車の歴史 [2024.06.07 UP]
いつも心にスポーツマインドを。ホンダ シビックの歩み【名車の生い立ち】
クルマというのは、モデルチェンジで名称が変わってしまうことは珍しくありません。何十年にも渡って同じ車名で販売されるほうが稀とさえいえます。しかし、ホンダ シビックは発売から半世紀以上も名称を変えず、2024年6月の今でも世界中で販売されている名車。今回は、そんなシビックにスポットライトを当て、その生い立ちを振り返ってみましょう。
シビックe:HEVでレースに挑む【石井昌道の自動車テクノロジー最前線】
いち早く環境対策を取り入れた初代シビック
初代:1972年 シビック
ホンダ シビックが誕生したのは1972年のこと。高度経済成長の最中だった当時の日本は、環境問題が深刻化していた時代。新聞やテレビでは光化学スモッグという言葉が連日報じられ、専門家だけでなくお茶の間の主婦や子どもにも知られるほど大きな社会問題となっていました。光化学スモッグとは、自動車の排気ガスや工場からの排煙に含まれる窒素酸化物や炭化水素が光化学反応を起こして発生した有害な物質。これに加え、工場排水が原因のイタイイタイ病、四日市ぜんそくなど公害訴訟も問題となっており、環境保護への関心が高まっていました。
そんななか、手頃な価格の実用車として登場したシビックは、無鉛ガソリン用エンジンを搭載し、鉛公害対策を実施。また、蒸発する炭化水素を大幅に抑制する燃料蒸発抑制装置を採用したことで、環境負荷の軽減を大きくアピールしたのです。さらに1973年、ホンダはCVCCと呼ばれる技術を開発し、シビックに搭載しました。これは排出ガス中の有害物質を低減させるもので、これにより当時はクリア不可能と呼ばれた厳しい米国の排ガス規制(マスキー法)をパス。これを契機にシビックは世界中にその名を轟かせ、一躍ヒットモデルとなったのです。
初代:1972年 シビック 2ドア DX
もちろん、環境性能の高さだけが評価されたわけではありません。全長3405mmという手頃で扱いやすいサイズと快適な室内、四輪独立懸架による高い運動性能など、走る楽しさを備えていたことも見逃せません。1974年には、エンジンを高出力化した「RS」を追加。これはホンダのスポーツグレードとして多くの車種に展開されていきました。
2代目:1980年 シビック 1300 3ドア GL
1979年にはモデルチェンジを受けて2代目が登場。「スーパーシビック」の愛称で呼ばれたこのモデルは、初代のイメージを引き継ぐ台形型のシンプルなプロポーションを採用し、幅広いユーザーに愛されました。また、従来の「RS」に代わるスポーツグレードとして「CX」も登場。さらにシビックのワンメイクレースも行われるなど、スポーツイメージはさらに高まって行ったのです。
「MM思想」で快適性も重視した3代目ワンダーシビック
3代目:1983年 シビック 25i
80年代に入ると、日本の様相はより一層変わっていきます。日本国内の自動車生産台数が1000万台を超え、自動車先進国であるアメリカを抜いて世界で第1位に。自動車は、日本の主要産業として確固たる地位を築きました。1983年にはワープロやパソコンの普及、任天堂ファミリーコンピュータの発売など、国民の生活にもデジタルの波が押し寄せた年でもあります。そんな時代に発表されたのが、「ワンダーシビック」の愛称を持った3代目シビックでした。
3代目では、マン・マキシマム・メカ・ミニマムの思想(MM思想)で設計されたのが大きな特徴。簡単にいえば、人が快適に過ごす空間は大きく、エンジンやメカニズム部分はコンパクトに……という意味です。それまでのシビックは、お世辞にも広く快適なクルマとはいえませんでした。しかし3代目は全長3810mm、全幅1630mm、全高1340mmと車体を大型化(3ドア)。パッケージングなどの設計も見直され、優れた空力性能と居住性の拡大を両立したのです。さらに、100mmのスライド機構を備えたリアスプリット・リクライニングシートの採用など、快適性が重視されるファミリーカーの要件をクリア。とはいえ、シビックは牙を抜かれた快適ファミリーカーに甘んじたわけではありません。発売翌年の1984年には、高性能な1.6L 直4DOHCのZC型エンジンを積む「Si」を追加。こちらは全日本ツーリングカー選手権でも使われるなど、走り好きのマニア心をくすぐるグレードも健在だったのです。
スポーツ性能をさらに追求した4代目~5代目シビック
4代目:1987年 シビック 3ドア 23L
4代目シビック(通称グランドシビック)が登場したのは、1987年のこと。この年はモータースポーツブーム真っ盛り。中島悟が日本人初のF1レギュラードライバーとして、ロータス・ホンダからデビューしたことも話題になりました。そんな背景も影響してか、この時代は安価でよく走る小型スポーティカーが人気を集めており、当時の若い走り屋たちは毎日中古車雑誌を眺め、次の愛車候補を探していたのです。
