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幻のフェアレディZプロト登場 なぜ? だれが?? 運命に翻弄された名車の軌跡

掲載 更新 31
幻のフェアレディZプロト登場 なぜ? だれが?? 運命に翻弄された名車の軌跡

 日産を代表するスポーツカー「フェアレディZ」の次期モデルのプロトタイプが2020年9月16日、世界初公開された。新型Zは2021年後半に正式発表される見込みで期待が高まるが、そのいっぽうで同じ場所(日産横浜本社ギャラリー)にてひっそりと公開された、「もう一台のフェアレディZプロト」の存在は、あまり知られていない。

 それは長年の眠りから覚めた試作車であり、90年代半ばに、日産社内で、次期型Zの姿を模索して作れたものだという。幻となったフェアレディZプロトの姿をお伝えしよう。
文、写真:大音安弘

新型フェアレディZは日産復活の狼煙になるのか?

【画像ギャラリー】23年間日産社内で眠り続けてきたZプロトの艶姿とZの系譜

■運命に翻弄され続けている日産の象徴

 2020年9月16日、日産自動車は、次期型の方向性を示す「フェアレディZプロトタイプ」を世界初公開した。同年5月に公開された「Nissan A-Z」の動画内で、その姿が予告されていただけに、世界中のZファン、いやクルマ好きたちから注目を集めたことは記憶に新しい。

2020年9月に世界初公開された、新型フェアレディZのコンセプトカー。2021年末には新型フェアレディZとしてこのデザインコンセプトを引き継いで登場する

 そのいっぽうで、現行型となるフェアレディZ(Z34)は、2008年にフルモデルチェンジを実施。その後、改良を重ねながら、現在も販売が継続されている。すでに登場から12年の月日が流れ、Zの将来を危ぶむ声もあったが、今回のプロトタイプの公開に歓喜した日産ファンは決して少なくないはずだ。

 そんなZ34と姿が重なるのが、同じく長寿命車となったZ32だ。

 バブル真っただ中の1989年にデビュー。その流麗なスタイルは、まさにフェアレディに相応しいもので、日産初の280psモデルとしても大きな話題に。同年に復活したスカイラインGT-Rと共に、日産黄金期を象徴する存在となった。

1989年に登場したZ32型フェアレディZ。名車の誉れ高い

 しかし、バブル崩壊とRVブームの流れを受け、スポーツカーの国内販売は年々減少。主力である米国市場でのスポーツカーに対する自動車保険料の高騰も痛手となった。

 こうした逆風のなか、Z32は2000年9月に11年間にも及ぶ販売を終了。Zの31年にも及ぶ歴史にいったん幕がおろされた。

 しかし、意外な人物が、その未来を切り開くことになる。1999年に2兆円ともいわれる負債を抱えた日産の救世主として、ルノーより着任したカルロス・ゴーンだ。ゴーンCOO(当時)は、再建計画「日産リバイバルプラン」の中で、新生日産の象徴として、Zの再投入を決定し、2002年に「復活のZ」、Z33が登場することになった。

 …と、日本自動車史の「正史」は伝えている。

 もちろん当時、ゴーンCOOがフェアレディZ復活の最終決定を下した事実に違いはない。

 しかし、たった2年間で全面刷新の新型車投入が不可能なのもまた事実である。Z33の開発は、それ以前から日産社内で密かに進行していたのである。今回紹介する「ミドルスポーツ」と呼ばれる試作車こそ、その揺るぎない証拠であり、少なくともゴーン着任前から脈々と開発が続けられていた、フェアレディZ33の先行検討車なのだ。

【画像ギャラリー】23年間日産社内で眠り続けてきたZプロトの艶姿とZの系譜

■S14シルビアをベースにして直4エンジン搭載

 今回紹介するのは、Z32からZ33に生まれ変わる途中に製作された、プロトタイプの実験車(先行検討車)。今回の新型フェアレディZプロトタイプの公開に合わせて、日産本社ギャラリーに展示されている。

日産自動車横浜本社ギャラリーに展示されている、プロトタイプの先行検討車。取材班も見たことがない試作車。20年以上、人知れず日産社内に保管され続けていた

 1990年代半ば、Z32型フェアレディZの後継となる新型Zの方向性を模索し、様々な検討が日産社内で進められていた。その過程では、いくつかの試作車が作られた。そのうちの1台が、1997年に製作されたコンパクトなこのプロトタイプZであった。先行検討車だけに、市販車をベースに製作が進められ、左ハンドル仕様の日産240SXが使用された。日本ではS14型シルビアに相当するモデルである。

 ボディサイズは、全長4310mm×全幅1770mm×全高1280mmと240SXと異なる専用仕様に。全長を縮めながらも全幅は拡大したスポーツカーらしいディメンジョンに変更されていた。

