トヨタ16代目クラウンは豊田章男社長の強い危機感から大変身
クラウンの本来のDNAは「革新と挑戦」である。だが世の中の印象は「保守と伝統」だったと思う。16代目となる新型は豊田章男社長の「このままではクラウンは終わる……」と言う強い危機感から生まれた。
「新車詳細レポート」世界に飛翔する新型トヨタ・クラウン、大胆にして緻密なその魅力と戦略
クロスオーバーのエクステリアは従来の「ザ・セダン」から脱却、クーペシルエットとリフトアップを融合した斬新な造形を採用。 「威圧」、「圧倒」とは違った新時代の高級車の提案は高く評価したい。個人的には初めて自分で乗ってみたいと感じたクラウンである。
パッケージングは優秀。運転席に座ると先代とは明らかに異なる目線の高さが新鮮だ。着座姿勢やコクピット感覚などはクロスオーバーではなくセダン。運転に集中できる環境が整えられている。一方、助手席に座ると開放感があり心地よく移動を楽しめる空間に仕上がっていた。リアシートロングホイールベースが生む余裕と大きなリアドアガラス、そしてラウンジのようなシートが印象的。優れた居住性を持ち、フォーマルユースにも活用できそうだ。
フットワークに感銘。時に優しく、時に頼もしい。まさにトヨタの代表
販売主力は2.5リッターエンジン+THSII(シリーズパラレルハイブリッド)。システム自体は先代と同じだが、エンジン縦置きから横置きレイアウトへの変更、E-Four(電気式4WDシステム)の採用、バイポーラ型ニッケル水素バッテリー導入と内容は異なる。実際に走らせると、新型は、見た目やメカニズムを大幅刷新しているが、乗ると「クラウンらしさ」がシッカリ継承されていた。クラウンらしさとは何か? それは時に優しく、時に頼もしい、そしてどこかホッとする「お母さん」のような存在だと思っている。新型はさまざまな意味でトヨタを牽引する存在といっていい。詳しい「乗り味」については雑誌『CAR and DRIVER』(2022年12月号)を見ていただくとして、本稿ではクラウンはなぜ今回のような「大変身」が必要だったのか、その点について分析してみよう。
アルファードはクラウンに気づきを与えた存在
2000年以降クラウンをめぐる環境が大きく変化。存在感は次第に薄れた。その原因の一つがアルファード(そしてヴェルファイア)の登場である。
アルファード系は「高級車=セダン」の方程式を覆したモデルで、2015年に登場した現行モデルの開発コンセプトは「ミニバン」はなく「大空間高級サルーン」である。ミニバンの特徴は広大な居住スペース。これに高級セダン並みの豪華装備、セダン並みの快適性、セダン並みの動力性能がプラスされれば、どちらが便利かは言わずもがなである。
では、新型クラウンの立ち位置はどこにあるのか? 1955年に登場した初代クラウンは「オーナードライバー向けの乗用車」として開発されていた。16代目もその要素が非常に強い、つまり「原点回帰」と言える。かつての高級セダンのポジショニングを高級ミニバンが受け継いだことで、クラウンは変われたとも言える。アルファード/ヴェルファイアはライバルではなく、クラウンがクラウンであるための「気づき」だったのかもしれない。
※本稿は雑誌『CAR and DRIVER』(2022年12月号)に掲載中の特集【「フラッグシップ」の新しいカタチ】内で紹介されているトヨタ・クラウン・クロスオーバーについての関連ストーリーをお届けしています。
トヨタ・クラウン・クロスオーバー 主要諸元
グレード=Gアドバンスド
価格=THS 510万円
全長×全幅×全高=4930×1840×1540mm
ホイールベース=2850mm
トレッド=フロント:1600/リア:1605mm
車重=1770kg
エンジン=2487cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=137kW(186ps)/6000rpm
最大トルク=221Nm(22.5kgm)/3600~5200rpm
モーター最高出力=フロント:88k W(119.6ps)/フロント:40kw(54.4ps)
モーター最大トルク=フロント:202Nm(20.6kgm)/リア121Nm(12.3kgm)
WLTCモード燃費=22.4km/リッター(燃料タンク容量55リッター)
(市街地/郊外/高速道路=21.2/23.8/22.1km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リアマルチリンク
ブレーキ=前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール=225/55R19+アルミ
駆動方式=4WD
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m
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みんなのコメント
アルファードの売れ行きで消費者が容易に騙せると
確信してしまったわけですね。