この記事をまとめると
■レクサス「LX600」「LX600オフロード」「LX600エグゼクティブ」の3モデルが登場
7組のフローティングバーによる新スピンドルグリルで超オラ顔! 日本発売は2022年初頭予定のレクサスLXを公開
■狭いコンビニの駐車場の出し入れなどでも特段の不便を感じる事が無い
■オフロードコースでも快適性を損なわずに走れるのはさすが
「LX600」「LX600オフロード」「LX600エグゼクティブ」の3モデルを一気試乗
レクサスLX 600およびLX600オフロード、そしてLX600 エグゼクティブの3モデルが登場した。今回その3モデルに試乗する機会を得たのでリポートをしよう 。
まず標準グレードのLX600は20インチタイヤを装着。エンジンは3.5リッターV6ツインターボにD4Sヘッドを持つハイパワーエンジンである。 これまで設定のあったV8エンジンは廃止され、3.5リッターV6ツインターボのみの設定となっている 。またトランスミッションには10速のフルオートマチックが採用され、これも新規採用となっている。
プラットフォームとして大型の鉄製ラダーフレームを新開発。フロントにダブルウイッシュボーンサスペンション、リヤはリジッドアクスルという組み合わせで、これらは3モデルともに共通している部分である。
まずはエグゼクティブグレードを一般道および高速道路で試乗してみる。エグゼクティブはその名のとおり内装が非常に豪華な仕立てだ。とくに後席のユーティリティを際立たせている。4人乗りのシートレイアウトはとくに助手席後側がVIP席となっていて、フルリクライニング機構に電動オットマンなど航空機のファーストクラス並みの楽な姿勢を取れるばかりでなく、後席左右個別に専用の大型モニターがリヤシートエンターテイメントシステムとして備わり、走行中でも画面で楽しむことができる。またVIP席にはリラックスモードと呼ばれるフルリクライニングのポジション設定がされているが、これはオフロードなどの悪路を走っても最も快適に過ごせる位置に定められているという。
走り始めてすぐに気がつくのはその圧倒的な静かさと質感の高さである。まさにレクサスクオリティと呼ぶに相応しい静かで快適な室内空間が保たれている。タイヤが2回転するだけで、その質感の高さを感じ取ることができた。 V6エンジンの振動はほとんど感じられず、また遮音や防振が完璧にされていて、キャビンは極めて静かに保たれている。 徐々に速度を上げて一般道へ走り出すと路面がフラットで綺麗に整備された場所ではまさにレクサス車として相応しい乗り味だ。
一方路面の段差や凸凹、アンジュレーションまたは継ぎ目などのある部分を通過するとフロントサスペンションは非常にうまくそれらを「いなし」快適さを保っているが、リヤサスペンションがその部分に乗り上げるとリジットアクスルらしい動きが感じられてしまう。それは同じシャシーを持つ新型ランドクルーザーでも感じられたことだが、レクサスブランドとなってもその特性を完全に防ぐことが出来ていないようである。ただ防振や遮音性には優れているのでリヤアクスルの バネ下の重さを感じるのは主にドライバーで、助手席や後席に乗っているパッセンジャーはそれほど大きな違和感を感じることはない。今回はスプリングやスタビライザー、またダンパーも含めてランドクルーザーとはセッティングが異なっていて、LX600はレクサス専用のチューニングを開発初期段階から導入しているという。
たとえばフロントはスタビライザーが細く、リヤはスタビライザーが装備されていない。その代わりにリヤにはショックアブソーバーでコンベンショナルなコイルスプリングのほかに高圧側低圧側に個別の特性を持つガスばねが装備されていて、油圧式のダンパーと合わせて細かく制御されている。これにより乗り心地と操縦安定性の両立を図っているという。
センタートランスファーはオーソドックスな機械式で前後トルク配分は50対50で固定されている。そのせいか直進安定性はすこぶる高く、外乱に対する安定性も高まっている。
高速道路区間では非常に快適でライントレース性も高く、またレーンキープアシスタントの作動も的確だ。ステアリングセンターはしっかりと 重みがあって手応えを感じることができ、 微小舵に対する応答性も確か。レクサスの提唱するドライビングシグネチャーを最も感じ取れる領域となっている。この辺は特に入念に作り込まれた部分で、レクサスの車名を名乗る上でランドクルーザーとは一線を画すような高速直進安定性を待たされている。
一方、コーナー区間ではややボディのロールが大きく感じられる。リアスタビライザーが廃されたこと、またスプリングレートが若干ソフトな傾向であることも相まって乗り心地 を優先させるようなセッティングであるということができる。
大柄ボディでも市街地で苦痛を感じることなし!
