なかなか姿を見せてくれない、日本向けの新型エクストレイル。ご存じの通り、既に北米では2020年10月から新型ローグ(エクストレイルの北米名)のガソリンモデルが発売開始、中国市場向けの新型エクストレイルも、2021年4月の上海モーターショーで発表されているが、日本向けの新型エクストレイルに関しては、現時点(2021年9月末時点)でもノーアナウンスの状態だ。
少々待ちくたびれてきたが、もうそろそろ何かしらのアナウンスがあるはず。気分を盛り上げるため、日本向け新型エクストレイルに期待したい3つのことについて考えていこう。
文:吉川賢一
写真:NISSAN、TOYOTA
【画像ギャラリー】日産エクストレイルの歴代モデルと、中国で発表となった新型エクストレイル
予想に反する、なんらかの驚きが欲しい!!
日産は、2020年5月に発表した「事業構造改革計画/NISSAN NEXT」において、「日本市場は電気自動車を拡大(SUVと軽を追加)し、電動車(e-POWERもしくはハイブリッド)率を25%から60%にまで引き上げる」と宣言。
その宣言通り、直後に発売したキックス(2020年6月)、ノート(2020年12月)、そしてオーラ(2021年8月)では、いずれもコンパクトカーにもかかわらず、売れ筋となるはずの安価なガソリン仕様を用意せず、e-POWER一本として勝負に出た。その結果は、ひとまずは上々の滑り出しをしているといってよいだろう。
北米や中国では発表・発売されている新型エクストレイルのデザイン。大きく変わることはないはずだが、日本向けも同一の姿でよいのか、という気がする
「電動車ブランド」のイメージを国内へ植え付けるため、日産は、新型エクストレイルについても、国内においてはガソリンモデルを用意せず、ベースグレードはe-POWERでくるはずだ。
北米でも中国でも、「エクストレイルe-POWER」はまだ登場はしていないが、実は欧州では、新型キャッシュカイについてのリリースの中で、欧州向けの新型エクストレイルにe-POWERが搭載されることがひっそりと発表されている。2020年2月に欧州発表となった新型キャシュカイに搭載される「e-POWERターボ(1.5L VCターボを発電エンジンとした新e-POWER)」だ。
ここまで待たされているのに、デザインも、パワートレインもすでに大枠わかっている。ここでこの予想通りに登場してきたのでは「やっとか」という思いだけであり、ファン待望の売れ筋SUVの新型登場という注目が集まる中においては、予想に反する、なんらかの驚きが欲しいところだ。
そこで、筆者が「国内向け新型エクストレイルに望みたい3つのこと」をご紹介しよう。
日本専用のフロントフェイスを!!
新型エクストレイルに最も期待したいことが、フロントフェイスのつくり分けだ。これは決して不可能ではない。
北米向けのローグは、テネシー州にあるスマーナ工場生産だ。中国向け新型エクストレイルも現地生産。一方、日本向け新型エクストレイルは、九州工場での生産が発表されている。ちなみに、欧州市場やアジア圏、オーストラリア向けなども九州工場が担当することになっている。
プレス機や樹脂成型の金型を含め、クルマの製造ラインの構築には、莫大なコストがかかる。だがもちろん、遠く離れている場合は、バンパーなどのパーツに関しても、「地産地消」した方が効率も良い。つまり、バンパー部品の型を分けることは不可能ではない。
欧州向けも九州工場で生産することから、新型キャシュカイ顔にする、というのもいいだろう。2021年2月にモデルチェンジしたパスファインダー顔も、ローグよりもアグレッシブでカッコいい。いずれにしても、是非とも国内製造する仕様は、北米や中国と造形を分けた、新デザインで登場してほしい!!
2月に登場した、北米のパスファインダー。日産のVモーショングリルのデザインは、既に古くなりつつある。このパスファインダーの方が、厚みがあって、「今風」な気がする
最低でも現状維持の価格
エクストレイルが属する国産4WD SUVと言えば、RAV4、ハリアー、CR-V、フォレスター、CX-5などだ。車両価格は概ね300万円から450万円、といったところだが、現行のエクストレイルは、その中で最安だ。2.0L直4ガソリンの「20S Vセレクション(4WD)」が税込248万円、「20S HYBRID(4WD)」が税込297万円という「超」破格でラインアップしている。もちろん、自慢のインテリジェント4×4は標準搭載だ。
遮音ガラス無し、ハンドル上にはスイッチ一切無し、足踏みPKB(標準はE-PKB)になるなど、売れ筋グレードと比べると寂しい装備内容ではあるが、それでもミドルクラスSUVをこの価格で提供できるのは凄い。ちなみに鉄チンホイールではなく、17インチアルミホイールだ。
新型は、e-POWER化によって、最安グレードがこれよりも高くなることは免れないだろうが、現行エクストレイルにある、古いハイブリッド(WLTC燃費も17.0km/Lとそれほど良くない)よりは安くなる可能性は大だろう。最安グレードを268万円程度に抑え、売れ筋となる中間グレードを310万円~320万円程度に抑えてほしい。
2000年に登場した初代日産エクストレイルは、その武骨な外見と、圧巻の4WD性能で、一躍ヒット車となった
バリエーションの早期配備を!!
現行エクストレイルにはバリエーションが意外と多い。エクストレイルNISMO、エクストレイルオーテックをはじめとして、特別バージョンが複数用意されている。オーテックブランドといえば、セレナe-POWERオーテック、キックスオーテック、ノートオーテックなど、主力モデルのカスタマイズモデルを次々とラインアップさせている。NISMOも、先日、ノートオーラNISMOを発表した際には、かなり話題となり、NISMOブランドの底力を見せてくれた。
北米や中国では、新型エクストレイルに、この手のNISMOやオーテックバージョンは登場していない。ぜひ、日本デビューと同時にこれらをラインアップさせ、新型エクストレイルで話題をかっさらってほしい。
現行型エクストレイルオーテック。デザインのバランスが良く、センス上手くまとめられている
現行型エクストレイルのエクストリーマーX(341万円~)、専用フォグ付バンパー、フロントグリル、18インチブラックホイール、サイドガード、ルーフレールなど、諸々ついてこの価格は安い
トヨタSUV勢に一泡吹かせることができるのは、エクストレイルしかない!!
新型フェアレディZの登場は、日産ファンを大いに沸かせてくれた。だが、2シーターのクーペは、その使い勝手を考えると、限られた方にしか買うことは許されない。コンパクトカーは、キックス、ノート、そしてオーラと、(まだまだ欲しい所ではあるが)そこそこ整えられてきた。つぎはミドルクラスだ。
できることならば、SUV以外にも、セダン型e-POWERのバリエーションも増やしてほしいところではあるが、まずは大本命の新型エクストレイルで、トヨタのSUV勢に、一泡吹かせてほしい。
先日のカローラクロス登場で、さらにバリエーション豊富となったトヨタSUV勢。まねはできなくても、一泡吹かせるくらいのことはしてほしい
日本仕向けの新型エクストレイルについては、東京モーターショー開催予定であった10月後半には、その詳細を目にすることができるはずだ。既に新型エクストレイルは、日本登場に向けて最終調整に入っているであろうが、いま判明している事実のほかに、今回ご紹介したような、なにかしらの驚きをもって登場してくれることを期待している。
【画像ギャラリー】日産エクストレイルの歴代モデルと、中国で発表となった新型エクストレイル
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