偉大なる祖の名を冠す限定車
執筆:Kouichi Kobuna(小鮒康一)
【画像】現代に生きる伝統【ラングラーとディフェンダーを比較】 全229枚
編集:Taro Ueno(上野太朗)
現在、世界的に大流行が続いているクロスオーバーSUV。
そんなブームもこのクルマが誕生しなければ存在しなかったかもしれない。
それほどまでに偉大なモデルとして知られるのがSUVの草分け的存在である「ウィリスオーバーランドCJ-3A」である。
このモデルは現在のジープブランドの祖であるアメリカのウィリスオーバーランド社が開発し、1948年に発表されたもので、当時軍用車や農耕用車両として使用されていたオフロード車両を民生用に改良を加えた車両だ。
このCJ-3Aは先代型のCJ-2Aに比べて走行性能の向上はもちろんのこと、快適性も大きく向上し、高いオフロード性能を持ち合わせていながら実用面でも進化を果たしたことで、後継モデルのCJ-3Bが登場する1952年までの間に13万台以上の台数が生産され、CJシリーズの礎を固めたのである。
ちなみにCJとは「Civilian Jeep」の頭文字を取ったもので、直訳すると「民生用のジープ」ということになる。
なお、このCJ-3Aは1953年から三菱が日本でノックダウン生産をおこなっており、日本のユーザーからしても馴染み深いモデルということがいえるだろう(ただしCJ-3Aは林野庁などの機関におさめられ、一般販売されたものはCJ-3Bがベースとなっていた)。
そんな偉大なる祖、ウィリスオーバーランドCJ-3Aの名前を冠された限定車が2021年9月4日から、ラングラー・アンリミテッドに設定され、限定300台で販売されたのである。
CJジープの跡継ぐラングラー
今回、ウィリスの名前を冠する限定車がリリースされることとなったラングラーは、1987年に初代モデルが登場。
CJジープから派生したモデルとしてジープワゴニアやその兄弟車となるチェロキーなど、現在でもおなじみの車種も存在していたが、ラングラーはCJジープ直系の後継車種としてリリースされていた。
最終型のCJジープからほとんど大型化されていないボディサイズや、堅牢な前後リーフ式のリジットサスペンションなど、本格的なオフローダーとしての実力はキープ。
遠目から見ても一目でジープであることが分かる7スロットグリルといったアイコンは踏襲しながらも、角目ヘッドライトや乗用車に近づいた内装など大幅にモダナイズがなされている点が特徴だ。
1996年にはラングラーは2代目へと進化。
再び丸型ヘッドライトへと戻された点や、サスペンションが5コイル式のリジットにあらためられてオンロード性能が大きく向上した。
また、右ハンドル仕様も設定され、日本やイギリスといった右ハンドル圏に輸出されていたが、アメリカ本国でも郵便配達車としてラングラーが採用されており、これらの車両はポストへのアクセスを考慮して右ハンドルとなっていたのだった。
2007年春には3代目ラングラーが登場。
この代では従来の2ドアに加えてラングラーとしては初の4ドアモデルの「アンリミテッド」が登場。
アンリミテッドの登場によってユーザーの裾野を広げることに成功し、一時は販売されるラングラーの4分の3がアンリミテッドといわれるほどの大人気モデルとなった。
そして2018年10月には現行モデルが日本にも導入。
現在に至るまで人気を博しているが、今回限定販売される「ラングラー・アンリミテッド・ウィリス」はどんなモデルに仕上がっているのだろうか?
磨かれた精悍かつ強靭な1台
2021年9月4日から300台限定で販売された「ラングラー・アンリミテッド・ウィリス」は、284ps/35.4kg-mを発生する3.6L V6エンジンを搭載したアンリミテッド・スポーツがベースとなっている。
ただし、卓越した走行性能で人気を博したCJ-3Aの精神を受け継ぐため、悪路で車体下部を保護するロックレールや、滑りやすい路面でタイヤの空転を抑えることで推進力を高めるアンチスピンリアディファレンシャル、ラングラーきってのハードコアモデルである「ルビコン」と共通のDana社製M220リアアクスルを搭載。
オフロード性能が強化されている点が、ただの名前だけの限定車ではないことを物語る。
エクステリアにはブラック仕上げの専用フロントグリルやグロスブラックに塗装された17インチアルミホイール、「WILLYS」ボンネットデカール、「4 WHEEL DRIVE」リアゲートデカールが装備されるほか、ジープ・バッジとトレイルレイテッド・バッジはマットブラック仕上げとなっており、モノトーンテイストになったラングラーは新たな魅力を放っている。
さらにボディカラーには通常、ルビコンでしか選択することができないスティンググレーC/Cと、ミリタリー感を演出する限定車専用色のサージグリーンC/Cの2色を設定。
前者は限定200台、後者のサージグリーンC/Cに至ってはわずか100台限定となっている。
価格もベースのアンリミテッド・スポーツのわずか10万円高の568万円(税込)であるから、早期完売は必至。
興味を持った人はすぐさま最寄りのジープ販売店に駆け込んだ方がいいだろう。
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