軽乗用車においても高速道路や上り坂でのパワー不足を補うターボかスーパーチャージャーという過給機付が当たり前になって久しく、今では軽1BOXバンでも過給機付は珍しくない存在だ。
しかし現行の軽トラックから過給機付はなくなっており、当記事ではスバル製としては最後となった6代目サンバートラックのスーパーチャージャーに乗っていた経験もある筆者が、その理由を考えてみた。
アクティが2021年6月に生産終了! 日本の軽トラック衰退のワケと電動化待ったなしで抱える不安
文/永田恵一、写真/SUBARU、MITSUBISHI、SUZUKI
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■以前は過給器付の軽トラックが意外にあった!
スズキキャリイにはかつてターボモデルが存在した。写真は1991年に登場のDC51のNAモデル
調べてみると、過給機付の軽トラックには以下のものがあった。
●スズキ
・8代目キャリイ(1987年にスーパーチャージャーを追加)
・9代目キャリイ(1991年の登場時からターボを設定)
・10代目キャリイ(99年1月の登場時にはターボが設定されていたが、翌2000年5月に廃止)
●ダイハツ
・7代目ハイゼットトラック(1987年にスーパーチャージャーを追加)
●三菱自動車
・4代目ミニキャブトラック(1987年にスーパーチャージャーを追加)
●スバル
・5代目サンバートラック(1990年の登場時からスーパーチャージャーを設定)
・6代目サンバートラック(1999年の登場時からスーパーチャージャーを設定)
と想像より多い。
ちなみに筆者が乗っていた6代目サンバートラックスーパーチャージャーの印象を書くと、「街乗りでは強い必要性を感じないけど、高速道路などを走る際の余裕としてスーパーチャージャーは有難かった」といったところだ。
■軽トラックの過給機付はなぜなくなったのか?
RRで独特な走りもよかったサンバー。赤帽仕様も話題になった
その理由として思い浮かぶことを挙げていくと
●価格の上昇?
過去にあった軽トラックのNAと過給機付の価格差は10代目キャリイ/消費税抜き6万円、6代目サンバートラックの終盤/消費税込11万250円だった。また現行の軽1BOXバンからスズキエブリイでNAと過給機付の差額を見ても10万2300円と、絶対的には動力性能の向上を考えると安いとも感じる。
しかし、軽トラックは総額100万円以下ということが多く、「総額100万円以下の軽トラックにプラス10万円」となると、小さな差額ではないだけに必要性が高いユーザー以外はなかなか選ばないというのも分かる。
●燃費の悪化?
筆者が乗っていたサンバートラックは高速道路を速めのペースで走ると、燃費はリッター10kmを切りそうと確かに悪かった。しかし、エブリイのNAと過給機付の燃費(カタログに載るJC08モード燃費)を2WDの4速AT同士で見るとNA/17.0、過給機付/16.2と意外に変わらない。
また筆者はキャンパー化により100kgは車重が重くなった過給機付エブリイの4WD+4速ATで本州から高速道路を使わずに北海道1周したことがあるが、そのときの燃費は12km台と悪くなく、現代の軽トラックであれば過給機を付けたとしても燃費の悪化は許容できる範囲と思われる。
●エンジンオイルの交換頻度?
軽1BOXバンのダイハツハイゼットカーゴの説明書を見ると、エンジンオイル交換のサイクルは通常の使用でNA/半年か走行1万kmの早い方、過給機付/半年か走行5000kmの早い方だ。
この点は「過給機付の軽トラックのユーザーは高速道路を走ることも多いとも想像できるから、走行距離の延びる人が多い可能性がある」と考えると、もしかすると小さくない問題なのかもしれない。
サンバーのスーパーチャージャー付エンジン。軽トラ界随一の名機だ
総合すると「軽トラックは近距離で使われることがほとんどなだけに過給機付を必要とするユーザーも限られるから結局はあまり売れず、なくなってしまった」ということなのだろう。
しかし過給機付の軽トラックはマニアックな人気があり、近年では過給機付の軽トラックの大部分となるスーパーチャージャーの付く最終型スバル製サンバートラックの中古車の中心価格帯は希少性もあり70万円からと、新車価格などを考えると驚くほど高いのも事実だ。
■まとめ
三菱の4代目ミニキャブにもターボが設定された
現行の軽トラックから過給機付がなくなってしまったことは、理由を考えると納得はできる。
だが、ハイゼットジャンボとスーパーキャリイが該当する最近着実に売れているシート後方のキャビン付軽トラックは車内にまずまずの荷物が載ることなど、長距離ドライブにも対応できる面もあるだけに過給機付があってもいいように思う。
ただキャビン付軽トラックは生産台数が多くないのもあり現時点での価格が軽トラックとしては高いため、そこに過給機付を加えると価格が軽1BOXバンに近くなり結局売れないということにもなりそうなので、その際にもやはり価格がキーとなりそうだ。
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結局壊してしまうケースが乗用車より多い。