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【メルセデス・ベンツ EQS SUV】電気自動車の実力を実車でテスト!

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【メルセデス・ベンツ EQS SUV】電気自動車の実力を実車でテスト!

新車試乗レポート [2023.09.02 UP]


【メルセデス・ベンツ EQS SUV】電気自動車の実力を実車でテスト!
文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス

【レクサス UX300e】電気自動車の実力を実車でテスト!【2023年改良新型】

 

 欧州や中国では、クルマを取り巻く環境や政府の補助金政策なども追い風となり、EV(電気自動車)のセールスが急伸。そうした中、近い将来、EV専業へと舵を切ることを決定・発表するブランドも増えている。対する日本も、普及はまだまだこれからという状況ながら、補助金の充実や新しいEVの登場&上陸など、EV関連のニュースが次々とメディアをにぎわせている。そうした状況もあり、「そろそろかな」とEVが気になり始めている人も多いのでは?

 とはいえエンジン車とは異なり、EVの所有はハードルが高いのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なるため、どんなモデルが自分にとってベターな選択なのか見分けるのが難しい。

 本連載は、EVや自動運転車といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同様のルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで各モデルの得手不得手を検証し、皆さんの“EV選びの悩み”を解決することを目的とする。

 今回テストに駆り出したのは、メルセデス・ベンツの「EQS SUV」。同ブランドが展開する3列シートSUVのEVは、果たしてどんな実力の持ち主なのだろうか?

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メルセデス・ベンツ EQS SUVのプロフィール

メルセデス・ベンツ EQS580 4MATIC SUVスポーツ
 2023年第二四半期のEV販売がグローバルで対前年比123%を記録するなど、順調にセールスを伸ばしているメルセデス・ベンツ。マーケットニーズ次第で2030年までにすべての新車販売をEVにシフトする可能性を打ち出していることもあり、さまざまなカテゴリーに新しいEVを積極的に投入している。

 ここに採り上げる「EQS SUV」もそのひとつ。大人7名がゆったり快適に過ごせる3列シートのフルサイズSUVで、プラットフォームにはメルセデス・ベンツが開発したEV専用の“EVA2”を採用している。

 そのボディサイズは、全長5135mm、全長2035mm、全高1725mm、ホイールベース3210mmという堂々としたもの。エクステリアは数千回に及ぶ仮想風洞でのテスト結果を受けたデザインとなっている。

 その結果、アンダーボディなどで生じる乱気流を巧みにコントロールするほか、F1マシンにヒントを得たランニングボード、空力を意識したホイールデザインなどにより、Cd値(空気抵抗係数)はSUVとしては驚異的な0.26をマークする。

 大柄なボディゆえ取り回し性が気になるが、EQS SUVは独自の4WS機構“リア・アクスルステアリング”を搭載。最大10度までリアタイヤが切れるため、最小回転半径は5.1m~とコンパクトカー級だ。

 インテリアでは、ダッシュボード全面に高精細ディスプレイを3枚配して、その上から1枚のガラスで覆った“MBUXハイパースクリーン”が目を惹く。エアコンやオーディオを操作する物理スイッチがほぼ存在せず、始動/停止時のパワースイッチやハザードボタンを除けば、ほぼすべての操作をタッチディスプレイ内に集約している。

 セカンドシートは、前後130mmの電動スライド機能を備えるほか、背もたれも電動で前方へ14度、後方へ4度リクライニング。ゆったりとくつろげるスペースが確保されている。また、不要時はフロア下に格納されるサードシートにもシートヒーターを備えるなど、すべての乗員の快適性を追求している。

 大柄なボディを活かしたラゲッジスペースは、キャンプなどのアウトドアレジャーユースにも対応するゆとりの広さ。セカンドシート利用時の容量は645~880Lで、5名分のシートを確保しながら4セットのゴルフバッグを積載することができる。さらにセカンドシートの背もたれを倒すと、最大2100Lという余裕の荷室が出現する。

 そんなEQS SUVは、「EQS450 4MATIC SUV」と「EQS580 4MATIC SUVスポーツ」の2グレードをラインナップ。今回試乗した後者はシステム最高出力400kW(544ps)、システム最大トルク858Nm(87.5kgm)を発生する。

 なお、搭載するリチウムイオンバッテリーの容量は107.8kWhで、1充電当たりの航続可能距離はWLTCモードで593kmとなっている。

■グレード構成&価格・「EQS450 4MATIC SUV(MP202302)」(1542万円~)・「EQS580 4MATIC SUVスポーツ(MP202302)」(1999万円~)■電費データ「EQS450 4MATIC SUVスポーツ(MP202302)」◎交流電力量消費率225Wh/km >>>高速道路モード:231Wh/km◎一充電走行距離・WLTCモード:589km
メルセデス・ベンツ EQS580 4MATIC SUVスポーツ

【高速道路】優れた空力性能を感じさせる電費データ
 

 メルセデスのBEV専用プラットフォームを採用したモデルはセダンのEQSとEQEが先にデビューしているが、それぞれにSUVも用意される。今回、EQS580 4MATIC SUVスポーツを取り上げるにあたり、以前にテストしたセダンのEQS450+のデータと比較しながら検証していきたい。
 EQS580 4MATIC SUVスポーツの高速電費は
制限速度100km/h区間のその1が4.2km/kWh、その4が5.1km/kWh、
制限速度70km/h区間のその2が6.3km/kWh、その3が5.5km/kWh。
 EQS450+の高速電費は
制限速度100km/h区間のその1が5.2km/kWh、その4が4.9km/kWh、
制限速度70km/h区間のその2が6.2km/kWh、その3が5.9km/kWh。
 車両重量はEQS580 4MATIC SUVスポーツのほうが340kg重い2900kgなので、実電費はセダンに対して悪化しているが、その差は思ったりよりも少なかった。
 WLTCモード電費はEQS450+が182kWh/km=5.49km/kWh、EQS580 4MATIC SUVスポーツが 225Wh/km=4.44km/kWhと約20%の差があるが、今回の高速電費の差はその1だけは18%なものの、その他は10%以下に収まっているからだ。重さに加えてRWDか4WDかの違いもあるが、加減速が少ない高速巡航では電費の差が出にくいとみることができる。
 外気温はEQS450+のテスト時は9~12℃、今回は29~33℃でだいぶ条件が違う。BEVは冬場のヒーターの負荷による電費悪化がもっとも大きいが、夏場のエアコンもそれなりに悪化する。これまでのEVテストの結果をみてみると、EQS450+がやや不利といったところだろう。


