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いまバブルの申し子が隠れた人気! 「新シーマ現象」で初代の中古価格が上昇中

掲載 更新 86
いまバブルの申し子が隠れた人気! 「新シーマ現象」で初代の中古価格が上昇中

当時を知る者だけではなく、昭和を知らない若者にも愛される1台

 1980年代に生産されたネオクラシックカーの「高級車枠」で、今もなお人気が高いモデルが日産・シーマ(初代・Y31系)。それまで日産のセダンと言えばセドリックとグロリアが一般向け高級車の地位を築いていたが、その上を行くハイグレードモデルとして1988年にデビュー。

なぜ「シーマ」だったのか? バブル絶頂時に「現象」を巻き起こしBMWやベンツすら凌駕した恐るべき日産車

 当時はバブル景気もあり、高額な車両でありながら記録的な販売台数を達成し、「シーマ現象」という言葉も生まれたほど記憶に残る名車として今も語り継がれている。また90年代に入ると高級セダンをドレスアップする「VIPセダン」のベース車としても人気を博し、若者たちの間で再ブームとなった。

 では現在はどうかというと、現行型だった全盛期とまではいかないが、密かに「シーマ現象」は続いている。Y31系シーマを中古で購入して、新たなオーナーになる人が少しずつ増えているのだ。ユーザー層を見ると当時乗りたくても高くて手が出なかった、もしくは当時乗っていたけどもう一度欲しくなったという40代以上の世代が大半である。

 ここまでは納得が行くのだが、実は18歳~20代の若いオーナーも意外と多い。聞くと親が若い頃に乗っていた、生まれる前の昭和時代に人気だった高級車に乗りたい、というのがその理由。確かに先進的な現行車ばかりを見てきた若者にとっては、旧車のような新鮮さを感じるのかもしれない。

 そこで今回はY31系シーマの特徴や人気の秘密、そして中古車市場の動向を語っていく。

ツインカムターボとエアサスの組み合わせで、当時は向かうところ敵なし

 1987年6月にフルモデルチェンジしたY31系セドリック/グロリア。その半年後となる1988年1月に、同車と同じプラットフォームを持つ上級車種のシーマが販売を開始した。

 セドリック/グロリアはバンパーの出幅を抑えて全長が若干短くなっている5ナンバー車の設定もあったが、シーマは3ナンバーボディのみ。セドリック/グロリアの最上級グレードである3ナンバーのブロアムVIPと比較すると、シーマの方が全長プラス30ミリ、全幅プラス50ミリワイド(タイプllリミテッド)になっている。また角に丸みを持たせた滑らかなスタイリングや、ふんだんに使われたメッキパーツにより、上品なムードをさらに高めている。

 シーマは1989年8月にマイナーチェンジを行っているが、エクステリアの変更は最小限に留めている。グリルの横フィンが2本から4本になり、テールランプの透明度が若干増した程度。グリルのデザインがより繊細になったことから、前期のシーマに乗るオーナーの中にはグリルだけ後期純正に付け替えて新しく見せるという人もいた。

 エンジンはツインカムターボのVG30DET、NAのVG30DEの2種類。足まわりはグレードにより、電子制御エアサスペンションまたはコイルスプリング式サスペンションが設定された。シーマは様々なグレードが用意されたが、一番人気はターボエンジンとエアサスを装備したタイプIIリミテッド。アクセルを踏むとリアの足まわりが沈み込んで一気に加速する、その姿が今も印象に残っているという人も非常に多い。

 室内もセドリック/グロリア・ブロアムVIPと比較すると、室内長プラス20ミリ、室内幅プラス10ミリ(タイプll)と若干だが広くなっている。センターピラーレスハードトップのため、窓を全開にすると非常に開放感がある。シートはモケットの他に、オプションで本革を用意。後期型からはシートやドアトリムに白本革を採用したオプションパッケージ、ホワイトバージョンが新設された。

