輸出仕様クーペのヘッドライトは円形4灯
4代目トヨタ・クラウンのシャシーは、3代目からのキャリーオーバーだったが、オーバーヘッドカムの2.6L直列6気筒エンジン、4Mユニットが登場。日本では2.0L直列4気筒エンジンも選択できたものの、英国へは輸入されなかった。
【画像】クジラ・クーペの不思議な魅力 トヨタ・クラウン(4代目) 同時期の欧州製クーペと比較 全137枚
コラムシフトで3列8シーターのステーションワゴンに加えて、2ドアのハードトップクーペもグレートブリテン島へ上陸。日本仕様では、クーペには長方形のヘッドライトが与えられたが、輸出仕様はサルーンなどと同じく円形4灯だったという違いがある。
4代目のクラウンは、3列シートのステーションワゴンが各国で支持を集めた。2100ポンドという英国価格は、お手頃な大型モデルと呼べる設定ではなかったが、乗車定員の多さと荷室の大きさが融合し、コストパフォーマンスは確かに高かった。
AUTOCARの試乗レポートを振り返ると、ギア比の低さや燃費の悪さ、重いステアリングホイールと顕著なアンダーステアなどを指摘している。充実した標準装備にも関わらず、パワーステアリングは1973年のマイナーチェンジまで選択できなかった。
この1973年仕様では、エンジンの圧縮比が高められ、バランスも改善。最高出力は152psへ増強されている。最上級のクラウン・スペシャル・サルーン(ロイヤル・サルーン)には、8トラックプレーヤーにヘッドレスト、エアコンが標準で備わった。
グレートブリテン島での残存は僅かに1台
クラウンの手強いライバルになったのが、フォード・グラナダ。操縦性では遥かに優れ、ひと回り大きい3.0L V6エンジンでも英国価格に大きな差はなかった。
0-97km/h加速は12.7秒で、クラウンの方が速かったが、低いギア比で最高速度は伸びなかった。快適な巡航速度も、グラナダより低かった。とはいえ、優れた装備内容とアメリカンな雰囲気のデザインは確かな強みになった。
4代目クラウンの生産数は、約40万台と記録されている。2ドアのピラーレスクーペが、その何割を占めたのかは明らかではないが、サルーンやステーションワゴン以上にラインオフしたとは考えにくい。恐らく、3種類の中で最も希少だろう。
1970年代のグレートブリテン島では、クラウンのクーペは間違いなく珍しかった。1997年に70台も残存していたと知り驚かされたが、それから25年が過ぎ、ナンバー登録されている例はたった1台へ減っている。ほかに、4台が一時抹消状態にあるようだ。
今回ご登場願ったホワイトのクラウンが、その英国唯一の車両。オーナーはクライブ・ルイス氏で、頻繁に一般道を走らせているという。当初はライトブルーの塗装だったが、フォード・マスタングへ似た雰囲気を活かすため、塗り直したそうだ。
ボディやインテリアの状態は素晴らしい。だが、幅175の14インチ・タイヤは年季が入っており、筆者が後年に試乗した記憶ほど、走りに精彩がなかったのは残念だ。
低速域で重いステアリング ストレートは安定
リアヒンジ式のボンネットを持ち上げると、クロスフローの直列6気筒エンジンが姿を表す。2バレルの愛三社製ダウンドラフトキャブレターが載り、ブルーに塗装されたエグゾーストマニフォールドが目を引く。メルセデス・ベンツのユニットにも似ている。
インテリアは、ブラックの合皮で覆われている。友人の父が乗っていた、クラウン・ステーションワゴンを思い出させる。
ドアは長く、リアシートへの乗り降りは想像ほど大変ではない。Cピラーが太く、斜め後方の視界を遮っている。ダッシュボードとステアリングホイールのデザインは、美しいとはいえないだろう。タコメーター以外の計器類が、正面にずらりと並ぶ。
集中ドアロックが備わり、トランクリッドは車内から解錠でき、サイドウインドウはすべて電動。リアシート側からもラジオを操作できる。キーをイグニッションの位置で挿しっぱなしにしていると、ブザーが警告を続ける。
運転席からの視界は、水平に伸びるボンネットの主張が強い。2.6L直列6気筒エンジンが遠くからノイズを放つ。3速ATのシフトチェンジは滑らか。キックダウンの反応も悪くないが、目立って加速力が増すわけではない。ロードノイズは小さめだ。
ブレーキングでノーズを沈めるが、安定してストレートを駆け抜けられる。大きなステアリングホイールは、低速域では明確に重い。レシオはスローで、小回りが利くとはいえない。思い切り腕を動かす必要があり、繊細な操舵は難しい。
不思議な魅力の超希少なクジラのクーペ
クラウン・ハードトップクーペの走行フィールは、至って穏やか。アグレッシブという言葉とは無縁で、これは当時の英国人がトヨタを支持した理由でもあった。
高級車という市場では、価格価値以上にブランドのステータスが重要視される。その点で、4代目クラウンの訴求力は及ばなかった。とはいえ、初の純国産車から25年後に誕生したモデルでありながら、印象的な水準に届いていたことは明らかだろう。
それから50年が経過し、超希少なクジラのクーペは、唯一といえる不思議な魅力を放っている。確かに、要点を逃していた側面もあるが、トヨタによる賢明な努力が表れている。高級サルーン最高の1台、レクサスの原点が生まれていたことは間違いない。
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みんなのコメント
ハードトップのカッコは大好きだったけれど、この頃のブレーキはダメダメ。ペダルをチョンと軽く少し踏んだだけで、タイヤがギャンとロックするほどブレーキがかかる。パニックブレーキなどとても踏めるブレーキじゃない。
マスターバッグの培力を大きくして、あたかも「効くブレーキですよ」と言ってた時代。
ナンバー末尾がKだから1972年度の登録。