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FRPボディにV6エンジンのキットカー 期待以上のギルバーン・ジェニーとインベーダー 前編

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FRPボディにV6エンジンのキットカー 期待以上のギルバーン・ジェニーとインベーダー 前編

自分のための多用途なスペシャル・モデル

FRP技術の向上で、スペシャル・モデルと呼ばれる簡素なスポーツカーを生み出す小規模メーカーが、1950年代に英国では数多く生まれた。ある程度の技術と資金を持つクルマ好きの殆どが、オリジナル・マシンを作ろうとしたと思えるほど。

【画像】FRPボディに3.0L V6 ジェニーとインベーダー 少量生産された独自モデルは他にも 全116枚

なかでも商業的な成功を収めた1つが、グレートブリテン島の西部、ウェールズ地方で誕生したギルバーン。現実的な目標でスタートし、15年間に約1000台を販売している。

肉屋を営んでいたジャイルズ・スミス氏と、元ドイツ兵のバーナード・フリーズ氏によって、ギルバーン・スポーツカー社が設立されたのは1959年。コーリン・チャップマン氏などのように、技術分野で能力を高めてきた人物ではなかった。

2人が思い描いたのは、自らのための多用途なスペシャル・モデルを1台作ろうというアイデア。平日は仕事に使えて、週末にはスプリントレースやヒルクライム・イベントに挑戦できるようなクルマが理想だった。

製造品質は同時期のスペシャル・モデルより優れていたが、公道用レーシングカーと呼べるほどの内容ではなかった。小柄なFRPボディにブリティッシュ・モーター・コーポレーション(BMC)のエンジンを載せた1台が、ギルバーンGTの始まりとなった。

その可能性へ気が付いたのが、スミスと仕事上で関わりを持っていた、レーシングドライバーのピーター・コットレル氏。実際、2台目のGTを購入している。

角パイプ・シャシーにフォードのV6エンジン

クルマの成り立ちは、正方形の断面を持つスチール製角パイプで組まれたシャシーに、見た目の良いFRPボディをリベットで固定したもの。リア・サスペンションは、リジットアクスル。エンジンや駆動系には、BMCの既存部品が流用されていた。

ボディの品質には拘られ、パネルの精度を高めるため、ほぼ一体成型で仕上げられていた。当時の英国では、自ら組み立てるキットカーには自動車購入時の税金が免除されていた。市場は、ギルバーンの面白さに気が付き始めた。

そして、スミスとフリーズのアイデアが、高次元で具現化されたモデルが開発される。1966年から1974年にかけて製造された、ジェニーとインベーダーという2台だ。6気筒エンジンを搭載し、最高速度190km/h以上という性能が備わっていた。

BMCからは、ドライブトレインの卸値での提供を以前から渋られていた。1966年に、フォードからエセックスと呼ばれるV型6気筒エンジンがリリースされたことで、2人の考えが方向付けされた。

比較的軽量なV6エンジンは、138psを発揮。ウェールズ地方で作られるスペシャル・モデルに、グランドツアラー級の能力を与えた。小さな自動車メーカーとして、ギルバーンは1966年のロンドン・モーターショーで、華々しいデビューを果たした。

装飾性が抑えられたスタイリングを持つジェニーは、それまでのGTより若干長く、車重もかさんだ。そのかわり、多くのスペシャル・モデルとは異なり、まともなリアシートが備わっていた。

160km/hの高速クルージングも快適

3.0Lのフォード製V6には、高効率のエグゾースト・マニフォールドが組まれ、5psの出力向上を達成。キャブレターはウェーバーの40DFAで、オイルクーラーも備わっていた。発表時には2.5Lエンジンも用意されていたが、人気がなく廃版となっている。

ギルバーンが週末のガレージで組み立てられると主張したキット価格は、1425ポンド。塗装まで仕上がったボディに、オーナーがエンジンやトランスミッション、ビニールレザー張りのインテリアなどを組み付けることで、完成車より460ポンド安かった。

少なくない英国人が、自宅での組み立てを楽しんだ。完成したジェニーは、安全性の確認と初回の無料点検のために、ギルバーンへ招待された。

ハザードランプにリクライニングシート、電動エンジンファン、消化器、調整式のリアダンパー、ツイン燃料タンクなどが標準装備。オプションとして、英国オペルの部品を用いたパワーウィンドウも装備可能だった。

車重は1t前後と軽く、24.9kg-mの最大トルクを受け止めるため、ZF社製のリミテッドスリップ・デフも追加できた。人気のオプションだったのがオーバードライブ。1000rpm当たり43.4km/hの比率で、160km/hでの高速クルージングも快適にこなせた。

シャシーの設計は、基本的にはGTのキャリーオーバー。MGB由来のフロント・サスペンションと、フロントがディスク、リアがドラムというブレーキ構成だった。

1週間に6台の生産で10か月の納車待ち

生産初期の40台は、オースチン・ヒーレー譲りのリアアスクルが理由で、ワイヤーホイールを履いていた。MGCのリアアスクルへ変更されると、オリジナルのアルミホイールへ切り替えられている。

英国内に用意されたディーラーは4か所。自動車メディアの試乗レビューは上々で、1970年代が始まるまでに年間50台前後の注文があったという。ジェニーの最終的な生産台数は、約200台だといわれている。

一方でスミスとフリーズは、ギルバーンをエース・キャピタル・ホールディングス社へ1968年に売却。10万ポンドを投入し、1日1台のジェニーを生産するという野心的な計画が立てられた。

1969年にはジェニーの改良版、インベーダーが登場。強化されたシャシーに、MGCのフロント回りが組まれていた。見た目の違いは、ボディ面に一体化したドアハンドルと小さなテールライト程度だが、初期には採用されていないからややこしい。

インテリアの変更は大きく、デザインが新しくなり、ダッシュボードにはソフトパッドとウッドパネルが与えられた。安全性へ配慮されたステアリングホイールと、2速ワイパーも装備する。

1969年には、スポーツクーペのフォード・カプリ3000GTも発売されている。キット販売のインベーダーの方が500ポンド高かったものの販売は好調で、約10か月の納車待ちだったらしい。

実際、1971年に更新されたインベーダー Mk IIは、1週間に6台というペースで生産されていた。ボディの成形型が1台だけで、それ以上の増産は難しかっただろう。

この続きは後編にて。

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