■「市民の」ためのベーシックカーとして誕生した「シビック」
ホンダ「シビック」は、同社が販売中のクルマのなかで、もっとも歴史あるモデルです。
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かつてはホンダの登録車で一番小さいモデルでしたが、モデルチェンジを重ねるごとに大きくなり、コンセプトも変わっていきました。
そこで、シビックの初代モデルと最新モデルがどのくらい変わったかをまとめてみたいと思います。
●1972年発売の初代「シビック」
1972年、ホンダから新しい発想のコンパクトカーである初代「シビック」がデビューしました。FF駆動を採用し、ボディの四隅にタイヤをレイアウトして広い室内を実現。前後を切り詰めたデザインはイギリスの「ミニ」をオマージュしたようにも見えました。
ボディサイズは全長3405mm×全幅1505mm×全高1325mm(DXグレード、以下同様)の2ドアで、いまの軽自動車よりも全長で5mm、全幅で25mm大きいだけの、非常にコンパクトなサイズでしたが、乗車定員は5人となっていました。
エンジンは最高出力60馬力の1.2リッター直列4気筒OHCエンジンを搭載し、トランスミッションは発売当初4速MTのみの設定で、1973年に「スターレンジ」を持つホンダ独自の自動変速機「ホンダマチック」が追加設定されました。
装備が簡素だったこともあり、車重も615kgと非常に軽量で、60馬力とはいえキビキビとした走りを実現していました。
後に3ドアハッチバックや5ドアハッチバック、上級グレード「GL」、スポーティモデルの「RS」を追加発売するなど、多様化する消費者ニーズに対応するコンパクトカーを目指すようになります。
そして、1973年12月には、排出ガス浄化技術「CVCC」を採用した1.5リッター車を追加。このCVCCエンジン搭載車は、クリアするのが不可能といわれた北米の排出ガス規制「マスキー法1975年規制」の適合をパスして、1975年モデルから北米にも輸出されました。
CVCCエンジン搭載車は「燃費の良い低公害車」として、北米でも多くのホンダファンを生むきっかけになり、いまもシビックは愛されています。
初代シビックは1979年まで生産され、ボディサイズが大きくなった2代目にバトンタッチします。
■全モデルを同時開発することで性能が飛躍的に向上した最新の「シビック」
●2017年発売の最新型「シビック」
現行モデルのシビックは10代目で、2017年に発売されました。日本市場では2010年をもって一旦シビックの販売は終了しましたが、約7年ぶりの復活となったわけです。
ボディタイプは4ドアセダンと5ドアハッチバックの2タイプのボディとなり、5ドアハッチバックにはホンダが誇る高性能版「タイプR」があります。
なお、セダンは国内で生産、ハッチバックとタイプRは英国で生産し、輸入されています。
ボディサイズはセダンが全長4650mm×全幅1800mm×全高1415mm、ハッチバックが全長4520mm×全幅1800mm×全高1435mmと、これまでのシビックで最大となりました。
グローバル、とくに北米での販売がメインであることから、大型化は避けられなかったということです。
エンジンはセダンとハッチバックで共通の1.5リッター直列4気筒ターボで、最高出力はセダンが173馬力、ハッチバックが182馬力と、キャラクターに合わせたチューニングとなっています。
トランスミッションもセダンがCVTのみ、ハッチバックがCVTと6速MTを採用しています。
タイプRは駆動方式をFFとして、最高出力320馬力の2リッターターボエンジンを搭載。トランスミッションは6速MTのみです。
ボディ外観は専用のバンパーやエアロパーツが装着され、内装も専用のバケットシートなどでスポーティに演出。シャシでは接着接合による剛性アップと、専用のサスペンション、ブレーキがおごられています。
2017年4月、ドイツのニュルブルクリンク北コースでの走行テストで、FF車として当時最速の7分43秒80のラップタイムを記録するなど、高性能さをアピールしました。
なお、セダン、ハッチバック、タイプRは同時に開発され、シリーズ全体の諸性能を飛躍的に向上させたといいます。
※ ※ ※
シビックという名前は「市民の」という意味です。45年の歳月を経た最新モデルでは、もはや初代の面影は残っておらず、市民のためのベーシックカーというコンセプトも、ほとんど残っていません。
現在はシビックよりも小型な「フィット」という存在があるため、ベーシックカーの役割はフィットに委ねられているためです。
初代と最新を比べると、全長で約1200mm、全幅で約300mm大きくなり、出力は3倍以上、タイプRに至っては5倍以上もアップしていることになります。
シビックに限ったことではありませんが、いまでは世界中で売れるグローバルカーであることが必須で、日本の道路事情や使用環境だけを考えてクルマを作る時代ではありません。
こうした背景では、クルマの大型化や高性能化は当然の流れなのでしょう。
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