2022年11月2日、自動車評論家、国沢光宏がトヨタ GRカローラ プロトタイプに試乗。その様子をレポート。
「弟分」GRヤリスよりも200kg近く重いGRカローラ。だがそのぶんオンロードもオフロードも、まさに「モンスターGT」の走りを見せつけてくれた…!!!
「2人乗りカローラ」って!!! モリゾウさん超絶コダワリ……GRカローラにトヨタの「野性味」を見た!!!
●トヨタ GRカローラのPOINT
・片側30mm拡幅されたリアフェンダー、厚みを増したボンネットフードによるアグレッシブな外観
・高速旋回性能向上のため、前後ともトレッドを拡大
・搭載エンジンは1.6L直3、DOHCターボ。GRヤリスに積まれるものと基本的に同じだが、専用チューニングが施され、GRヤリス+32psの304psを発生
・軽量化のため2シーター化され、さらに最大トルクが3.1kgm増強されるモリゾウエディションも設定
※本稿は2022年11月のものです
文/国沢光宏、写真/TOYOTA、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2022年12月10日号
■袖ケ浦サーキット、ダートコースでGRカローラに乗った…!!!
米国・ラスベガスのSEMAショーに出展された「GR COROLLA RALLY CONCEPT」
ラスベガスのSEMAショー(改造自動車をテーマとする世界最大級のイベント)で、クルマ好きなら奥歯をガタガタ揺すられるような『GRカローラ・ラリーコンセプト』なるカスタマイズカーが登場した。
写真を見ていただければわかるとおり、雰囲気はWRCのTOPカテゴリーとなる「GRヤリスラリー1」です。
アメリカじゃGRヤリスを販売していないため、GRカローラをベースにしたんだと思う。カッコ良過ぎでしょう!
同じ日、袖ケ浦サーキットと、隣接するダートコースで、GRカローラのプロトタイプ試乗会が行われた。もちろん初披露。前置きは後回しにして、まず乗った感じなど。
仕立ては「中級ラリー車」。ロールケージが組まれ、30万円少々の足回り(LUCK製)や油圧サイドブレーキなど付いていた。
ノリさん(全日本ラリーで活躍中の勝田範彦選手)のナビシートで一発気合いを入れられた後「全開で楽しんでください!」。
GRの試乗会、何の制約もなく、加えて満足するくらい走らせてくれる。ということで最初から全開! するとどうよ! GRヤリスとずいぶん違う。
グラベルをモリゾウエディションの試験車両で走ったが、痛快無比だった!
そもそも比較試乗車として用意されていたGRヤリスは、私も全日本ラリーで使った純正オプションのKYB製グラベル用ダンパーで、GRカローラは3ランクくらいスペック高いLUCK製。ダンパーだけで違う。さらに油圧サイドブレーキ付きのため振り回しやすい。
よって基本スペックはGRカローラのほうが上。ただそいつを踏まえて評価しても「ずいぶん違いますね!」。
クルマ全体の挙動が穏やかなのだった。しっかり荷重移動させてやると、思ったとおりの動き方をする。
「意のままにコントロールできる」と言えばわかっていただけるかと。真横向けて走りながら「WRX STIやランエボみたいですね!」と思った。降りてWRX使いだったノリさんに聞くと「そうなんですよ~」。
約200kg重いボディや長いホイールベースが安定性を生み出しているんだと思う。狙ったラインをしっかりトレースできるし、試乗したモリゾウエディションはクロスレシオになっているため、1速を使うフルターンも、2速を使うコーナーもちょうどいい感じ! 楽しいったらありません!
速さという点からすると明らかにGRヤリス優位だし、競技に出るなら瞬時も迷わないが、初級ラリーを楽しむならGRカローラがいいな、と思う。
■サーキットでわかった3車の特性の違い
エンジンは304psとヤリスの272psに比べて約12%アップ。トルクもRZはヤリスと同じ37.7kgmだが、モリゾウエディションは40.8kgmとなり、約8%アップする
続いて袖ケ浦サーキット。ここではGRカローラとGRカローラのモリゾウエディション、GRヤリスの乗り比べというプログラムだった。GRカローラで走り出すと「楽しい~っ!」。
マニュアルミッションの高性能車ってクルマ好きの脳天を直撃する!
