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トヨタが進める「車いす」改革にエンジニアの矜持を見た!! これぞ「すべての人に移動の喜びを」直球ど真ん中活動!!!

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トヨタが進める「車いす」改革にエンジニアの矜持を見た!! これぞ「すべての人に移動の喜びを」直球ど真ん中活動!!!

 2023年6月、トヨタの東富士研究所でメディア向けに「先行技術説明会(Toyota Technical Workshop2023)」が実施された。次世代バッテリー技術やアリーンOSなどトヨタの最先端技術が披露されるなか、やや地味に見えるかもしれないが、しっかりと着実に世の中のためになる「すべての人に移動の自由を」を掲げるトヨタらしい「技術」があった。「車いす」にまつわる新技術である。あまり広くは知られていないが、トヨタは車いす関連技術の後付け商品も開発しており、すでに販売しているものもあるという。次世代のモビリティを支える技術という意味で、大きく人々の役に立つ技術、紹介します。

文/ベストカーWeb編集部、写真/トヨタ

トヨタが進める「車いす」改革にエンジニアの矜持を見た!! これぞ「すべての人に移動の喜びを」直球ど真ん中活動!!!

■車いすバス乗車と固定を「2分」から「2秒」へ

 路線バスで、車いすユーザーと乗り合わせたことがある読者諸兄は多いと思う(日本における車いすユーザーは約200万人)。同じ停留所で乗り合わせると、運転手さんが降りてきて、中ドアに「スロープ板」を架けて、備え付けのイスを畳み、所定の位置まで車いすを移動させ、ワイヤーでフロアのフックと車いすを接続、固定、確認。やっと発進して、そして降りる停留所でまた同じ作業、という作業フローを見ることになる。

 早くて2分、やや不慣れな運転手さんだと10分程度かかることも珍しくない。

路線バスや電車、飛行機、車いす仕様車であっても、車いすを床に固定するには時間がかかる。そのタイムラグが「障壁」になっている。しかし車いす側に「固定用バー」を付け、車体側に「フック」を付ければ、固定時間は2秒に短縮可能

 このタイムラグは確実に「バリア」であり、車いすユーザーにとって(そしてそうしたユーザーとともに暮らすわたしたちにとっても)社会的な障壁になっている。

 このバリアをすこしでも軽減する施策が、トヨタの進める「車いすワンタッチ固定装置」。車いす側の改造範囲や追加部品は最小限。車輪の間に固定用バーを設置するだけ。

 車両側(バス側)の改造範囲も狭い。フロアにワンタッチで起き上がり固定するフックを設置するだけ。「これだけ」だ。

 ポイントは「統一規格」で、車いす側にも車両側(バス側)にも同じ規格が揃いさえすればいい。チャイルドシート設置が義務化された際に広まったISOFIX(アイソフィックス)と同じ考え方だ。

普段は引っ込んでいるが、ワンタッチ操作で「フック」が飛び出す。ここに引っ掛ければロックされ、車いすが固定される仕組み。説明を聞いた瞬間「これすごい!」と声が出ました

 そして車両側(バス側)の「統一規格フック」の普及が進めば、電車や航空機など、さまざまなモビリティへ展開も可能になる。まさに「すべての人に移動の自由を」の第一歩となる技術といえる。

 こうした取り組みはいかにもトヨタらしい。発想や技術も大事だが、なにより「規模」が導入要件に入ってくるからだ。世界最大の販売台数を誇るトヨタだからこそ広められる可能性があるし、こういうジャンルにトヨタが力を入れてくれているニュースそのものが、車いすユーザーへの活力になる。

 この施策、ぜひ国土交通省も応援してほしい。一緒にやってくださいよ。お願いしますよ。

■「しっぽ」がオシャレなのがなにより秀逸

「先行技術説明会」では、車いす関連でもうひとつ展示があった。介助者なしで、階段の上り下りや凹凸路を走行できる車いす型モビリティ電動車いす「JUU」だ。

 駆動モーターに、自動車で採用されている電動パワーステアリングのモーターを採用し、信頼性と安全性を確保しつつ、最大のポイントは「しっぽ」と呼ばれる車いす背面に設置された第三の足。段差を前にした際、手元で操作するとこの「しっぽ」が下がって地面に設置、補助輪の役割を果たし、安定性を確保したうえで車いすがゆっくり前に進むことで段差を乗り越えられる。

 階段の上り下り、凹凸路を、介助者なしで越えてゆけるわけだ。

トヨタ製の電動車いすは、背面に「しっぽ」が付いており、階段や段差の昇降時、これがウイーンと下がって補助輪のような働きをする。介助者なしでも段差を乗り越えられるようになる

