今から30年前、平成元年は日本の自動車界にとってエポックメイキングなモデルが続々デビューした未曽有のヴィンテージイヤーだった。
時はバブル経済真っただ中で日本中が熱気に浮かれていた時代、同年1月にまず初代レガシィが先陣を切り、8月にはR32スカイラインGT-R、9月にはユーノスロードスター、そして10月に初代セルシオとひっきりなしに話題のニューモデルが誕生。
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時を経て令和元年の今、ここにあげた車は――形こそ変わったモデルは多いものの――すべて生き残っている。
令和の時代に生き残る平成生まれの超名門車、その「現在の姿」と対比させつつ「当時」を改めて振り返る。
文:大井貴之、国沢光宏、岡本幸一郎
写真:編集部
ベストカー 2019年9月26日号
【画像ギャラリー】どれだけ変わった? 平成元年誕生車の「今」
R32スカイラインGT-R「今見れば未熟だが夢が詰まった車」
R32型で16年ぶりの復活を果たしたスカイライン「GT-R」。現在のR35型はスカイラインとは独立した国産屈指のスポーツGTとして君臨する
1989年5月。スカイラインシリーズの8代目となるR32型スカイラインが発売された。
6代目のR30型で「走りのスカイライン」復活! DOHCエンジンのFJ20を搭載したRS、RSターボはファンの心を掴んだが、7代目で舵取りを失敗。
8代目は、先代が大失敗したおかげとも言えるような大変身! そのフラッグシップモデルとして登場したのがGT-Rだ。
ベースのR32もとても魅力あふれるクルマだったが、5ナンバーサイズに収められていたベースモデルに対し、大きく張り出したブリスターフェンダー、グループAレースを制するために排気量から考えて開発されたRB26DETTエンジンなどで差別化。
さらに、対向4ピストンキャリパーに国産車では初めてのドリルドローターを採用、アルミボンネット、アルミフェンダー……スペックだけでこれほどワクワクしたクルマは初めてだった。
誰よりも早いタイミングでオーダーを入れた筆者の元にGT-Rが納車されたのは、発売直後。
当時、何から何までお世話になっていた土屋圭市先輩には、「なんでオレのより先に納車されんだよ!」と文句を言われるほどの納車タイミング。
車体ナンバーは109番。街を走れば注目の的。深夜の首都高速で慣らしをしていると、RX-7やらスープラやらの行列ができちゃって、トランクに「慣らし中」って書こうかと思ったくらい(笑)。
一気に8000rpmまで回るエンジンはパワーもサウンドも最高に気持ちよかった。あと、雪道のハンドリング! シビレたね。
1992年にはN1耐久レースでもGT-Rをドライブしたが、225/50R16のSタイヤで500psオーバーは今でも忘れない、じゃじゃ馬の王様。
今考えれば、強烈なフロントヘビーだし、ブレーキはまるっきり足りないし、テクノロジー的には未熟なところだらけ。
そういう意味では現行のR35はまさに正常進化を遂げたモデルだと思うが、夢が詰まっていたんだよなぁ、あの頃のクルマたちには。
【大井貴之】
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初代レガシィ「レオーネとはまったく違う新世代のスバル」
それまでのスバルのイメージを一変させた初代レガシィ。特にツーリングワゴンのGTは商用バンの持つネガティブなイメージを180度転換した
レガシィがデビューする前のスバルは、当時としても古くさい技術のクルマばかりだった。
なかでも主力のレオーネときたら、超が付くくらいのドアンダーステア。旧式のエンジンはアクセル踏むと5秒間くらいレスポンスせず、絶対的なパワーだって同じ排気量の最先端ターボなしと同等。
燃費だって信じられないくらい悪い。スバル社内でも危機感があったらしい。すでに他界された桂田さんや、副社長で卒業した荒沢さんなどで、次世代のクルマを仕立てていたのだった。
私が初めてハンドル握ったのは、いわゆる“台車”という試作車で、外側は枠組みだけ。好きに乗っていいというから、太田の広いと言えぬテストコースで流しまくってみました。するとレオーネとまったく違う特性にたまげましたね!