 当初グレードは最上級からタイプllリミテッド、タイプll-S、タイプll、タイプ1の4種類を設定。タイプll-Sは鍛造ホイールと専用サスペンション、フロントスポイラーなどを装備したスポーツモデル。ボンネットマスコットがシーマのロゴが入ったバッジに変更されているのも特徴である。後期からはナビゲーション機能などを内蔵したマルチAVシステムを装備するタイプllリミテッドAVなど、3グレードが追加された。

 上級グレードに標準装備されたワイパー付きドアミラー、センターパッドが回転しない光通信ステアリングなど、他のクルマにはない先進的な機能・装備も充実しており、それも現在まで続くシーマ人気を後押ししている。

好条件が揃っていれば300万円近い値が付く個体も!

 30年近く前のモデルであるY31系シーマだから中古車もあまり出回っていないかと思いきや、当時大ヒットしたクルマだけあって意外とタマ数は多い。中古車市場の平均相場は、70万円~300万円と幅が非常に広い(筆者調べ)。

 中古車のセオリー通り、走行距離が少なめで内・外装の状態が良い、記録簿が残っていて整備履歴がしっかりしている個体ほど高値になってくる。さらにグレードがターボエンジン&エアサスを装備したタイプll系、ボディカラーが人気色(パールホワイトやブラック)、希少なオプション(前述のホワイトバージョン、リップスポイラーやマッドガードなどの純正エアロパーツ)が付いていれば値段がますます上がる。

 走行距離が少ないことは大きな魅力。その一方で多少走行距離が多くても、定期的に整備・点検を行っていた個体なら安心感が高いという専門家の意見もある。また程度の良さをウリとしていても外装はヤレている……という個体もあるため、やはり中古車サイトの写真だけで判断するのではなく、できればお店に出向いて現車を隅々までチェックしたいところ。

 まず外装で見るべきポイントはドア。シーマはなぜかドアにポツポツと浮きサビが出ている個体が多く、特にフロントのドアに出やすい傾向にある。意外と目立つので、できれば板金処理でキレイに仕上げたい。また保管状況が悪いと、メッキパーツの劣化が進んでいることもある。すでにもう新品で買えない部品もあるため、外装をレストアするとしたら中古品に頼るケースも出てくるだろう。

 機関においては30年前のクルマなので仕方ないが、ヤレている箇所が多いので注意が必要。エンジンはVG系に多いヘッド付近から、「カタカタ……」というタペット音が出ていないか。またヘッドカバーやオイルパン、エンジンとミッションの繋ぎ目などからオイル漏れ・滲みがないかをチェックしたい。

 足まわりに関してはY31系シーマでは一番人気が高いのがエアサスだが、年式を考えるとエアバッグが劣化している個体が多い。エアサスを新品に交換した履歴がある個体もごく稀に出回っているが、そうでない場合はいずれエアが漏れて車体が傾くなどのトラブルが出るかもしれない。もし不安ならタイプll-Sや後半に追加されたタイプLセレクションなど、バネサスのグレードを選ぶのもひとつの手である。

 内装で最も劣化しやすい部分は、エアコンの吹き出し口。熱の影響で溶けてグニャグニャになることが多い。これはまだ新品で購入できるが、内装色によってはすでに部品の製造を廃止している。そのため自車の内装に近い色合いの缶スプレー(染めQなど)で塗装して使っているオーナーもいる。

 またオプションの本革シートは、高い確率でヒビが入っている(特に運転席の座面)。しかしステータス性が高い装備だから、劣化していても十分魅力がある。もしヒビが気になるなら専門業者にリペアを依頼して、本来のコンディションに近付けたい。ステータス製の高さで言えば、マルチAVシステムも故障しやすい装備である。しかし「動かなくてもマルチが付いているだけで良い」という愛好家もおり、これを直すか直さないかはオーナー次第だろう。

 他の80年代のクルマと同様に、壊れたら直す覚悟じゃないと維持できないY31系シーマ。しかし日産の技術を結集して作られた、昭和後期を代表する高級セダン。乗ったらハマることは間違いない。

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