名機なくして名車なし。一時代を築き今も高い人気を誇るクルマたちには、必ず名機と呼ばれるエンジンが搭載されていた。そんな両者の関係を紐解く短期集中連載。トヨタ2000GTに搭載された3M型が生産終了して約10年。久々にDOHCヘッドを搭載したM型が帰ってきた。それが初代ソアラに搭載されたビッグツインカム、5M-GEU型である。
初代ソアラ2800GTの登場でパワーウォーズ勃発
厳しい排出ガス規制やオイルショックによって国産高性能エンジンが軒並み牙を抜かれていた1970年代後半。そんな暗黒時代の終わりを告げたのが、1981年2月に登場した初代ソアラ2800GTである。
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それに搭載されたエンジン=5M-GEUのスペックを見て日本中のクルマ好きが腰を抜かした。2759ccの排気量から生み出される最高出力は、驚異の170ps/5600rpm、最大トルクは24.0kgm/rpmである。当時最強と言われていたのは2.8LのL28E型を搭載する日産フェアレディZ280Z(S130型)だったが、その最高出力は同じ排気量ながら145psであったから、いかにソアラそして5M-GEUの登場が衝撃的だったか想像に難くない。しかも5M-GEUは、日本初の2LオーバーのDOHCでもあった。誇らしげな3ナンバーと2.8GTのエンブレムに皆ため息をついたものだ。
新機構を採用してDOHCの常識を一変
5M-GEUは、あのトヨタ2000GTに搭載された3M型のベースとなったM型の血を受け継いだエンジンだ。ベースになったのは1979年に登場したクラウンやマークIIに搭載されていた2.8Lの5M-EU(SOHC)。そのブロックに多球形燃焼室をもつアルミ製DOHCヘッドを組み合わせている。
新しい技術も積極的に採用されていた。当時、DOHCエンジンは調整が難しいと言われていたが、5M-GEUは世界で初めてラッシュアジャスターをDOHCに採用したのだ。吸排気弁のすき間をスプリングと油圧で自動的にゼロに調整するため、カムとバルブがぶつかるときの騒音が軽減されると同時に、面倒な調整も不要になった。また、カムシャフトの駆動もチェーンではなくタイミングベルトで行うため、こちらも静粛性向上に大きく貢献した。もはやDOHCは手間のかかるスポーツエンジンではなく、高級車に載せても違和感のない高性能・高効率エンジンへと変貌を遂げたのだ。
この新世代DOHCを搭載したソアラ2800GTは、モーターマガジン誌のテストで実測198.07km/hの最高速と0→400m加速16.0秒を記録。他車を大きく引き離し、圧倒的な最速国産車となった。
日常使用でも不満の出ない高性能エンジン
DOHCと言えばそれまで高回転までぶん回してパワーを絞り出すものというのが相場だったが、5M-GEUに関しては必ずしもそれはあてはまらない。MAXの170psを5600rpmで発生することからも明らかなように、DOHCとしては明らかに「中低速重視型」である。実際走らせると、5000rpmを超えたあたりからパワーカーブは緩やかに下り坂となり、6000rpmでは明らかな頭打ちを感じたものだ。もっとも高級車や上級スポーツをターゲットに開発されただけに、ATミッションとの相性は抜群に良く、日常域での使用でDOHCの気難しさを感じさせられることはない。
5M-GEUはソアラに遅れることおよそ半年、2代目セリカXX(1981年7月)、6代目クラウン(同年8月)にも搭載され、高級で高性能な新世代エンジンの代名詞として憧れの存在となっていく。翌1982年3月には圧縮比アップなどの改良を受け、175ps/5600rpm、24.5kgm/4400rpmにパワーアップ。そして1984年8月には、ストロークを91mmに延長して2954ccとした6M-GEUにバージョンアップ。最高出力は190ps/5600rpm、最大トルク26.5kgmとなり、ソアラとともに7代目クラウンにも搭載された。
<初代ソアラ2800GT主要諸元>
●全長×全幅×全高:4655×1695×1360mm
●ホイールベース:2660mm
●重量:1300kg
●エンジン型式・種類:5M-GEU型・直6DOHC
●排気量:2759cc
●最高出力:170ps/5600rpm
●最大トルク:24.0kgm/4400rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:195/70R14
●価格:285万5000円
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みんなのコメント
ペントルーフ型燃焼室にしてマルチバルブ化するのが最大の目的ではないか?
トヨタはDOHCというカタログスペックが欲しかっただけ。
4バルブDOHCに拘ったニッサン、不器用だけどこういう所が好きだった(過去形)。