Apple CarPlay&Android Autoにも対応して利便性向上
2012年にマツダの新世代商品第一弾として登場したCX-5は、世界約120カ国で発売され、今やマツダの生産台数の4分の1を占めるエースである。現行モデルは2017年2月に発売された2代目だが、2回目の商品改良が実施された。マツダのエンジニアは常日頃「新技術は出し惜しみしない」と語るように、1回目の商品改良と同じようにメカニズムにメスが加えられている。今回は栃木県にある「GKNドライブライン・ジャパン」のブルーピンググラウンド内で試乗を行った。
ひとつ目は国内向けモデルとしては初搭載となる2.5リッター直噴ガソリンターボ車を追加。CX-5=ディーゼルというイメージが強いが、昨近年ガソリン比率が4割近くまで向上していることも踏まえ、「ライフスタイルに応じた多彩な選択肢の提供」が目的だそうだ。
このエンジンは3.7リッターV6に代わる「過給ライトサイジングコンセプト」で開発されたユニットで、「大排気量NA並みの過渡レスポンス」、「実用域の分厚いトルクと伸び」、「幅広い低燃費率領域」が特長となっている。
これらを実現させる技術が、低速域の過給能力を向上と吸気工程での掃気効果を向上させた「ダイナミックプレッシャーターボ」と高負荷ノッキング抑制/高負荷燃費改善のための「クールドEGR」で、最高出力230馬力/4250rpm、最大トルク420N・m/2000rpmをレギュラーガソリン仕様で実現している。
実用域の余裕あるトルク感やターボラグがほとんどない滑らかさはディーゼルターボと似ているが、アクセル操作に対する軽快なフィーリングや回転の上昇と合わせてパワーが盛り上がる感触、そして伸びの良さなどは「ガソリンエンジンならでは」という感じだが、欲を言えば、レブリミットが6000rpmとそれほど高くないので、あと500rpmくらい回ってくれるとガソリンエンジンの旨みがもっと感じられると思う。
このように非常に魅力的なパワートレインではあるものの、個人的には「エンジンバリエーションの追加」に留まらず、このエンジンの特性に合わせた内外装や走りの味付け……マツダスピードの復活とまでは言わないが、東京オートサロン2018に参考出品された「CX-5カスタムスタイル2018」を発展させた「Sパッケージ」などがほしい。マツダには「何でもありますよ」ではなく「これがお勧め!!」という考え方も必要だろう。
ふたつ目が次世代車両運動制御技術のひとつである、GVC(Gベクタリングコントロール)の進化版「GVCプラス」の採用だ。エンジントルク制御で前荷重を与えてターンインの応答性を高めるGVCに加えて、ブレーキ制御により旋回中~ターンアウトの安定性・収束性を向上させる機能である。いわゆるブレーキによるヨーモーメント制御だが、他車と違うのは内輪ではなく外輪を制御している点だ。つまり、「曲げる」はエンジントルク制御に任せ、ブレーキ制御は「安定性を高める」ことに用いられているそうだ。
今回は特別にGVCとGVCプラスの切り替え可能な試験車を用いて試乗を行ったが、クリップを超えて直進時に戻る際にアクセルを踏み込んでいくと、普通はフロント内輪が浮き上がる姿勢になるが、GVCプラス付はその傾向が明らかに少ない、つまり、今までよりも早い段階で直進状態に戻っているのだろう。また、S字など連続したコーナーでは、挙動の収束性が大きく改善されることも実感。クルマの無駄な動きが減る=修正舵が減る=次のコーナーへのアプローチがラク=意のままのドライビングに近づく……というわけである。ちなみに制御自体は非常に自然なので、機械に助けられている感じはほとんどない。
さらに今まで以上にGのつながりが滑らかで運転がしやすくなっていたのだが、その印象をエンジニアに伝えると、「GVCプラスはヨーモーメントだけでなくピッチモーメントも制御しており、左右Gと前後Gのつながりがスムースに改善された結果です」とのこと。ちなみにサスペンション自体にも手が加えられおり、ストロークのスムース化やバネ特性の低減、減衰力特性の最適化による相乗効果もあるだろう。ただ、今回はフラットの路面のみの試乗だったため、快適性の部分に関してはリアルワールドでチェックしてから最終判断をしたいところだ。
そのほか、ディーゼルエンジン+6速MTの組み合わせの追加やアドバンスド・スマート・シティ・ブレーキ、アシストの夜間歩行者検知機能追加、17インチホイールの塗装変更(ダークシルバー→グレーメタリック)、エアコンパネルのデザイン変更など、細かい部分にも手が加えられているが、そのなかでもマツダ車のウィークポイントのひとつと言われながらなかなか改良されてこなかった「マツダコネクト」が、ついにApple CarPlay/Android Auto対応になったのは、筆者の中では2.5リッター直噴ターボやGVCプラスと同じくらいの劇的な進化と言っていいかも!?
さらにディープレッドのナッパレザー仕様のインテリアや本杢パネル、シートベンチレーション、7インチTFTメーターなどCX-8のアイテムを水平展開したフラッグシップ「エクスクルーシブモード」も追加。CX-8ほど大きくなくてもいいけど、CX-8のようなプレステージ性が欲しいユーザーにはピッタリのモデルと言えるかもしれない。
このように、従来モデルに対して大きくレベルアップしているのは間違いないのだが、ユーザー目線で見るとまずます“買い時”がわからなくなっているのも事実だ。新規で買う人にとっては「常に最新」なのは嬉しいが、既販ユーザーは「わずか数カ月で型落ち」というガッカリ感もある。
マツダは「お客さまとの間に特別な絆を築く」ことを目指しているが、それなら初期モデルのユーザーとの絆も考えてほしいと思っている。個人的には改良項目の一部でもいいので、従来モデルのユーザーがアップデートできるようなシステムの構築なども検討してほしいところだ。
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