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プラレール号の記録簿 vol.1:人もクルマも猛暑日の運転は酷なのよ

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プラレール号の記録簿 vol.1:人もクルマも猛暑日の運転は酷なのよ

運営元:外車王SOKEN
著者 :松村 透

日本における自動車文化と新税導入は共存できるのか

私の愛車は1970年式ポルシェ911S、生産されて今年で54年、いわゆる「ナローポルシェ」に属するモデルです。このモデルを手に入れて12年、本格的に走り出してから5年ほど経ちました。手に入れたときから「ナナサンカレラ仕様」、いわゆる「RSルック」です。



主治医が命名した通称「プラレール号」なんて呼ばれています。多くの子どもたちが大好きなおもちゃ「プラレール」の線路の色にそっくりだから、だそうです。実際に見比べてみると…。まったくの同一色ではありませんが、同型色であることは確かです。



■本当のボディカラー名は「pastelblue」

本当のボディカラー名は「pastelblue(パステルブルー)」。1970年当時にも設定されていたポルシェの純正色です。



ただ、現行モデルのカスタムオーダーであるPTS(ペイント・トゥ・サンプル)には含まれていません(ブルー系のPTSだけで30色も用意されているのにも関わらず)。もし、現行モデルでこのボディカラーを希望する場合には本当の特注扱い「PTS Plus(ペイント・トゥ・サンプル・ブラス)」になってしまいます。



2024年7月現在、タイプ992をベースにPTSをオーダーすると1,627,000円、これがPTS Plusになると¥4,101,000円にハネあがります。「ボディカラーだけでクルマが買えるじゃん」と思われても無理はありません。が、しかし!そのその一方でこれを何とも思わないお金持ちがいることもまた事実なわけで…。



■電動」「電子」とは無縁なプラレール号

そんなプラレール号、50年以上前に造られた古いクルマだけに、快適装備のような類いは一切装備されていません。当時はクーラーやパワーウィンドウなどの設定はありましたが、私のところに嫁いでくる前の段階で装備されていなかったのです。そのため、パワーウインドウを含めた「電動」「電子」に関連する装備といえばETCくらい?まさしく「機械」です。アナログです。ちなみに、プラレール号にはラジオすらありません。



そのため、運転中は「走る・曲がる・止まる」動作を本当にただひたすら繰り返すだけ。クルマに興味がない人はもちろんのこと、どちらかというと新しいモデルを好む人にとっても「まったく理解不能」なんだそうです。まぁたしかに、速くて、快適で、運転が楽ちんなクルマが山ほど市場に出回っているのにも関わらず、わざわざ不便極まりない古いクルマで基本的に「ただ運転してどこにも寄らず帰ってくるだけ」なんですから。「そんなことして何が楽しいの?」と思われても不思議ではありません。でも、理屈抜きに楽しいし、飽きないんですよ。なぜか。



そういえば、10代から20代前半に掛けてアルバイトしていた地元の酒屋さんが配達用に用意していた「ダイハツ ハイゼット」もまったく同じ「パワステ・パワーウインドウ・エアコン・オーディオレス」仕様でした。日々、オーナーインタビューで取材を続けていると原体験の重要さを痛感していますが、自分にとっての原体験はスパルタンな仕立てのハイゼットだったのかもしれません。



■2週間に1度のルーティンワーク

クルマである以上、乗っても乗らなくても劣化します。自分の場合「クルマは走らせてナンボ」という考え方なので、空き時間を見つけては定期的に乗るようにしています。本当は週に1度が理想的ですが、なかなかそうもいかず。日々の生活を優先していると、趣味車に乗るのは後回しになりがちです。気がつくとあっという間に1ヶ月くらいほったらかしにしてしまいそうで、年間カレンダーにいつ乗ったのかが分かるように目印を付けて「次は○○日あたりに乗ろう」と決める際の目安にしています。そんな努力の甲斐(?)もあって、だいたい2週間に1度のペースで、高速道路をメインに1時間ほど、距離にしておよそ50km走らせる習慣が身につきました。



この「2週間に1度のルーティンワーク」、順を追って説明すると(クルマに乗る前段階は長くなるので割愛します)、チョークレバーを引いてエンジン始動。外気温やそのときのエンジンの状態(機嫌?)にあわせて、だいたい1500回転前後で落ち着くようにレバーを微調整していきます。ほど音で判断しているので、タコメーターはあくまでも目安です。



その後、自宅駐車場で暖機運転は行わず、するするとスタート。油温計を見ながらゆっくり走り、少しずつ油温が上がっていくのを確認しつつ、チョークレバーを元の位置に戻していきます。油温計の針が冬場であれば80度、夏場は90度を指し、安定してきたタイミングを見計らって高速道路に乗るルートを選んでいます。



高速道路では流れに乗りつつ、道が空いたときにシフトダウンして加速…といった乗り方です。プラレール号に積まれているエンジンには、いわゆる「メカポン」といわれる機械式の燃料噴射装置が使われています。このメカポン、アクセルペダルの踏み込み量に対してとてもダイレクトで、電子制御とはまた違った「直結感」が味わえます。このフィーリングに味をしめてしまうと「最新のポルシェは最良のポルシェ」だけではない世界があることに気づかされます。



■エアコンがついてない?あんなのは飾りです(やせ我慢)

そんなプラレール号において、四季のなかでもっとも辛いのがこの時季、「夏」です。エンジンの冷却方法は「空冷式」、最近はハンディ扇風機を持つ人も増えてきていますが、猛暑日のなかで使っても「ただ単に温風が当たるだけ」になってしまいます。空冷エンジンを搭載するプラレール号にとってまさにこの状態。渋滞に捕まった日には、ただえさえ上昇気味の油温がさらに上昇カーブを描いていきます(本当は冬場で80度、夏場で90度くらいに抑えたいところ)。



こうなると、人もクルマもバテバテです。一応、ハンディ扇風機を持ち込んでいますが、この時季はまったく役に立ちません。「ハンディ扇風機の温風を当てられて自分が辛いように、プラレール号もしんどいんだ…」そう思って2週間に1度のルーティンワークをこなしてきましたが、この猛暑ではさすがにそれも辛くなってきました。



■冷夏はもう来ない?

もはや35度越えの猛暑日でもさほど驚かなくなってきた日本の夏ではありますが、その反面「冷夏」という言葉をあまり目にする、あるいは耳にする機会が減った気がします。北日本中心に見ると冷夏としてカウントされているのが2009年、関東以西を基準にすると2014年が最後のようです。つまり、10年以上も前なんです。



重課税、ガソリン価格や部品代の上昇、そして外気温。だったらエコカーに乗り換えろという声が聞こえてきそうですが、それができればとうの昔に乗り替えているわけで・・・。



降雪地帯にお住まいの方たちが秋から春先に掛けて、路上から塩カルが消えるまで愛車を冬眠させているように、エアコンレスのプラレール号も、この猛暑が続くようなら「夏民」を考えなければならないかも。



[ライター・カメラ/松村 透]



 



 



 

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