初代パルサーエクサの後継車として1986年10月に登場したエクサ。アメリカ市場ではクーペ、オープン、キャノピー(ワゴン)の3つの車体形状に変更できたが、日本では認可されずクーペとキャノピーそれぞれ独立した車種として販売され、互換性はなかった。着せ替えできるクルマといえばコペンが有名だが、もうちょっと時代が遅ければエクサも認可されていたかと思うと残念だ。その数奇な日産エクサの新車発売当時の記事を振り返ってみたい。
※本企画は1986年11月26日号、1986年12月10日号を再掲載したものです。
アメリカはOKなのに日本はダメ!? [エクサ]国内だけ着せ替えが認められなかった衝撃のワケ
文:ベストカーWeb編集部、写真:ベストカー編集部、ベストカーWeb編集部
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■1986年新車発売時の評判は?
1986年10月に発売された日産エクサクーペ
1986年10月に登場した日産エクサ。ルーフを外せばオープンにもできるクーペ、取り外しはできないがシューティングブレーク(ワゴン)のようなキャノピーを備える、キャノピーの2種類のモデルをラインナップした。アメリカでは、クーペ、オープン、ワゴンと3通りに着せ替えできたが、独立した車体形状ではないと運輸省が認可しなかったのだ。
ベストカー1986年11月26日号
エクサは実にオ~ッと驚くクルマである。さすがにこれだけ大胆なデザインは日本人ではできなかったらしく(これを採用した首脳の決断はたいしたもんだが)、アメリカは西海岸に本拠を置くNDI(ニツサン・デザイン・インターナショナル)が担当した。
エクサクーペ。ハッチを取り外した状態
キャノピーモデルのCピラーに見覚えのある人が多いと思うが、最近出た新発想の4WDモデル、テラノもこのNDIの作品である。自由な国アメリカの自由な発想で生まれたエクサの飛んでる部分を見てみよう。
ちなみに今度のフルモデルチェンジでEXA(エクサ)はパルサーの名が外れ、独立した車種になった。しかし販売店は旧型と同じチェリー店。
「ある時は、背中に荷物を担いだ行商、ある時はタバコ屋のオヤジ、またある時は一部上場企業の社長」。
アメリカ仕様のエクサだとこうなる。「ある時はクーペ、ある時はTバールーフ、またある時はフルオープン、キャンバストップつけりゃマイティボーイ風。思い切ってキャノピー付けて気分転換」。
エクサキャノピー。キャノピー部分は脱着可能だった
日本仕様の場合は運輸省の厚い壁があるために、クーペとキャノピーを別々のベースにクーペ(キャノピー)→Tバールーフ→フルオープン→キャンパスハッチという4変化に終わってしまうが、それでも十分に画期的。
通勤にはクーペを使い、休日にフルオープンにできるようなクルマがあったらいいが、クーペボディそのものはあまりカッコいいとはいえないし、キャノピーは宇宙的でおっとっと思ってしまうが、その変貌自在な変身ぶりに拍手を送りたい。
エクサクーペ、キャノピーのカタログより
ではハード面はどうなっているのだろうか。まずエンジン。これはツインカム4バルブのCA16DE1本。オープンカー初のツインカムパワーで、走りのほうも保証付き。サスペンションも日産のFFで定評のある前ストラット、後ろパラレルリンクストラットで万全。ブレーキだって前ベンチレーテッドディスク、後ディスクと文句なし。
一見、華奢そうな車体だがクーペとキャノピーは同じ1070kg。重いハッチバック(約25kg)やキャノピー(こちらも約25kg)を外してフルオープンで走ればワインディングロードも軽快だ。なおエクサのリアシートはCR-Xの1マイルシートならぬ2マイルシート。2シータースペシャルGTなのだ。
クーペType Bのコクピット。意外にシックだ
価格は10月14日から発売となったクーペのType Aが164万円(5MT)、172万8000円(4AT)。Type Bが177万9000円(5MT)、186万7000円(4AT)。12月1日から発売となるキャノピーがType Aが179万円(5MT)、187万8000円(4AT)、Type Bが192万9000円(5MT)、201万7000円(4AT)。
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■徳大寺有恒氏はエクサをどう評価したのか?
ベストカー1986年12月10日号より。写真中央は主査の川村紘一郎氏
新しいエクサはスペシャルティカーの楽しみを広げているところに価値がある。スペシャルティカーという種類のクルマはまず、スタイルが美しく、スポーティだ。次にハイパワー、グッドハンドリングでドドライビングプレジャーを与えてくれる。
この2つのためにスペシャルティカーは多くのクルマ好きに支持されてきた。しかし、エクサはこの2つに加えてオープンエアドライプを楽しめる。さらにクルマ自身の変身が万能で、ユーザーは気分とそれにともなった生活感を変えることができる。これは新しい価値を持ったクルマだと思う。
ワニのように大口を開けるハッチ。重量は25kg
たしかに相当大きなリアハッチをどこに置くんだ? という貧しい事情がこの日本にはあるが、これがアメリカ(まさにこのクルマはアメリカ向けに企画されたのである)であれば問題はなく、2種のハッチを取りかえることすらできるのである。
エクサはカーデザイナーとスタイリストのひとつの案を生産というカタチで大メーカーが実現した。過去、この種の実験や提案は少なくはなかったが、実験と生産は根本的に違う。これを成功させたメーカー日産はその勇気を誉められてしかるべきであろう。
エクサのスタイルは3種。基本はクーペとキャノピーというノッチバックとスポーツワゴン風な取り外し可のハツチを持つ。そしてルーフがTバーとして外れ、クーペ、キャノピーともにオープンになる。これで合計3種。クーペとオープン、キャノピーとオープン。ユーザーはこの2つの選択が可能だ。アメリカではクーペ、キャノピーの互換性があるが、日本では許されないのは残念。
エクサのリアシートは2マイルシート。つまり3.2kmほどの距離だったら乗っても平気という意味
スタイルとしてはもう圧倒的にキャノピーが上。クーペはルーフが高く感じるが第一、バランスがよくない。エクサを買うならキャノピーにかぎる。そのキャノピーの横からのスタイルはとてもいい。このエクサで少しおもしろくないのがフロントで、こいつが平几。このフロントにさえをみせたらこのキャノピーは完全だったのに。
キャノピーもクーペも、ハッチはガンメタルグレーにベイントされている。キャノピーはともかく、クーペは同色のほうがいいと思う。ボディカラーは明るいブルー、白、赤、ガンメタルグレー、シルバー。本当はイエローやグリーンもあっていいと思う。今のところガンメタルグレーか明るいブルーがいい。
とにかく、このエクサ、キャノピーはアメリカンタッチで、デザインの遊びも随所にあり、楽しいフィールがおおいにいいと思う。
エクサのフロントシート。シートのデザインも新しさを感じる
■1.6Lエンジンを搭載したエクサの走りはどうなのか?
