を続けた角田だが、フロアに大きなダメージを負った角田は、1コーナーのブレーキングで挙動が不安定となり、止まりきれない。そのため、7周目にピットインし、そのままレースを終えた。
「もしかしたら、ポイントを獲れたレースだったかもしれませんが、それよりも痛かったのは、今回持ち込んだ新しいフロアの走行データを集められなかったことです。それができなかったのは、チームとして痛いです」
なお、ジョニー・ハーバートを含むモンツァのレーススチュワードは、事故の責任はヒュルケンベルグにあるとして、ヒュルケンベルグに10秒ペナルティと2点のペナルティポイントを科している。
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