連載/石川真禧照のラグジュアリーカーワールド
BMWの電気自動車(iシリーズ)として「i3」が発売されたのは2014年4月のこと。「設計から生産、販売に至るまで持続可能なモビリティを実現する」というコンセプトのもとに造られた。量産車として初めて、CFRP(カーボンファイバー強化樹脂)を基本骨格に採用し、大幅な軽量化と大容量バッテリーを搭載した。
空気圧は1か月に1回点検を!燃費性能にも影響するタイヤの空気圧
新しいプレミアムカーとして、次世代プレミアムというコンセプトも揚げた。素材の選択やクルマづくりにそれは向けられている。生産工場のドイツ・ライプチヒ工場では、敷地内に風車を設置し、生産用の電力の全てを再生可能エネルギーで賄っている。
炭素繊維を生産している北米ワシントン州モーゼスレイク工場は全電力を地元の再生可能な水力電力で賄い、CO2排出ゼロを実現している。製品面ではインテリアで使われているレザーは、なめし行程でオリーブの葉の油出物を活用。ダッシュボードやドアパネルの一部に天然素材のケナフ麻の繊維やユーカリウッドを採用している。
このように「i3」は、開発と生産から資材、リサイクルまで持続可能なものづくりを行なっていることを特徴としているクルマだ。最新モデルは2019年2月に新型バッテリーを搭載した現行モデル。
満充電状態でEVモードが295km、燃料モードが128kmという表示
ボディーのデザインもフロントには横長のLEDターンインジケーターと、新デザインのバンパーを採用。LEDヘッドライトは全車標準装備とした。リアもバンパーの形状がワイドになり、直線に引かれたマットクロームを採用。サイドはシルバーの加飾がフロントピラーからルーフに沿って配置されている。
インテリアは、標準仕様のほか、ATELIER(Tアトリエ)、LODGE(ロッジ)、SUITE(スイート)がパッケージで用意された。試乗車はSUITで、なめし加工のブラウンレザーをシートとダッシュボードに使用しており、オーク材も採用されている。高級感のある室内が印象的だ。オプション価格は、58万1000円となっている。
パワーユニットは2タイプ。100%EVの「i3」と、発電用小型エンジンを組み合わせた「i3レンジエクステンダー」の2車種。今回、試乗したのはレンジエクステンダー付きなので、車体後部に2気筒DOHC、647cc、38PS、56Nmのガソリンエンジンを搭載している。ちなみにガソリンはプレミアムで、タンク容量は9Lというあくまで補助的な発電用のエンジンとなっている。モーターの総電力量は42.2kwh、最高出力は170PS、最大トルクは250Nm。
運転席前のメーターには、EV走行の航続可能距離とガソリンエンジンを充電しながらの航続可能距離が表示される。ちなみに、満充電状態で試乗車はEVモードが295km、燃料モードが128kmと表示されていた。カタログデータでは、WLTCモードでEVが295km+燃料が171kmとなっている。
「i3」の全長は4020mmなので、日産「ノート」やホンダ「Fit」と同サイズ。全高はこの2台より高いが一応、立体駐車場に入る1.55mm以内には収まっている。全幅は欧州サイズなので1775mmとやや広め。このゆったり感が室内の快適性にもつながっている。
軽快なハンドリングと強力なブレーキの回生
パワーユニットをスタートさせてみた。ON/OFFや走行モード、パーキングモードはすべて、コラムの右に集中している。ドライビングモードはセンターコンソールにコンフォート/エコプロ/エコプロ+の3モードがスイッチで選べるようになっている。コンフォートモードを選択すると「最適な走行モード」という表示が現われた。
アクセルペダルを踏み込んでみた。すると、瞬時に音もなく加速を開始。発進時のレスポンスはやや重めに感じたものの、そのままアクセルを踏み続けると車速は急上昇。カタログデータの0→100kmの加速は、誰でもすぐに出せる印象だ。ちなみに、試乗車もカタログ値の7.5秒に近いタイムを計測することができた。
走り出すと、ハンドリングの軽快さが伝わってくる。「i3」のタイヤは、175/60R19という細めで大径の特殊サイズ。一見すると、頼りなさそうなのだが、このタイヤ/ホイールの組み合わせが、結構、頑張ってくれる。特に、ワインディングロードでは、つい攻めすぎてしまうほど小気味よく走ってくれた。たとえ、シティーユース系のエコEVのように見えても、そこはBMWが造るクルマ。普通のエコカーではないのだ。
一方で、EVらしいと感じたのは、回生ブレーキの性能。アクセルオフでは、コンフォートモードでも短い距離で完全に停止するぐらい強力。街中走行でも状況によっては走行可能距離が伸びるほどに回生する。小回りもできるし、高速走行もこなすBMWのEVは、街中から高速走行までもこなし、バッテリーの電力が足りなくなってもエンジンが始動し、電力を供給して、モーター走行を続けられる。
このクルマなら日常の足から休日のドライブまでつき合ってくれそうだ。
■関連情報
https://www.bmw.co.jp/ja/all-models/bmw-i/i3/2020/bmw-i3-ueberblick.html
文/石川真禧照(自動車生活探検家)
雑誌「DIME」の連載「カー・オブ・ザ・ダイム」を長年にわたり執筆。取材で北米、欧州、中東、アジアをクルマで走破するなど、世界のクルマ事情に詳しい。国内外で年間に試乗するクルマは軽からスーパーカーまで200台以上。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)副会長。日本モータースポーツ記者会(JMS)監事。日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員。
撮影/萩原文博(静止画)、吉田海夕(動画)
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みんなのコメント
→無かったね
>全高はこの2台より高いが一応、立体駐車場に入る1.55mm以内には収まっている。
モーターと電池の区別もつかず、米粒のような全高を書いても疑問に思わない人の記事に何を期待しろと。