ステアリングのギヤ比が若干早められ 最初回転半径は6mとトレッドが広がった分ランドクルーザーよりは少し大きくなっているが、それでも市街地の取り回し性は極めてよかった。角張った車体デザインは四隅みの見切りが良く、またパノラミックビューモニターなどの機能が備わっていて狭いコンビニの駐車場の出し入れなどでも特段の不便を感じることがないのはさすがといえるだろう。伝統的な2850mmのホイールベースを継承していることは市街地での取り回し性にも貢献しているのだ。
22インチの大径ホイールとダンロップ製専用タイヤを装着していることによりバネ下重量は1輪あたり40~50キロと重く、そういう意味において運動性能で軽快感は感じにくいが、レクサスブランドとしての安定感と乗り心地は充分に感じられるものといえるだろう。
ドライブモードはノーマル、スポーツ・スポーツプラス、またコンフォートさらにエコと個別に設定ができる。 多彩なセッティング機能が備えられているが、しかしその変化しろは、あまり大きくはない。市街地での走行速度は40キロから60キロあたりで、この速度域ではトランスミッションのロックアップ機能が頻繁に作動し 若干それに伴う変速振動が感じられる。これは駆動力を悪路でしっかり発揮するために、あえてトルコンスリップを多めに設定していることや、クリープトルクを強め低回転ではロップアップせずにパワー/トルクを十分引き出してからロックアップさせるというような悪路走破性中心の考え方が影響を及ぼしているのだと言う。
ボディーはアルミ製ボンネットやフェンダー、ドアパネルなど多くの軽量パーツが使われ 軽量化も図られているが、ラダーフレーム自体は伝統的な鋼鉄製であり、そこにブッシュとボルトで車体がボルトオンされている。その締結剛性などにより若干乗り味が変わるということだが、特にレクサス車は防振や快適性を重視してブッシュの締結剛性を採用している。その為、ラダーフレームとボディ剛性のしっかりとした剛性感を感じつつも伝統的な乗り味も継承されているというわけだ。
またライドハイドコントロールはノーマル、H1、H2そしてLOWの4段階に切り替えることができる。乗降するときには一番低いLOWを選択すると最低地上高が200ミリ前後となり、オフロードを走る時は最も高いH1を選択することでロードクリアランスは275ミリの最大値となり、最深渡河性能でも700ミリが確保されるという。それらはマニュアルで操作することも可能だがオフロード走る場合はMTS(マルチテレインセレクト)を選択すれば自動的にH1の最大車高が設定されるという。こうしたオフロードアイテムはエグゼクティブからオフロードまですべてのグレードに共通する装備であり、悪路性能面では差別化が図られていない。
次に 標準グレードのLX600に試乗してみる。標準モデルは3列シートが選択でき、試乗車は3列シート仕様だ。3列シートがあるのはいざという時には非常に便利だが、実際に乗車してみるとそのスペースは決して充分であるとは言えない。足もとは狭くヒップポイントも低い。ヘッドクリアランスもミニマムなのでエマージェンシー的な扱いというレベルで考えた方がよい。また3列目シートは電動で立ち上げることができるが、乗降アクセスにはセカンドシートの可倒操作が必要で、その操作性は良くない。扱いに慣れてくればあまり気にならなくなってくるのだろう。
走り味はエグゼクティブと変わらず、静粛性や操縦安定性、快適性その他も同じで、レクサス車としてのクオリティが感じ取れるものだった。
ガチのオフロードを難なくこなす走破性の高さ!