しかも突拍子もない大パワーだとフルに性能を使い切れずフラストレーションが溜まるが、1470kgのボディに300psくらいだとちょうど使い切れる感じ。
試乗会だということをすっかり忘れてしまい、ホンキで走る! 前述のとおりGRヤリスより約200kg重いため絶対的な動力性能は届かないが、グラベルと同じくコントロールは容易!
ピリピリすることなく振り回せるのだった。
荷重をちょうどよい感じで前輪に掛けながらブレーキングしてハンドルを切ると、素敵な感じでテールを流しつつターンイン。アクセルを開けると、4輪スライドしながら「ひゃっほ~」と立ち上がる!
ショートストロークの6MTを採用。パーキングブレーキは、スイッチ式から手で引くタイプに変更された。もちろんサイドターンなどを意識してのことだ
続いてモリゾウエディション。
ボディ後半を中心に車体剛性をさらに高めているためか、リアの安定性が格段に上がっている。そんなことからコーナーでは前輪が負け気味(アンダー傾向になる)。
セットアップしたスーパーGTドライバーの石浦宏明選手によれば「富士スピードウェイに合わせたので速度の低いサーキットだとアンダー傾向ですね。
でもウイングを付けるとバランスがよくなります。あっウイングですか? もうしばらくお待ちを」。
カローラスポーツに比べると大きく張り出したブリスターフェンダーはダテではなく、RZでもトレッドの拡大による安定感あふれる走りを獲得(写真はRZ)
ウイングに代表される空力パーツ、冒頭で紹介したSEMAショーのGRカローラ・ラリーコンセプトほどの大きさでなくても効果抜群らしい。そういった楽しみ方も面白いと思う。
最後に乗ったGRヤリスは、やっぱり速かった!
袖ケ浦サーキットで1周2秒くらい違うと思う。グラベルで乗った時と同じく敏感。丁寧に乗ればしっかりと走る。でも荷重移動をさせ過ぎたり、挙動のコントロールを少し失敗すると手強い。
詳しく知らないのだけれど、いわゆる「*シャア専用ザク」といったイメージか。上手な人が乗りこなせば強い!
でもアベレージドライバーだとGRカローラのほうが性能を使い切れると思う。
さて。GRカローラは限定販売となり、しかも抽選とのこと。欲しいと思ったらすぐディーラーに行くことを薦めておく。
●トヨタGRカローラ(RZ)主要諸元
・全長:4410mm
・全幅:1850mm
・全高:1480mm
・ホイールベース:2640mm
・車重:1470kg
・エンジン:直3、DOHC ICターボ
・排気量:1618cc
・最高出力:304ps/6500rpm
・最大トルク:37.7kgm/3000~5550rpm
・サスペンション:ストラット/ダブルウィッシュボーン
・乗車定員:5人
・タイヤサイズ:235/40R18
【番外コラム】モリゾウエディションとRZは何が違う?
シートの出来がいいのも大きな魅力。モリゾウエディションはセミバケットシートとなる
モリゾウエディションは完全に「エボモデル」。トルクがRZに比べて約8%アップしたことに加え、デフのローギアード化と1~3速のクロスレシオ化によって、加速フィールはRZよりも一段といい! ターマックもグラベルもダイレクト感あふれるハンドリングが楽しめ、しかも乗り心地がいい。
乗れば思わず笑顔がこぼれること間違いなし。2人乗りとなるが、むしろ「嫁にも子どもにもわかってもらえなくていい」と割り切れるかもしれない。
一方のRZは5人乗りに加え、荷室も一般的なものなので、家族に犠牲を強いることなくスポーティな走りを存分に味わえる。
モリゾウエディションはリアシートを取っ払って軽量化。タイヤを4本タテに載せられる
●「モリゾウエディション」のRZからの変更点
・軽量化:2名乗車とし30kgの軽量化
・最大トルクアップ:RZに比べ30Nm(3.1kgm)の向上
・剛性アップ:ボディに構造用接着剤と補強ブレースを追加
・ローギアード化:1~3速をクロスギアレシオ化
・ダンパー変更:モノチューブ(フロントは倒立式)とし減衰特性向上
・タイヤ変更:235→245とし、ミシュランパイロットスポーツカップ2採用
・シート変更:専用のセミバケットシートを採用
・インテリア:鋳物ブラック塗装とし、ステアリングなどに専用表皮を採用
・ボディカラー:専用色としてマットスティールを設定
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