そんな折にデビューした4代目シビックは、スポーツ性能を全面に押し出したのがトピック。「ハイパー16バルブエンジン」と銘打った高性能なエンジンを、1.3L、1.5L、1.6Lモデルに搭載し、走りの性能が一段高いレベルに引き上げられました。なかでも「Si」に搭載された1.6Lモデルでは、最高出力130馬力、最大トルク14.7kgmを発揮。四輪に新開発ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用し、前輪駆動ながら本格スポーツカー顔負けの走りを獲得。また、同じプラットフォームを採用した2ドアのCR-Xでは、より走りを追求したスポーツカーとして人気を集め、今でもファンが多い伝説のFFスポーツとなったのです。
シビックの高性能化はこれだけに留まりません。1989年には、1.6Lモデルに可変バルブタイミングリフト機構(VTEC)を備えた「SiR」が登場。最高出力はリッター辺り100馬力を達成した160馬力を実現。レーシングカー顔負けの高回転型エンジンは、市販スポーツモデルの人気株に躍り出ました。
5代目:1991年 シビック SiR II
1990年代に入ると、バブル経済は崩壊。ソ連崩壊や湾岸戦争勃発など、またひとつ時代が動いた時期でもあります。そんな時代背景のなか、1991年に登場したのが5代目シビック。「スポーツシビック」の愛称のとおり、先代までのスポーツイメージを引き継ぎつつ、丸みのあるすっきりとしたデザインとなったのが見どころ。また、ホンダのお家芸でもあるVTECがさらに拡大展開され、燃費志向から高性能化を目指したものまで3タイプのVTECが開発されました。バルブ休止やリーンバーン技術を導入することで、VTEC-E搭載車では、20.5km/L(10モード)という低燃費も実現。一方足まわりでは、サスペンションストロークを拡大して乗り心地をアップするなど、スポーツ性能だけにとらわれない基本性能が見直された世代でもありました。走りと快適性を両立したことで、シビック人気はまさに絶頂期を迎えていました。
走りを極限まで高めた「TYPE R」がデビュー
6代目:1995年 シビック SiR II
1995年、シビックはフルモデルチェンジを受けて6代目(ミラクルシビック)に進化。この年は銀座にスターバックス1号店がオープン。また、安室奈美恵ファッションに身を包んだアムラーファッションが一大ブームになり、街にはルーズソックスと厚底ブーツを履いた女の子であふれていました。バブル崩壊から数年が経ちましたが、少し浮かれた独特の空気感が記憶に残っているひとも多いでしょう。
6代目へのモデルチェンジは、キープコンセプト。クルマのシルエットも5代目から大きく変わりませんでしたが、高出力型の3ステージVTECエンジン、次世代CVTのホンダマルチマチック、さらにビルトインタイプのホンダナビゲーションシステムを導入するなど、基本性能や快適性をしっかり底上げしたのがトピック。パワートレインは1.3Lの「EL」から1.6Lのスポーツモデル「SiR」まで、ニーズに合わせた幅広いグレードが展開されました。
6代目:1997年 シビック タイプR
1997年、シビックに「タイプR」が追加されました。NSXに初設定された後、2ドア/4ドアクーペのインテグラに導入されたスポーツモデルが、シビックにも設定されたのです。シビックタイプRは、それまでシビックに設定された「RS」や「SiR」のようなスポーツグレードとは明らかに異なるものでした。パワートレインには、リッター当たり116馬力に達する185馬力の専用1.6L DOHC VTECを搭載。ハードに締め上げられたサスペンションやトルク可能式ヘリカルLSD、ボディ剛性の強化、ハイグリップなポテンザRE010タイヤの装着……ひと言でいえば、公道走行が可能なレーシングカーといったところでしょうか。世界中を見ても、これほどスパルタンなスポーツモデルは珍しく、新車時価格も200万円以下と安価なこともあって若者を中心に多大な注目を集めました。
「MM思想」再び。スペース優先のスマートシビック
7代目:2000年 シビック iE
21世紀を目前に控えた2000年、シビックは7代目になりました。世の中は世紀末、時代の潮流も大きな変動を迎えます。この年はIT革命という言葉が流行語となり、一般家庭にもインターネットが普及し始めました。iモードの流行やソニーのプレイステーション2が発売されるなど、デジタル分野での娯楽も身近に。そんななか登場した新しいシビックは、これまでのコンパクトなデザインから一転し、ずんぐりと大きいボディを採用。サイズは全長4285mm、全幅1695mm、全高1495mmとひと回り以上も拡大され、一見するとミニバンのようなシルエットが特徴です。MM思想はさらに進化し、最大限の室内空間や1.5Lクラスでトップクラスの20.0km/Lの燃費(10・15モード)は、シビックに求められる新しい価値観を具現化したといえます。とはいえ、その翌年には2世代目となる「タイプR」も設定され、走りのDNAはたしかに受け継がれていきます。このタイプRは生産拠点が英国に移され、日本へ逆輸入されて販売されたことも特筆すべきところです。
7代目:2001年 シビック タイプR
8代目:2005年 シビック セダン
