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開催間近!今さら聞けない「初めてのフォーミュラE」ガイド…フォーミュラEは「高速のチェス」ってどういうこと?

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開催間近!今さら聞けない「初めてのフォーミュラE」ガイド…フォーミュラEは「高速のチェス」ってどういうこと?

いよいよ今週末、3月29日・30日に初めて東京で開催される「フォーミュラE」 。「EVのフォーミュラカーで競うレースだよね」、「でもF1より全然遅くて、車の性能的にはF3ぐらいなんでしょ?」といった辺りが、日本でフォーミュラEに対する大方の認識ではないだろうか。

すでにフォーミュラEはシーズン10を迎えており、これまで9年も開催されてきた。これまで日本での情報が断片的で少なかった分、そろそろ概要や見方をアップデートしておかないと、初の東京開催、しかも東京としても初めての市街地サーキットだというのに、色々ともったいない。

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というわけで今回は、「今さら聞けない『初めてのフォーミュラE』ガイド」と題して、フォーミュラEの“基本のキ”を解説しよう。これを読めば、この週末がグッと楽しめるはずだ。

◆「車が遅い」は過去の話、最高速は320km/hにも
まずフォーミュラEは、FIAによって規定されたシングルシーターによる“公認”モータースポーツ競技だが、過去5年間にわたって4つ以上のコンストラクター、3つの大陸でシリーズ戦を争うという条件を満たした。よって2020-21年シーズンからは、FIAの世界選手権格式が与えられている。いわばF1やWEC、WRCと同格のモータースポーツ競技と見なされているのだ。

東京でのE-プリ(グランプリに代わる造語)はフォーミュラEとして121戦目だ。2023-24年シーズンは世界10か所の都市でダブルヘッダーを含む年16戦が開催され、参戦する11チームのうち、8つのワークスチームと2つのサテライトチーム、1つのプライベーターというラインナップとなっている。

「車が遅い」という批判めいた指摘も過去のものだ。当初の「GEN 1」マシンこそ出力180~200kW(245~272ps)で回生効率は100kWに限られ、最高速は225km/h程度かつ航続距離は約50kmほどしかなかった。だが最新の「Gen 3」の性能は、予選で350kW(476ps)、決勝で300kW(402ps)にまで高められ、前後輪とも駆動する効率の高さもあって最高速は320km/hにまで達する。

当初はバッテリー電力の消費の早さゆえに、決勝レース中にドライバーがピットインして車両を乗り換えるという苦肉の策がとられていたが、Gen 2以降は航続距離も伸びて車両交換せずにゴールまで走れるようになり、一定条件下で出力をプラス数十kWほど上げられる「アタックモード」も導入された。

いずれGen 3マシンでは600kWにまで回生効率および充電時の容量が上がっているため、アタックモードによる出力の上げ幅は+35kWにまで拡大されており、主催者によれば1レースで使うエネルギーの約4割は、回生から得られているという。

◆フォーミュラEは「高速のチェス・ゲーム」
だからこそ、フォーミュラEとは何ぞや?という問いに対し、公式サイトでは「フォーミュラEのレースとは(以下の要素を含む)高速のチェス・ゲームのようなもの」と説いている。

1. ノンストップで行われる以上、シート上のドライバーが繰り広げるもっともコンペティティブなモータースポーツ
2. 革新とレコードブレイクの加速的な相乗効果、最新鋭のパフォーマンス
3. 世界11カ所の大都市で行われる電動化されたエンターテイメントであること
4. ネットゼロを初回開催から実現、よりクリーンな未来へ向かう競争であること

以上の要素を目にすれば、モータースポーツに造詣が深い、または観戦慣れしている諸氏ならお気づきだろう。シャシーやバッテリーといった主要コンポーネントが共通でマシンが横並びに近い分、ドライビング勝負の側面がF1以上に強いものの、電力というエネルギー・マネージメントが大きなカギを握る点でチーム戦略が耐久レースのように重要であること。そして排ガスや騒音が少ないため、人里を遠く離れた通常のサーキットではなく市街地という人々の近くで競技が繰り広げられる、そのイマーシブル性に加え包み隠さずの透明性、そういったものがチェスのような頭脳ゲームに通じるところであり、高速で展開するというのだ。

◆「アタック・チャージ」でレースがさらに進化する?
ちなみに今後は、レース中に使えるエネルギー総量のマネージメント、そしてレース戦略をより興味深く難しくする新たなファクターとして、30秒のピットストップ&急速充電によって+4kWhのリチャージを得る「アタック・チャージ」が、昨シーズンからずっと議題に上がっている。

アタック・チャージがなぜなかなか導入されないかは、600kWの急速充電チャージャーを各チーム分、どう調達するかという物理的な問題はともかく、チャージャーにどう均等な電力を供給するかの問題がひとつ。というのも各ラウンド毎に転戦先の各都市で、一時的な市街地サーキットを設営する都合上、地元の電力供給事情あるいは消防法にも関わるところが二つ目、といえる。

いずれ競技ルールに新ファクターを導入するにも社会問題の解決が要るところ、そこが市販のEVとまったくパラレルな感覚という点にも、フォーミュラEの面白さがある。またフォーミュラEのサステナビリティ方針は、環境問題だけでなくFIAが推進する「ガールズ・オン・ザ・トラック」にも強く関わっていて、スチュワードやメカニック、チームスタッフやドライバーなど、あらゆる職種からモータースポーツに関わる女性の権利と機会均等への意識を呼びかけるプログラムを、転戦先の各都市で毎回、積極的に催している。

◆馴染みあるブランド、選手も活躍! 週末はビッグサイト周辺に注目
ワークスには現在コンストラクターポイントでトップのジャガー、ポルシェ、DS、マクラーレン、日産、マセラティ、そして日本ではまだ馴染みの薄いインドのマヒンドラと、VWグループでセアトのスポーツ銘柄であるクプラ(ただしマヒンドラとパワートレインを同じくしDTMの名門アプトがオペレートする)がいる。

ポルシェのサテライトとはいえアメリカはマリオ・アンドレッティのチームだったり、DSはペンスキーが走らせていたり、マクラーレンのワークスとはいえベースは日産のパワートレインを用いていたりと、色々とややこしいところもある。

そしてシーズン1からフル参戦しているドライバーは5名、トヨタGRでもおなじみセバスチャン・ブエミ、ルカ・ディ・グラッシ、ジャン・エリック・ヴェルニュ、アントニオ・フェリックス・ダ・コスタとサム・バードで、いずれも2~3回はチームを変えながら8~13勝を挙げている。初の東京開催における勝利がかかっているだけに、一層の熱が入ることは間違いないだろう。

「フォーミュラE 東京E-Prix」は3月29日と30日、東京都江東区 東京ビッグサイト(東京国際展示場)周辺特設コースで開催。29日はフリープラクティス1、30日にフリープラクティス2、予選、そして決勝がおこなわれる。また、フォーミュラE開催に合わせ東京ビッグサイトでは、ZEV(ゼロエミッションビークル)の魅力をアピールするイベント「E-Tokyo Festival 2024」が開催される。

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