東京モーターショー2019のメガウェブ会場で開催された「FUTURE EXPO(フューチャー エキスポ)」で、トヨタの燃料電池車(FCV)「MIRAI Concept(ミライ コンセプト)」を初公開された。
トヨタ「MIRAI」が2014年12月に発売されてから、現在までに発売された燃料電池車はホンダ「クラリティ FUEL CELL」のみ。東京オリンピック開催が来年2020年に迫るなか、インフラ整備の遅れが普及の大きな影響を与えている。
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そんな普及が遅れている燃料電池車だが、商用車の分野でも開発が進められている。そして、その性能や航続距離などを勘案すると、インフラ問題が解決した場合、大型輸送車に関しては、実は燃料電池車のほうがEVよりも現実的であるということが考えられるのだ。今回は、そのことについて取り上げてみたい。
文:国沢光宏/写真:TOYOTA、編集部
ベストカー2019年12月26日号
【画像ギャラリー】現在発表されている量産&実証試験中のFC輸送車両を紹介!
■インフラさえ整えば、EVよりも現実的なFC大型輸送車両
ここにきてトヨタはトラック、コンテナヤード用のトラクタなどのパワーユニットとして燃料電池の試験導入を始めた。
東京モーターショーのシャトルバスにも燃料電池を使う「SORA」が使われ人気。聞けばディーゼルの臭いでクルマ酔いする子供たちからすれば大歓迎だったという。こういった大型車に燃料電池を使うメリットはあるのだろうか? 結論から書けば「乗用車より向いているかも」ということになります。以下じっくり説明したい。
2018年3月に発売されたトヨタの量販型燃料電池バス「SORA」。155psのFCスタックを2基、水素タンク10本を搭載する。2019年8月には、ITS(高度道路交通システム)機能を活用できるように改良された
こちらがSORAの車内。定員は79名(座席22名+立席56名+乗務員1名)となっている
まず燃料電池車の課題といえば、言うまでもなく設置に巨額の投資が必要になる水素ステーションの数だ。乗用車の場合、いろんな地域を走り回るし、走行距離だってさまざま。昼夜問わず水素減った時に補給したくなります。
一方、例えば路線バスだと乗用車とまったく違う使い方をする。朝、決まった時間に車庫出て、終日決まったルートを走るため、水素ステーションの場所や、利用時間も決められるのだ。水素タンクの容量に合わせた運行をすればいいから、航続距離の問題もなし。
コンテナヤードのトラクタだって状況は同じ。終日コンテナ船と、埠頭内にあるコンテナ置き場を移動するのみ。コンテナ置き場に水素ステーションを作ることで、燃料電池トラクタを多数稼働させます。長距離トラックはどうだろう?
電気と比べ圧倒的に航続距離長く、水素充填にかかる時間は電気の充電に比べたら短い。定期便であればトラックステーションと高速道路のサービスエリアに水素ステーションを作っておけばいいだろう。
北米トヨタが、米トラックメーカーのケンワースと共同開発したFC大型商用トラック。MIRAIと同じ水素タンクを6本搭載し、満充填時の航続距離は約480kmだという
出力特性だって素晴らしい。冷却さえ行えば、フル出力を連続して引き出しても問題なし。SORAなどに使われている燃料電池(スタック)は、MIRAIと同じ155ps。これをふたつ使ってSORAを走らせている(路線バスは一般的に250ps程度のディーゼルを積む)。
言うまでもなく燃料電池ってディーゼルエンジンより圧倒的に軽くてコンパクト。どこに搭載したっていい。高速道路を走るトラックだと燃料電池を3つ積めば465psで、これまた充分な出力になります。
コスト的にも成り立つ可能性大。燃料電池のコストは、量産することによりドンドン下がっていく。新型MIRAIの燃料電池も、現行モデルよりコストダウンできている。ディーゼルエンジンといえば、これ以上下がる余地なし。
東京モーターショー2019のメガウェブ会場で開催された「FUTURE EXPO(フューチャー エキスポ)」で、初公開されたトヨタの燃料電池車(FCV)「MIRAI Concept(ミライ コンセプト)」
むしろ排気ガス規制の強化によりコストアップする方向。新型MIRAI用のスタックで同じ出力のディーゼルエンジンと同等になるかもしれません(水素タンクなどのコストダウンはこれから)。10年スパンで考えたら燃料電池のほうが安くなる?
そもそもディーゼルエンジンは環境問題を考えたら将来的に厳しい。燃料電池なら排気ガスをいっさい出さず、水素も太陽光など再生可能エネルギーから取れば二酸化炭素を出さずにすむ。といったことからしても、ディーゼルの代替パワーユニットの開発は急務。特に大きな出力を連続して使う大型車についていえば、電気自動車より燃料電池車が合っていると思う。
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