812スーパーファストをベースにヨーロッパの目の肥えた顧客の要望に対応
9月25日、フェラーリはV12プラットフォームをもとに作られた10台目のワンオフ・モデルとなる「フェラーリ・オモロガータ」を製作したことを発表した。
【スクープ】V12気筒フェラーリ最後のニューモデル? 「812スーパーファスト」の過激モデルをキャッチ!
目の肥えたヨーロッパの顧客に依頼され、コーチビルダーによってつくられるフェラーリの 1 台だけのワンオフ・モデル・ラインのこの最新作は、 レーシングに関するフェラーリの価値観を強烈に思い起こさせるもの。それは、サーキットで頂点を極めると同時に、公道でもリラックスして走行できる、真のジェントルマン・ドライバーのためのモデルという価値観だ。
オモロガータのプロジェクトは、最初のスケッチの提示から完成まで、2年あまりかかったという。出発点となったのは、レーシングの伝統からSFや現代建築まで、さまざまなインスピレーションによるイメージ。最初のアイディアは、持続的な印象を残さずにはおかない時代を超えたシェイプを生み出せるよう、独特な要素に新鮮な解釈を加えた未来的なデザインをつくることだったという。
これを実現するためにデザイナーは、 812スーパーファストの基本的なパッケージから、考えうるあらゆる自由な領域を解き放ち、フロントウインドーとヘッドライトだけを既存のボディの要素としてそのまま使用。目標となったのは、強烈なミッド・フロント・レイアウトのプロポーションを活かしつつ滑らかな立体感と揺れ動く反射を特徴とする、流線形のデザインを生み出すこと。
さらに、エアロダイナミクスを追求し、表面の急激な変化を控えめに昇華させ鋭い形状よってデザインを高めることだった。最も困難だったのは、自己主張と抑制の理想的なバランスを取ることだったという。なぜならオモロガータは、街で存在感を放ちながらも、きわめて純粋なフォーマルなスタイルを維持する必要があったからだ。
デザイナーは、クルマのスタンスと姿勢をあらゆる角度から入念に研究し、フラットになった楕円形グリルを出発点として、徐々に広がるフロントのボリューム感を決定。フロント・ホイールアーチの上で丸くなった魅力的なセクションは、ボンネットを包み込むストライプによって強調され、グリルから自然に押し出されたように見える。ドアの後方では、力強いリヤの筋肉がすっきりと上方のリヤ・スリークォーター・パネルに溶け込んでおり、リヤ・クォーター・ウインドーを取り払ったことで、リヤ全体のボリュームがことさら堂々としたものになっている。
横断する3つの切断部は、このボリュームを切り裂きながらクルマを統御しており、ファストバックからせり上がる顕著なリヤスポイラーは、ダウンフォースだけではなくアグレッシブ性も高めている。この結果、静止しているときでさえこのクルマは舗装路を制覇する準備ができているような感じを抱かせ、リヤから見ると狭く配置されたシングル・テールランプが緊張感を引き立てている。
フラヴィオ・マンツォーニ率いる同社のデザイン・チームにとって、いつも大きな課題となっているのは、フェラーリの使い勝手と扱いやすさを一切損なうことなく道路でのホモロゲーション(認証)に必要な安全上の制約を満たすこと。既存のプラットフォームをベースとする場合はなおさらだ。実際、 2009年に発表された「P540スーパーファスト・アペルタ」以来、フェラーリが生み出してきた10台目となるこのフロントエンジン・ワンオフ・モデルの開発作業を通じて交わされるキーワードとなったのは、「ホモロゲーション取得済み」を意味する「オモロガータ」という言葉。
どのフェラーリのショールームに置いてもすぐに見つけられるような隅々まで特注のモデルとなるよう、デザイナーは顧客から出された明確な指示を超え、クルマのあらゆるディテールにいたるまで無数の要素を効果的に考慮に入れた。究極のタッチを追求した結果、このモデル専用に新しい色調のレッドまでもが開発され、燃えるような3層のロッソ・マグマが暗いカーボン・ファイバー仕上げに組み合わされた。
インテリアでは、きわめて多くのトリムのディテールがフェラーリの豊かなレーシングの伝統への強い結びつきを物語っている。フル・ブラックのインテリアを背景に際立つエレクトリック・ブルーのシートは、レザーとJeans Aundeファブリックを趣味よく組み合わせて仕上げられ、4点式シートベルトが備わっている。リヤ・クォーターウインドーとサンシェードを故意に取り払うことで、過ぎ去った時代を思い起こさせるキャビンの雰囲気を醸し出している。
ダッシュボードとステアリングホイールの金属製パーツは、1950年代と1960年代の偉大なGTレーサーやフェラーリのエンジン・カムカバーと関連のある、ひび焼き塗装効果で仕上げられている。インナードアハンドルやF1バッジなどのディテールでは、「250LM」や「250GTO」などのマシンで頻繁にみられるハンマー塗装効果が用いられている。
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