■女性ドライバーも使いやすい集配車に改装
ヤマト運輸は今年の秋までに、ドイツ・ストリートスクーター社製小型商用EVの500台導入を発表しました。宅配便大手が集配車として使うのはもちろん、日本での登録自体が初となるドイツ製小型商用EVはどのような車なのでしょうか?
昨年6月、筆者(加藤久美子)が横浜陸事(神奈川運輸支局)にユーザー車検で訪れた際、駐車場で見慣れないヤマトの集配車を見かけました。色々と調べた結果、その車はドイツに本社を持つ世界最大級の国際物流会社DHL社の子会社が生産するStreetScooter(ストリートスクーター)社「Work L」という純EVであることがわかりました。
ちなみに、DHLは1969年にアメリカ・カリフォルニアで生まれた国際物流会社ですが、1998年からはドイツポストの傘下となり現在はドイツの企業になっています。ストリートスクーター社はDHLの傘下にある企業で、大型EVトラックなども含め2017年は約7000台を生産しDHL 向け車両として納めています。やがては、DHLの全車両がストリートスクーター社のEVに入れ替わる予定です。
あれから9か月。ヤマトカラーの小型EVが、このたびヤマト運輸から正式なリリースがあり日本国内で使用するヤマトの集配車として正式に導入されることが発表されました。2019年秋までにまずは首都圏で500台が集配車として導入される予定です。
ヤマトがこのたび共同開発及び正式導入を発表した独ストリートスクーター社の小型EVは、昨年筆者が横浜陸事でみかけた「ワークL」をベースとしているようです。もちろん普通免許で運転できるサイズで本国仕様のカタログデータでは全長4709×全幅2087×全高2039mm。全長はほぼ小型車サイズですが荷台部分の全幅は2mを超えておりたっぷりの荷物が積めそうです。全高は2.1m以下に収まっているため、ビルやマンションの地下駐車場にも余裕で入れるでしょう。道路幅の狭い市街地や住宅地で小回りが利く小さめのボディです。
また、貨物室の左右、後ろにもかなり広めの開口部があるので、荷物の配置位置によって複数の開口部からアクセスが可能です。今後、この小型EVは宅急便の集配車として使いやすくするため、細部の改良や荷台の架装等が今後行われる予定です。
とくに、近年増えつつある女性ドライバーが使いやすいよう、荷台の位置を低めにしたり、荷物の出し入れがしやすいよう改良したりが行われるとのこと。
ちなみに、現在ヤマト運輸で集配を担当する女性の数は全国で約30%となり、緩やかに増加中なのだそうです。使いやすい集配車が増えれば女性スタッフの体力的負担も軽減され、働きやすさアップが望めそうですね。人手不足が深刻な宅配業界において、女性ドライバーの増加に期待がもてそうです。
■街中をこまごまと走り回る集配車だからこそ、小型EVの特性が活かせる
EVとしての恩恵はとくに燃費の点で大きなコストダウンとなるでしょう。もちろん、EVを使うためには充電設備の設置が必須なわけですが、ヤマトではまず首都圏のヤマト運輸営業所100か所に充電設備を整えるとのこと。設備を含めると費用は約40億円にもなりますが、ガソリン・軽油の燃料費が不要となるため問題ないようです。
燃費はもちろんですが、集配車としてEVを使う上でのありがたい特徴は静粛性です。宅急便の配達は夜9時頃まで行われるため、EVであれば静かな住宅地であってもガソリン車のような騒音が気になることも少なそうです。ストップ&ゴーが多い集配車をEVにすることは様々な面で恩恵が多くなりそうですね。
ヤマト運輸ではこれまでも2011年5月に「MINICAB-MiEV」100台の発注を発表し、東京や仙台、屋久島などの営業所に導入してきました。そして、同社が2012年に公開した「ヤマト運輸のEVに関する取り組み」の中で、「EVについて課題に感じること」として、以下のことを指摘しています。
・当社でメインの小型トラックにはEVが無い・クール宅急便を輸送するための機能がないため、現状は非効率・軽自動車での3温度輸送は既存車両でも困難・一般的には課題といわれる航続距離については問題ない・宅配では日別の走行距離変動が少なく、日当たり走行距離も短い・冬場のヒーター使用時のパフォーマンス低下は不安・価格は、エンジン車の置き換えと考えると高い
首都圏からまずは500台導入されるストリートスクーター社の小型商用EVは冷蔵・冷凍にも対応し、これらの課題をほぼすべてクリアしているという事なのでしょう。充電6-7時間で航続距離は100kmとのことですが、宅配で回るルートは決まっているので問題ないそうです。今秋以降、東京を中心に街でこのEV集配車を見かける機会が増えそうです。
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男性にはいかに負担が大きくてもコスト掛けて来なかったからドライバー不足なんじゃないのか?かつてクイックデリバリーなど開発したのに、なぜ今ありもののボデー使う制約のある車体で負担を強いるのか?