 搭載エンジンこそ、輸出仕様向けである2.4L直列4気筒DOHCのKA24DE型であったが、これにチューニングを加え、最高出力200ps、最大トルク256Nmまで性能を向上。これをフロントミッドシップに搭載。前後タイヤは、フロント205/55R16、リヤ225/55R16とし、リヤ側のみワイド化されていた。

 製作年月は「1997年」とある。

奥の金色のクルマは(Z33型フェアレディZの市販モデルではなく)2001年のデトロイトモーターショーで世界初公開された「ニッサンZコンセプト」。2台並んで日産本社ギャラリーに展示中

 展示車の横に設置された説明板には、「このクルマは結果的に陽の目をみませんでしたが、その後20年以上にわたり社内で保存され、2019(令和1)年に社内の試作部門によって往時の姿を取り戻しました。」とある。

 エクステリアデザインは、ドアこそ240SXのものを流用しているが、それ以外は専用デザインに変更。フロントマスクは、240ZG風でもあるが、フロントバンパーデザインやリヤテール、サイドのブラックピンストライプなど、Z32の影響も強く残す。車内は、240SX同様に4シーターだが、リヤサイドガラスを小型化し、Cピラーを太く見せるなど、2シーターを意識したデザインと思われる。またリヤガラスにも手を加え、テールゲートへと変更されている。

 一方、インテリアデザインは、240SXのまま。我々にもなじみ深いシルビアのそれだ。ステアリングやシートも、そのまま流用されている。マイル表記のホワイトメーターが備わるが、日本仕様でもホワイトメーターが採用されていたので、この点もそのまま。なんとラジカセまでしっかりと装備されている。

プロトタイプは左ハンドル。中身はそのまんまS14シルビアで、カセットデッキが懐かしい。スピードメーターは(北米仕様の)マイル表示だった

■10/12まで日産本社ギャラリーに展示、急げ!!

 エンジンの搭載位置変更やチューニングが施されていることからも想像できるが、この試作車は、実際に走行が可能で、それについて一つの短いエピソードが残されている。

「ミスターZ」の愛称で親しまれ、初代フェアレディZ誕生に深く携わった片山豊氏が、1997年のある休日、栃木テストコースにてこの先行検討車に試乗。「人車一体感とZのDNAを感じ、同車に好感を示した」という。

 その後、新型Z開発プロジェクトは一時中断されるも、着実に進んでいたことに進められていたこと、関係者への意見聴取までは進んでいたことが伺える。

 不思議なのは、この試作車が20年以上にも渡り、日産社内のどこかに保存されていたことだ。これまで展示車として活躍したこともなく、日の目を見ることはなかったモデルにも関わらず、だ。いったい誰が、なぜ、保存し続けていたのだろうか。

2002年7月に正式発表されたZ33型フェアレディZ。日産リバイバルプランと復活の象徴とされた

 これは想像に過ぎないが、この「ミドルスポーツ」は、Z33誕生によほど大きな影響を与えた試作車であったのではないのだろうか。Z33に使用されるFMプラットフォームは、フロントミッドシップを採用している。また1999年のデトロイトショーで公開された「240Zコンセプト」も、240SXがベースとなっている。このコンセプトカーは、米国デザイン部門の独自のスタディであったものの、開発者たちが理想とするZは、コンパクトかつ軽量なZの姿だったのだろう。

 そんなZに関わった様々な人々の気持ちを想像させる試作車「ミドルスポーツ」は、2020年10月12日まで、2001年デトロイトモーターショーで世界初公開された「ニッサンZコンセプト」とともに、神奈川県横浜市の日産グローバル本社の1F「日産グローバルギャラリー」にて展示中だ。

「Zコンセプト」は、その見た目からもZ33のコンセプトカーであることは一目瞭然だが、細部を見てみると、市販車との様々な違いを発見できるにも面白い。さらに現行型だけでなく、初代フェアレディZも「Z-L(1970年)」と「240ZG(1972年)」も展示されている。Zファンは、ぜひこの機会をお見逃しなく。

【画像ギャラリー】23年間日産社内で眠り続けてきたZプロトの艶姿とZの系譜

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みんなのコメント

31件
  • マルコム・セイヤー:そう思わない
  • もう、この頃から、日本車を作る自動車メーカーとして、開発試作の腐敗は始まっていたのか?
    アメリカでKA24積むなら、日本では2リッター5ナンバーのハズ。それに1.7メートル超の車幅を与えるコト自体が、開発試作の慢心が窺える。平気でこんなクルマを作り、ブレーキをかけるヒトもいなかった。
    自動車とは、各国規格に向けた商品ビジネスなのだ。それが、日本の規格を軽く踏み躙るようになった。その時点で、自動車メーカーの腐敗は進んでいた。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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