その時はどんなクルマになるのかまったくわからなかったが、2年後にレガシィとして発売されたのであります。1980年代後半、今から思うと、すべてのメーカーが生まれ変わろうとしていたのだろう。
ということで初代レガシィツーリングワゴン「GT」のAT車を買いましたね! 初代から素晴らしい完成度を見せていたセルシオとは対照的で、レガシィの初期モデルは“修行”でした。
コーナーの途中で速度により2段階切り替え式のパワステが突如重くなったり、賑やかなエンジン音だったり、変速ショックの大きいATももれなく付いていた。
けれどハンドリングの素直さや雪道走った時の安心感などは圧倒的! 以後、4代目レガシィまで新型が出る度に乗り替えることになった。
【国沢光宏】
初代セルシオ「ベンツより静かで滑かな圧倒的質感」
260psのV8、4Lエンジンを搭載し、その性能でベンツやBWWなど世界の高級車メーカーを震撼させた初代セルシオ
初めて初代セルシオを見たのは1989年のデトロイトショーでした。
当時、バブル景気の真っ最中。トヨタがベンツやBMWと真正面から戦える高級車を開発中だという情報も多数流れており、大いに注目されていたのだった。
そのわりに日本からデトロイトまで取材に行こうという日本人メディアは少なく、前の日、初代セルシオのチーフエンジニアである鈴木一郎さんから開発初期からの話をたっぷり聞けたのでございます。実際は「聞く」というより、説教に近かったですが(笑)。
とにかく強烈な人で、自分の理想や理念を語りまくる。「ベンツやBMWはなぜいいか」というロジックも納得させられることばかり。その時に31歳だった国沢光宏ながら、価格も公表されていなかったが、どんなクルマか好奇心の塊になってしまう。
そんなこんなで、初代セルシオの実車を見る前に「金属バネ仕様のグレードをお願いします」と、仮予約しちゃったのであります。もちろん、発売時は長い納期になっていたけれど、日本発売と同時に納車してもらいました。
セルシオの前に「乗用車のお手本」と偉い自動車評論家の先生から評価されていたW124(ベンツ Eクラス)に乗っていたのだけれど、セルシオに乗り替えたら、凄い凄いの連発!
なんせセルシオより高価だったEクラスばかりか、Sクラスより静かで滑らか。BMWの5シリーズなど相手にしない質感も持っていた。それが500万円くらいで買えたのだから驚く。まぁ売れないワケないでしょうね!
今のレクサスLSは当時のセルシオをもう一度研究すべきかも。
【国沢光宏】
※画像をクリックするとセルシオの中古車情報が見られます
ユーノスロードスター「今も受け継がれる人馬一体の原点」
先頭を走る初代ユーノスロードスターの存在はやはり偉大。デビュー当初は1.6L DOHCのB6型だったが、1993年のマイチェンで1.8L DOHCのBP型に換装されている
最初の愛車がセリカXXで、次が180SXとFRでリトラ、ハッチバックが続いて、その次がロードスターです。FRでリトラは共通だけど、どんどん小さくなってたりして……(笑)
実のところ個人的には、どちらかというとセリカXXや180SXのような、ちょっとGTカーっぽい雰囲気のあるクーペのほうが好みなのですが、ロードスターのことは1980年代終盤に話題になり始めた頃からずっと気になってました。
そして、ロードスターの登場からしばらく経った頃、僕はベストカーの親戚にあたるベストモータリングの編集部員になったのですが、運転がヘタクソだった僕に当時の副編集長だった大井さんが、「上手くなりたかったらロードスターに乗るべし!」とアドバイスしてくれたのが決め手になりました。
ロードスターに乗り替えてわかったのは、とにかく女子ウケが良いのなんの。2シーターで、オープンで、見た目もかわいいロードスターに乗せてあげると、皆もう大喜び……というのはさておいて、肝心の走りの話ですよね。
ロードスターがいいのは、本当に操作したとおりにダイレクトに走りに表れることと、それを手の内で操れること。そのあたりの感覚がほかのクルマとはぜんぜん別物だったと思います。
「意のまま」とか「人馬一体」とマツダが言う、まさしくそのとおり。そのよさは今のNDにもしっかり受け継がれていると思っています。
もうひとつ特徴的なのが、ロードスターというのはオーナーが愛車精神に満ちていて、オーナー同士のつながりのパワーがものすごいことです。
過去に何度かオーナーズミーティングの取材にオジャマして、それをヒシヒシと感じました。もうすっかりご無沙汰してますが、いつかまたあの輪に混ぜてほしいとずっと思っています。
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【岡本幸一郎】
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