そして2000年代の半ばになると、クルマに対するニーズも大きく変化していました。平成12年排ガス規制(2000年施行)以降、多くの名だたるスポーツカーが生産終了に追い込まれ、80年代後半から続いていたスポーツカーブームが一気に下火に。それと同時に、シビックの主戦場だったファミリー向けハッチバック市場も日本で衰退していったのです。これは、ひとつ下のクラスのフィットが台頭し、シビックのマーケットを奪ったことも理由のひとつ。2005年に登場した8代目シビックでは、初代から続いたハッチバックボディが日本市場には投入されず、4ドアセダンのみの展開となったのです。また、日本、北米、欧州では異なるボディを採用し、仕様地ごと作り分けられたのもこの世代の特徴といえます。
それでもスポーツマインドは死なず。続く「タイプR」攻勢
8代目:2007年 シビック タイプR
日本市場ではセダンのみとなった8代目シビックですが、驚くべきことに「タイプR」が存続決定。2007年、セダンをベースにした「タイプR」が発売されたのです。2.0L DOHC i-VTECエンジンは、最高出力225馬力を達成。これにクロスレシオ6速MTを組み合わせ、タイプRの伝統である高いボディ剛性と強固な足まわりをひっさげ、日本では手薄だったスポーツセダン市場に投入されたのです。ハッチバックよりもボディ剛性に有利なセダンのタイプRは、これまで以上にスパルタンな走りを実現し、その実力は紛れもなく本物でした。
8代目(欧州仕様):2009年 シビック タイプR ユーロ
タイプR攻勢はさらに続きます。2009年には、欧州仕様のハッチバックをベースとした「タイプR ユーロ」が日本に限定導入。こちらは、日本仕様のタイプRよりも若干おとなしい201馬力の2.0L DOHCを搭載し、6速MTが組み合わされました。「シビックといえばハッチバック」という昔ながらのファン感涙のモデルで、翌年にも追加導入されるほどユーザーから高い評価を獲得しました。
9代目:2015年 シビック タイプR
2012年、欧州では9代目のシビックが発売されましたが、残念ながら日本への導入は見送られました。日本車としてのシビックの系譜はここで途絶えたかと思われたものの、2015年に新型シビック タイプRが日本市場にも投入。ベース車の販売はなく、潔くタイプRに絞って日本で限定発売されたのです。それまで高回転型自然吸気エンジンを搭載したタイプRでしたが、この世代のタイプRでは310馬力の2.0L DOHC VTECターボを搭載。ドイツのニュルブルクリンク北コースで7分50秒63と、2014年5月当時でFF量産車トップクラスのタイムを叩き出しました。わずか750台の限定車でしたが、そのポテンシャルは高く評価されました。
10代目:2017年 シビックシリーズ(セダン、タイプR、ハッチバック)
2017年、10代目シビックが登場。この世代ではスタンダードな4ドアセダン、5ドアハッチバックもレギュラーモデルとして販売されました。しかし、注目なのはやはりタイプR。先代と同じく2.0Lターボが搭載されましたが、最高出力を320馬力に増強。新開発プラットフォームで軽量化が図られ、ニュルブルクリンク北コースでFF量産車トップのタイムを記録したのです(2017年当時)。タイプRはもちろん、ベース車もスポーティなルックスと走りが売りで、手頃なスポーティモデルを求めていたドライバーに好意的に迎え入れられました。そしてなにより、シビック復活というニュースは日本のホンダファンにとってこの上ない朗報となったのです。
走りと環境性能を高い次元で両立した新時代のシビック
11代目:2021年 シビック EX
初代シビックが誕生してから50年後の2022年、11代目にフルモデルチェンジ。令和生まれのシビックの新基軸は、なんといってもスポーツe:HEVの導入でしょう。新開発の2.0L直噴エンジンに2モーターハイブリッドシステムを組み合わせたスポーツe:HEVを採用し、力強い加速と高い燃費性能を両立。シビックらしい快活な走りは、かつてのシビックにも劣らない魅力を備えています。また、先代のメカメカしいルックスから一転し、知的でスマートなデザインも大きな見どころ。さらに、通算6世代目となるタイプRもカタログモデルとして継続投入。こちらは新時代の高性能ホットハッチとして、20代~30代の若い世代にも注目されるモデルとなったのです。
走る楽しさを教えてくれた相棒のような存在
6代目:1995年 シビック SiR II
初代シビックが発売されてから半世紀以上が経ちました。初代の登場以降、シビックは身近なファミリーカーであると同時に、運転の楽しさを教えてくれる相棒のような存在。どの世代にもスポーティなグレードが置かれ、クルマで遊ぶ楽しさを感じたひとも多いことでしょう。2000年以降ではスポーツカーブームが陰り、人気が低迷した時代もありますが、タイプRの系譜が途絶えなかったことも驚くべきこと。日本でハッチバックは売れない……そんな声にも負けず、今なお新しい魅力を提供してくれるシビックは、自動車の歴史を語る上で欠かせない名車なのは間違いありません。
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日本へ逆輸入とは、輸出された日本製品を日本が輸入すること。
英国製品だったら、唯の輸入でしょ。