■水平対向は決して有利ではないが… スバルがスバルであるために残す!
2024年5月28日、トヨタ/スバル/マツダが合同で「マルチパスウェイワークショップ」を開催しました。
エンジンの可能性を信じる「3社が手を結んだ」と言っても、何かを一緒に開発するのではなく、「独自性は崩さず、しかしエンジン開発の悩み/困り事を何でも相談できる関係」と言う、「競争」と「共創」の精神での繋がりと言ったらいいでしょう。
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ここでは各社の次世代エンジン技術がお披露目されましたが、その内容は三者三様です。
マツダは独自技術であるロータリーの可能性を示唆、トヨタはBEV時代のエンジンの在り方を考えた二つの新エンジン、そしてスバルは次世代e-BOXERがお披露目されました。
これまでスバルの独自技術の一つである「水平対向エンジン」は、様々なフェイズで刷新・進化が行なわれてきました。
これまで低重心、コンパクト、パワフルさ、独特なエンジンフィールなどは高く評価されてきましたが、その一方で燃費をはじめとする環境性能はと言うと物足りない部分も。
それはスバル自身もそれを大きな課題として認識、世代ごとに改善は行なわれてきましたが、残念ながら他メーカーと比べると差があったのも事実です。
そんなスバルも将来の電動化戦略を掲げています。
2024年5月13日に開催された「2024年3月期」決算発表会で2026年末までに4車種のBEV(トヨタとの共同開発)をラインアップすると公言しています。
ただ、直近のビジネスを考えると「内燃機関+電動化技術」、つまりハイブリッドの強化は必須でした。
現在、スバルには1モーターのパラレルハイブリッド「e-BOXER」をラインアップしています。
ガソリン車に対してリーズナブルな価格設定ではあるものの、アシスト量が少ない(10ps/65Nm)ため、肝心な燃費向上に関してはそこまで貢献していませんでした。そこで今回、大きなメスを入れたと言うわけです。
技術トップの藤貫哲郎CTOは「環境性能の事を考えると水平対向は決して有利ではありません。ただ、トヨタさん、マツダさんと一緒に話していると、逆に勇気づけられる事ばかり。スバルがスバルであるためには、この技術は絶やしてはならない。そんな想いがこのシステムにも込められています」と話しています。
更に大崎篤CEOは「カーボンニュートラル社会の実現に向けて、特にエンジンについて一緒にできる事は手を取り合い、共に未来を作る。そして、競い合うところは大いに競い合いエンジンを盛り上げていく。そんなトヨタさんとマツダさんの呼びかけに賛同した」と語っています。
次世代e-BOXERは水平対向4気筒エンジンに発電用/駆動用のモーターとバッテリーを組み合わせたシリーズパラレル式のハイブリッドになります。
機構的にはトヨタハイブリッドシステム(THS II)を水平展開した物ですが、スバル独自のシンメトリカルレレイアウトに加えてメカニカル四駆(トヨタはモーター駆動の電動AWDのみ)との組み合わせなど独自の部分が多く、ハードはほぼスバル専用と言ってもいいでしょう。
実はこのシステム、2018年に北米のZEV対応のために少量発売されたスバル初のPHEV(クロストレック・ハイブリッド)で展開されているユニットの進化版です。
当時はトライアル的な展開で販売台数も限定されていましたが、主力ユニットへの昇格に合わせて大きく手が入っています。
今回は細かいスペックは公表されていませんが、ユニットを見る限りエンジンは2リッター水平対向エンジン(FB20)がベースです。
ただ、既存のエンジンを搭載したわけではなくTHSIIに合わせてハード/ソフト共に最適化されているでしょう。
駆動用モーターには出力の大きいモーター(恐らくカムリクラス)により、アシスト量の拡大による動力性能&燃費向上は大きく期待できるでしょう。
藤貫CTOは「水平対向は燃費が悪いと言われがちですが、実は定常走行時の燃費は悪くないと思っています。ただ、冷間時や過渡の部分が厳しいのは事実です。その領域を電動ユニットがしっかりと補えるようなイメージです」とも語っています。
更に次世代e-BOXERは補器類のレイアウトも最適化されて、ハイブリッドの頭脳ともいえるPCUはリアシート下からエンジン上部に移動。
この辺りは全高が低い水平対向エンジンならではの部分です。
従来モデル(北米のクロストレックハイブリッド)はそれが故に燃料タンクを小型化していましたが、今回はガソリン車と燃料タンクを搭載が可能になっています(1タンクでの航続距離アップ)。
果たしてどれくらいの燃費が実現できるのでしょうか。
個人的には水平対向エンジンでは未踏だった20km/Lを余裕で超えることを期待。
ちなみにTHSIIの効率の高さは言うまでもありませんが、システム特有のラバーバンドフィールはどう対処されているのでしょうか。
この辺りはリニアトロニック(CVT)開発で培った知見・ノウハウが色濃くフィードバックされていることを期待したい所です。
このシステムは2024年のLAショーで世界初公開された新しいフォレスターとクロストレックに搭載することを発表しています。
スバルのビジネスにとって重要な2つのモデルへの搭載、その本気度が分かると思います。
今回はシステムのお披露目に加えて、この次世代e-BOXERを搭載するクロストレックも展示。
エクステリアは偽装が施されていましたが、見た目の変更は僅かのようです。
ちなみにホイールはフラットなカバーで覆われていたので、おそらく専用デザインのアルミホイールが設定されると予想しています(タイヤは225/55R18サイズの「ファルケンZIEX ZE001A A/S」で変更なし)。
インテリアは全てのガラスに真っ黒なフィルムが貼られていたので、チェックすることはできませんでした。
次世代e-BOXERはe-BOXERと比べてシステムが大きいことから、センターコンソールからシフト周りは独自デザインになっている可能性も考えられます。
そんな次世代e-BOXERは2024年秋、リニューアルされた北本工場(埼玉県北本市)にて生産がスタート。正式発売は2025年の早いタイミングと言われています。
これまで主要な自動車メーカーの中では「電動化の進捗が遅い」と言われてきたスバルですが、いよいよ本腰を上げてきました。
次世代e-BOXERの「安心と愉しさ」、早く体感してみたいです。
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みんなのコメント
実際は重量補機類が高いところに置いてあって重心が高くて、ばかデカく、質量の割に馬力がなく、つまらないエンジンフィールで、更には燃費極悪ってのが市場の評価だと思います。