エクサのボディウェイトは1070kg、1.6Lクラスとしては相当重い。だからせっかくのCA16DEエンジンをもってしてもシャープな切れ味のいい加速とはいかない。
むろん、遅くはないが1.6Lとしては充分な加速だと思うが、ライバルのシビツクSiや力ローラFX GTよりは0~100km/h、0~400mのタイムは遅いかと思う。
しかし、私はそのことはエクサにとって大きなハンデキャップとは思えないのだ。最近のCA16DEはすこぶるスムーズでキレ味のよいエンジンになっているからである。メ―カーは別にどこを変えたとは言っていないのだが、明らかに初期モデルよりいい。
特に4500rpmあたりからレッドゾーンの7500rpmまでの吹け上がりの気持ちよさは「さすがに4バルブエンジン」なのである。シフトフィールは悪くないがセカンドとサードのステップ比が大きい。これがもう少し狭めればもっといい。
エクサクーペのカタログ
とにかく、エクサのエンジンはスポーティで自然吸気エンジンであるゆえの感じのよさを持っている。エクサはもとよリパルサーベースだからFFである。
逆にいえばFFだからこそこのレイアウトが可能だったといえる。そして、このFFのハンドリングはとてもよくしつらえてある。
ステアリングを切る。じわっとロールが起こる。ノーズが曲がりはじめる。リアが効きはじめロールはいっそう深くなり、クルマはコーナーをハイスピードで駆ける。
エクサキャノピーのカタログ
この一連の動作がとてもスムーズで気持ちがいい。タイヤサイズは185/60R14。そして適切なバネレートとダンパー、このコンビネーションでエクサはそのクラスらしからぬ大人びたコーナリングを示してくれる。
逆にいうとこのクラスのスポーティカーとしたら機敏なほうじゃない。しかし、けっして鈍じゃない。私はこのエクサのフィールをいいと思っている。リアのネバリはなかなか執拗で容易に流れるものじゃない。
しかし、フロントとのバランスがいいのでコーナリングスピードは高い。エクサのインテリアはその外観の派手なことに比べるとシックである。
すでに登場のパルサー(特に4ドア)はインテリアがシックで私はとても好きなのだが、このエクサもツィーディなファブリックを使っている。
濃いめのグレーのヘリングボーンを用いている。インテリアもデザインの遊びをやっているが、それでいて、このクルマが妙に子供っぼくならないのはこのシックなシート、ドアトリムによるものだろう。
エクサクーペ。今見ても色褪せない
エクサはとても楽しめるクルマだった。オープンエアドライブはやはリクローズドボデイと明らかに違う世界をみせてくれた。
エクサは少々高価なクルマである。1.6Lクラスとしては最高のプライスタッグがつく。ただ走るなら、エクサのボディバリエーションや重さは不要だろう。
ただ、美しいだけなら他にも選択肢はある。しかし、けっこうよく走ってハンドリングもおもしろくて、しかもカッコよく、かつオープンも味わえるとなるとエクサしかない。
別の言いかたをするとキャノピーは都会に似合う。しかし郊外でオープンが楽しい。どうだろうキャノピーの179万円、192万円は高いだろうか。
※ ※ ※ ※
さて、エクサはいかがでしたか? こんな自由な発想のクルマはあまりないですよね。エクサでできなかった着せ替えをコペンが実現してくれましたが、このエクサこそが真の着せ替えグルマと呼ぶにふさわしいクルマじゃないでしょうか。特にキャノピーのデザインは今見ても色褪せてないと思います。
中古車を探せばいいじゃないかといわれそうなので、大手中古車検索サイトを探してみると意外にもあるじゃないの。クーペが3台、キャノピーが2台もありました。クーペは138万~158万円、キャノピーは程度極上で379万円と高かったです。欲しいという人はぜひ!
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みんなのコメント
外板のデザイン違いにすぎないコペンとは違って、エクサの場合クーペとキャノピーでは車検証の「車体の形状」項目がそれぞれ「箱型」「ステーションワゴン」と別々になってしまうからという理由があったのですが。
いつもながら「衝撃のワケ」などと見出しに入れるくせにワケを書かないで澄ましていられる厚顔無恥さは、現兵庫県知事とも張り合えるのではないでしょうか。