往路の高速テストコース

往路の高速テストコース。東名高速道路 東京ICからスタート。海老名SAまでを「高速その1」、海老名SAから厚木ICから小田原厚木道路を通り小田原西ICまでを「高速その2」とした。復路の高速テストコースは小田原厚木道路の小田原西ICから東名厚木ICを経由し横浜青葉ICまで走行。途中海老名SAで充電を行った

【ワインディング】上りはきついが回生能力に光るものを感じた
 

 箱根ターンパイクは約13kmの距離でスタート地点とゴール地点の高低差が950m以上もあり、登り区間はどのBEVも電費がキツいが、2900kgものヘビー級にとってはなおさらだ。

 電費は1.3km/kWhだったが、EVテスト史上でもっとも悪い部類だが、BMW iX M60、BMW i7も同じ電費。EQS450+は1.4km/kWhだが、メルセデスAMG EQS53 4MATIC+は1.3km/kWhとなっており、車両重量のわりには健闘しているとも言える。
 下り区間では電費計から計算すると5.1kWhを回生したことになる。これはなかなか優秀で、EQS450+の4.1kWhを上回る。重さと4WDが効いているのかもしれない。BMW iX やi7も回生量は多く、最新のドイツBEVの進化が著しいようだ。


自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した

【一般道】重量がストレートに電費に反映された
 一般道での電費は3.2km/kWh。EQS450+が4.5kWhで約30%の悪化で、今回のテストでもっとも差がついた。

 ドイツ車の重量級BEVは、高速電費は意外と悪くないが、一般道ではそれなりに悪化する傾向がみられる。アウトバーンの走行を意識して空力性能を始め高速電費に効くところに磨きをかけているものの(EQS SUVのCd値は0.26と大型SUVでは世界トップレベル)、ストップ&ゴーが多い街中ではさすがに重量の影響が大きいのだろう。

 なかでも2900kgのEQS580 4MATIC SUVスポーツには厳しいステージなのだ。


東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約22kmの距離を走行した

【充電】過去最高の充電効率を計測し進化を実感

海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません
 スタート時のバッテリー残量は80%、走行可能距離は406km。156km走行して復路・海老名サービスエリアに到着したときにはバッテリー残量45%、走行可能距離233kmになっていた。

 出力90kWの急速充電器を30分間使用して、得られた電力は41.7kWhで81%、417kmまで回復した。出力は充電開始直後から80kW弱で、終了間際は87.4kWとほとんどロスがないほど。充電量の41.7kWhは延べ55台のEVテストのなかで新記録で、これまでの記録だったアウディRS e-tron GTの39.2kWhを2.5kWh上回ってみせた。

 急速充電の受け入れ能力も、バッテリーの熱コントロールなどで日々進化しているようだ。高速道路でも200km程度は走れる計算なので、現時点では実用的と言えるだろう。以前にメルセデスAMG EQS 53 4MATIC+を同じ充電器に繋いだときには35.8kWhの充電量だったが、バッテリー残量が62%→97%だった。やはり80%を超えて上限に近づくほど絞られるようだ。


EV専用設計であるため、足元空間やシート座面高さ・長さについても不満なし

メルセデス・ベンツ EQS SUVはどんなEVだった?

テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏
 BEVのフラッグシップのなかでも、セダンよりもさらに迫力があるSUV。後席の座り心地もセダンより上で、ショーファー的に使うのに適している。

 ボディサイズはでかいが、後輪が10°も切れるので小回りはびっくりするほど効く。慣れれば都市部でも持て余すことは少なそうだ。

 BEVのSUVはミドルサイズで2000kg前後、大型になると2500~2700kgといったところだったが、さすがに2900kgは重く、ワインディングロードの走りなどでもその影響が感じられた。

 このあたりになると、FCV(水素燃料電池)にスイッチしたほうがいいような気もするが、残念ながらメルセデス・ベンツの乗用車はFCVをあきらめてしまっている。

EQS580 4MATIC SUVスポーツ(MP202302)■全長×全幅×全高:5135×2035×1725mm■ホイールベース:3210mm■車両重量:2900kg■バッテリー総電力量:107.8kWh■フロントモーター最高出力:135kW(183ps)/5344~8851rpm■フロントモーター最大トルク:290Nm(29.6kgm)/0~4285rpm■リアモーター最高出力:265kW(242ps)/5198~8851rpm■リアモーター最大トルク:568Nm(57.9kgm)/0~4340rpm■システム最高出力:400kW(544ps)■システム最大トルク:858Nm(87.5kgm)■サスペンション前/後:4リンク/マルチリンク■ブレーキ前後:Vディスク■タイヤ前/後:275/45R21/275/45R21取材車オプションボディカラー[アルペングレー(ソリッド)]、ナイトパッケージ、ナッパレザー:ネバグレー/ブスケブルー、シップデッキオープンボアウォールナットウッドインテリアトリム

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みんなのコメント

3件
  • やはりテスラ電厨のせいでテスラだけが嫌われているんだな。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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