さていよいよ本来の実力が発揮されるオフロードコースを走る。今回、富士スピードウェイのP10(旧バンク奥)のさらに上方で、山肌を削ってさまざまな路面を創設し特別なコースとしてテストコースが造られていた。じつはこのコース、今回の試乗の為だけのものではなく、今後レクサスLX購入者、あるいはオフロード系SUVを購入したユーザーがこの施設を 使用してオフロード走行体験ができる施設に発展して行くそのベースになる場所なのだという。スポーツカーを買ったらサーキットを走りたくなるように、オフロード性能の高いクルマを買えばオフロード走行を試してみたくなるだろう。また、いざという時のためにこうしたオフロードコースでの走行経験を積んでおくことも極めて重要であり有効となる。現状はまだ仮設のコース設定ということだが、それでも難易度は非常に高く設定されている。
まず最大斜度が27°から30°近くとなるような、ぬかるみの路面を登って行く。 通常モードでも登れるが、アプローチアングルを最大値にするために走行モードをオールテレインモードに設定すると全自動でライドハイトが一番高くなる。そして全方位が視認できるマルチビューモニターカメラが起動して常に路面の前後左右がモニターに映し出されるので、視界の悪い大きな段差路面も安心して進めることが出来た。実際25°の斜面登坂では車体が登り始めると前方には空しか見えず、進行方向の路面状況が目視できないだが、このマルチビューモニターを使えば、まるでエンジンルームが透明になったかのように前左右タイヤの両サイド及び車のフロア下の状態までも視認することができる非常に便利な装備と言える。
ステアリング機構の見直しでキックバック入力が非常に少なく、こうした悪路でも快適性を損なわずに走れるのはさすがだ。またモーグル路面は左右に大きく路面がイレギュラーで突出した部分もあり、その高低差が1m近くにも及ぶが、そんな路面でも難なく走破していけるのは、車輪アールティキュレーションが非常に大きく取られていることの証と言える。また万が一、対角線上の車輪が接地性を失ってもブレーキLSDが作動してスタックすることはない。オールテレインモードにしていればそれらは常に最大値まで稼働制御し、この程度の困難な悪路でも難なくクリアすることができる。ちなみにセンターデフおよび前後のデファレンシャルはマニュアルで機械的にロックすることもできる。
今回のテストコース は普通のSUVでは走れないようなレベルだったが 、それでも機械的LSDロックを使わなくても何事でもないかのように走破できてしまう踏破性を見せた。 最大斜度30度の急な下り、しかも路面がぬかるんでいて滑りながら降りるような場面。そこではクロウルコントロールを起動し、時速1キロ~5キロまでの間でアクセルもブレーキも操作しなくてもクルマがすべてを電子コントロールし、ドライバーはステアリング操作だけに集中して行くということが可能だ。4輪個別ブレーキをかけることによりフットブレーキでは引き出せないような高度な制御が可能となり、こういう悪コンディションの下り坂でも安心して降りられることができた。同じような場面の登り区間でもクロールコントロールで登って行けばアクセルを踏み増す必要もなく設定速度で登っていける。そんな場面でもエンジンは結構な回転数でパワーを引き出し、力不足を感じることはない。最後に岩石を積み上げたような段差路を試す。タイヤサイドをぶつけたらバーストしてしまいそうな尖った岩石が多数露出した部分もマルチビューモニターを使って乗り越える形で踏破して行くのだ。
このオフロードグレードは18インチのタイヤが標準装着されていて、外見的にも見るからに悪路に強そうな出で立ちとなっていた。たとえ20あるいは22インチのタイヤを装着していても、おそらくこの程度の悪路は問題なく走破できるという。22インチはタイヤ外径が大きくなることで最低地上高は若干高まるので、なおさら路面の凹凸への踏破力は高まると言えるのだ。ただしタイヤが路面をグリップすることが最低必要条件で、アイスバーンや雪道路面などをノーマルタイヤで走破することはできない。いくらLX600オフロードであっても雪道を走るときには雪道専用タイヤを装着することは必須である。
今回この3グレードのLX600新型を試乗して、共通しているのはその高い静粛性と安定性そして高い踏破性である。LX600の主なターゲットユーザーは中東の砂漠地帯であったり、オーストラリアの岩石路あるいはシベリアのツンドラ地方などの自然環境の厳しい地域で、そんな環境下でもレクサスらしい快適さを求めるユーザーに適合させている。そうした地域的な要求条件を長年の実績で理解しているレクサスの開発グループだからこそ、このように仕上げることができたのだといえるだろう。ランドクルーザーと同じプラットフォームとパワートレインであるが細かなチューニングの差や装備で差別化を図ることで地域毎のユーザー満足度も高度に得られるに違いない。日本国内のユーザーにとってはランドクルーザーの方がよりマッチするとかもしれないが、レクサスとしてのこの快適性を日常的な移動で求めたり、悪路を走ることはないようなユーザーでもその高い安心感と「いざ」というときの踏破性を生命の保障として所有していたいと言うようなユーザーは数多い。
ただ納期については 現状でも4年前後の納車期間が必要となることは否めないという。生産工場はランドクルーザーと同じであるということもあって ランドクルーザー以上に納期がかかることが 現在危惧される唯一の課題といえるだろう。
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