この記事をまとめると
■2014年ル・マン24時間レースに参戦するためにポルシェは「919ハイブリッド」を発表
なんと10年前にエコでバカッ速のスーパースポーツ! ポルシェ918スパイダーの「最先端っぷり」がタイムマシンレベルだった
■ポルシェ919ハイブリッドは2015年から2017年までル・マン24時間レースを3連覇した
■ロード仕様となる「919ハイブリッドストリート」も計画されていたが実現はしなかった
ポルシェがル・マン参戦のために開発したレーシングカー
ポルシェは2011年、新たなプロトタイプ車両を開発して、2014年のル・マン24時間レースにワークス参戦する計画を発表した。そのために製作されたのが、2014年シーズンからスタートした、LMPH-1と呼ばれるWECの新レギュレーションに沿ったハイブリッドプロトタイプで、それは2013年のジュネーブショーで正式に発表された。
実際にそれに与えられた「919」というネーミングは、ポルシェの歴史を熟知する者には、とりわけ感慨深いものであったに違いない。1969年シーズンのメイクス・チャンピオンシップで総合優勝を果たすために、それまでの908ベースに、搭載エンジンを180°V型12気筒とすることでさらにパフォーマンスを向上させた917LHに始まる917Kや、その後の一連の917シリーズ。さらにはこの917をモチーフにしたとされる、2010年にコンセプトカーがパリサロンで発表され、3年後の2013年、ジュネーブショーで918台の限定生産が明らかにされた918スパイダーの流れを汲むモデルであることは、容易に想像できたからである。
正確には919ハイブリッドと呼ばれたニューマシンの基本構造体は、ダラーラとの共同開発によるCFRPとアルミハニカムコアで構成されるコンポジットマテリアル構造が採用されたモノコックだ。そのミッドに搭載されるエンジンは、2000ccのVダイレクトインジェクション方式のV型4気筒ガソリンエンジンにターボを組み合わせたもので、最高出力では500馬力を発揮していた。
エネルギー回生システムはブレーキングによる運動エネルギー回生と、排気による熱エネルギー回生、そしてターボのタービンによるエネルギー回生システムを採用。実際に回生されたそれらのエネルギーは、リチウムイオンバッテリーに蓄えられ、エレクトリックモーターの駆動に使用される。
ただし、新レギュレーションでのシーズン初年となった2014年は、2/4/6/8MJ(メガジュール)の各々が選べた1ラップあたりのエネルギー放出量で、ポルシェは6MJを選択。
翌2015年シーズンにはハイブリッドシステム全体の軽量化がさらに進められたため、最大値の8MJをチョイス。ハイブリッドシステムからのアシストはより大きなものになったとされる。
じつはストリート仕様も計画されていた
ポルシェは最終的に、919ハイブリッドによるWECへの参戦を2017年で終了することになるが、その一方で進められていたのが、そのロード仕様となる、「919ハイブリッドストリート」の企画と開発である。
仮にポルシェがWECの表舞台から去ることがなければ、それは確実に現実のものとなったプロジェクトであったはずだが、これは究極的なポルシェ製ハイブリッド車のパフォーマンスを一般の、しかしながらそれなりのドライビングスキルをもつアマチュアドライバーに経験してもらうことを目的としたハイパーカーだった。
そのメカニズムは、サーキットに投じられた919ハイブリッドのそれとほぼ同様。カーボンモノコックや、2000ccのV型4気筒ターボエンジン、それに回生システムや前輪を駆動するエレクトリックモーター等々からなるハイブリッドシステムはすべて共通だったが、残念ながらその夢は現実となることはなかった。
システム全体の最高出力で900馬力を発揮したとされるパワーユニットは、もちろん現在においても十分すぎるほどに魅力的なパフォーマンス。エクステリアデザインは、ロードカーらしくややすっきりとしたデザインに改められたが、個性的なキャノピーの造形などからは、LMPH1車両がベースとなっていることは瞬時に理解できる。
4 in 1のコンセプトによるヘッドライトは919ハイブリッドのそれとはやや趣が異なるが、これもタイカンなど、現代の最新ポルシェ車の顔としてはもはやお馴染みの処理だ。ウイングが配されたことで、すっきりとした印象に変わったリヤセクションのデザインも、ストリートならではのもの。
実際にポルシェは2015年から2017年までル・マン24時間レースを919ハイブリッドで3連覇しただけに、このストリートが誕生すれば、それは数あるハイパーカーのなかでもとくに注目される存在となったはず。そのプランが幻のまま終わってしまったことは残念だ。
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みんなのコメント
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って魂胆な事例は幾らでもある。