 もちろんこの技術もまだ課題は多い。整備性や操作性、量産性に課題があるだろうし、価格も上がってしまうだろう。

 それでも実地で取材した本記事担当編集者が小さく感動したのは、この車いす、カッコいいんですよ。ブラック塗装で。

「車いす」というとまだまだ「オシャレなんて考えず機能優先で」と考えがちなジャンルですが、生活必需品だからこそカッコよくオシャレに使いたい、という人だってたくさんいるはず。先進的な技術と工夫がつまっている「マシン」だからこそちゃんとデザインされていて、そういう気遣いがすばらしい。クルマは工業デザインの花形ジャンルなわけですが、クルマ屋が作るからこそカッコよくオシャレな躯体であってほしいとも思います。

電動車いす「JUU」、カッコいいんですよ、ちゃんとデザインされているんです。こういうところ、本当にすばらしい。「乗りたくなるデザイン」です

■スロープの「ステップ」とドアの「ストラップ」

 トヨタが車いす関連技術を開発しているのは、「先行技術」だけではない。すでに市販している製品もある。

「レステップ」と「シェイクバンド」だ。どちらもハイエース車いす仕様車に後付けオプションとして装着できる。

「レステップ」は車いす乗降時の段差を解消するため、スロープ先端に装着するエラストマー(弾性ゴム)製のステップ。8つに分割しているため、非舗装路や斜めの場所でも追従することで地面にフィットする。これを装着すると、乗降時の振動が約3割~半分程度に軽減、ウィリーしてしまう危険性も減り、さらに乗降位置(車いす固定位置)の目印にもなるという優れもの。

スロープの先端に設置する「ステップ」。8つに分割しているので凸凹路でもフィットする。これ考えた人、頭いいなーー!

 1台用8セットで8580円だが、交換用パーツ1つ1430円で買えるのもうれしい。装着時間は約5分。これ考えた人のやさしさに拍手が止まらない。超優秀なエンジニアだ。

「シェイクバンド」は車いす仕様ミニバンのバックドア開閉時に、上へ跳ね上がったドアに手が届かない問題を解決する商品。介護の現場には小柄な女性の方もおり、かといって単純にドアのストラップを長くすると閉める時に挟まってしまう。

 それを解決するのがこのシェイクバンド。「輪」状のポリエステル製ストラップだ。

ハイエースのバックドアに「輪っか」状のストラップを取り付ける。これだけで介助者の手間が省けて、ユーザーの満足度が上がる。すごい! これぞエンジニアの仕事!!

 ストラップ延長は248mm→326mm(+78mm)、中間にバンドを縫い込んでいるので「輪」を持ちやすく力も入れやすい。形状保持部がストラップを支えるのでドアに挟まれる心配もないという優れもの。

 この工夫がつまった商品が3960円(税込)。

 上記「レステップ」同様、自分で装着できるから工賃不要。どちらもトヨタ新車販売店で購入可能とのことなので、最寄りのディーラーに相談してみてほしい。

 トヨタは介護施設の職員に「困りごと」の実態を調査してこうした商品を開発。「レステップ」は障害者の自立支援を目的とした「こじまキャンパスさくら工場」にて生産しており、障害者自身が自らが車いす利用者のサポート となる商品を作り出している。

2015年11月、IPC ワールドワイド・パラリンピック・パートナー就任に関する発表会にて、トヨタ自動車豊田章男社長(当時)と国際パラリンピック委員会フィリップ・クレイヴァン会長。この時の「約束」が、着々と「かたち」になっている

 トヨタは国際パラリンピック委員会との間で、2024年まで「ワールドワイド・パラリンピック・パートナー(Worldwide Paralympic Partner)契約」を締結している。これは最高位のスポンサーで、2015年の契約時、豊田章男会長(当時社長)は、「私たちは"すべての人が参加できる社会を目指す"というIPCの理念に深く共感しています。その実現のためには、移動の自由が鍵を握っております。トヨタは、"移動"がチャレンジするための障がいではなく、夢を叶えるための可能性になってほしいと願っております。」と語っている。

 航続距離1000kmを超えるBEVとバッテリーの開発と並行して、車いす固定用のバーやハイエースのスロープに装着する段差解消ステップを開発するトヨタのエンジニアたち。超高齢化社会は目前に迫っており、「こういう技術開発」こそがわたしたちの生活を支えてくれるかもしれない。

 がんばってください! 応援します!!

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みんなのコメント

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  • もちろん他社も何もしてないわけがない。日産にはオーテックがあるが本業は車イスリフトなどの架装。
    そしてホンダのワゴン車、ステップワゴンやフリード等は当初から車イス用スロープなどを装備することを前提に設計されている。
  • さすがトヨタですね。
    ま、過去に曽野綾子さんから車椅子用のクルマの相談された時に、開発だか、販売だか知らないが、「ウチは儲からないクルマは造らない」とわざわざケンカ売りに来た担当者がいたとか。その反省もあるのかな?
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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