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エクストラパワーをどう活かす? 萩原秀輝が考察する 「コンペティション」の意義

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エクストラパワーをどう活かす? 萩原秀輝が考察する 「コンペティション」の意義

コンペティションに上乗せされるプラスαのパフォーマンスとは?

Mモデルに追加されたハイチューンな「コンペティション」とは何ものなのか? サーキット走行を視野に入れながら、本誌スーパーバイザーが各モデルを分析してみた。

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BMWのサブブランドとして位置づけられるBMW Mは、サーキットで最高のパフォーマンスを発揮するモデルをラインアップしている。さらに、Mモデルでさえも満たされないユーザーの期待に応えるために特別仕様を用意。たとえば、3代目のM3には130kgの軽量化と17psのパワーアップを実現したCSL、現行型のM4には40kgの軽量化と69psのパワーアップを果たしたGTSを追加した。だが、これらは限定生産であり発表と同時に完売が約束されたコレクターズモデルでもあった。

BMW M2 Competition 手に入らなければユーザーの期待に応えたことにならない。それゆえ、現行のMモデルには+αのパフォーマンスが上乗せされたコンペティションが用意される。ただ、M2コンペティションが得たパフォーマンスは+αにとどまらない。前期型のM2はM235i(M240iの前期型)が積む高性能版のN系エンジンを搭載。それを、M3/M4と同型となる専用開発のS系3L直列6気筒ツインターボエンジンに変更し、ピュアMモデルに進化させたのだ。

最高出力は、40ps上乗せされた410psに到達。しかもM2コンペティションが興味深いのは、550Nmの最大トルクを2350~5230rpmで発揮するなど、近年のターボエンジンとしては高回転な特性を備えるところだ。もちろん、日常的な場面であればより低い回転域でより大きなトルクが得られた方が力強さの余裕が実感しやすい。
ところが、アクセルを踏む場面ではハナシが違ってくる。力強さの盛り上がりは、パフォーマンスを実感するためのリアルな刺激となるからだ。しかも、3000rpmあたりまで回せば中回転域にかけてのこの特性が発揮される。それだけに、市街地で開きすぎた先行車との車間を調整するといった日常的な加速でも、アクセルひと踏みでMモデルらしい刺激が楽しめるのだ。

しかも、アクセルを踏み続ければ胸のすく高回転域の特性が炸裂。レブリミットは前期型M2よりも500rpm高い7600rpmとなり、7速M DCT仕様の場合はパワーの頭打ち感がなく吹け上がりもシャープだ。2速なら7600rpmまでブン回しても速度は100km/hなので、高速道路の本線合流といったシーンなどで、高回転域で炸裂するパワーに意識までスカッと覚醒してくる。
ダンパーとスタビライザーも専用設定となるが、ロール感などは前期型との大きな違いはない。ハンドリングに余計な演出がなく、ステアリングを大きく素早く切り込めばズバッと向きが変わる。ステアリング制御を「SPORT」にすれば、前期型に増して手応えがガッシリしてくるので、ダイレクトな応答性が際立つ。このあたりは、CFRP(カーボン繊維強化樹脂)製のストラット・ブレイスの新採用でフロントまわりの剛性が向上した効果ともいえる。

ブレーキにも注目したい。何と、フロントが対向6ピストンでリアが対向4ピストンとなる、新開発のMスポーツ・ブレーキを標準装備する。ペダル操作に対する制動力の立ち上がりが正確なだけに、ウエット路面でもABS作動直前の状態を維持しやすい。ちなみに本国では約20万円のオプション扱いとなるが、M2コンペティションは、エンジンの変更を含め初期型に対して70万円の上乗せにおさまるのだ。

ハイチューン版であってもM5は日常的な場面も楽しめる

M4コンペティションは、ベースモデルが積む3L直列6気筒ツインターボエンジンに対して19psが上乗せされ450psを発揮する。最大トルクは550Nmと変わらないが、それが維持される5500rpmを超えてからの落ち込みを抑えることで、エンジン回転数によってパワーを稼いでいるのだ。

BMW M4 Competition ただ、その結果として得た速さは限定的だ。7速M DCT仕様の0→100km/h加速はベースモデルに対して0.1秒短縮の4秒となる。単純計算すれば、2モデルが同時スタートでフル加速して100km/hに達したとき、M4コンペティションがベースモデルに対して約3m先行するだけだ。

だが、場面がサーキットならパフォーマンスの違いが明らかになる。100km/hまでは2速の守備範囲となるが、3速、4速とシフトアップを繰り返すほどにパワーの威力が明らかになる。富士スピードウェイのホームストレートでは、ベースモデルは4速7000rpmを超えると加速の伸びに勢いを感じなくなるがM4コンペティションはレブリミットの7600rpmまでパワーがギッシリ詰まっている感覚が得られるのだ。

エンジンだけではなく、ダンパー減衰力の制御を専用設定とし、スタビライザーも変更した「アダプティブMサスペンション」を装備。多板クラッチを制御しリア左右輪のトルク配分を可変する「アダプティブMディファレンシャル」やDSCの設定もベースモデルとは異なる。タイヤもワンサイズワイドな20インチを装着。それだけに、コーナリング限界が向上しハンドリングの精度も高いため、狙ったラインがトレースしやすくなるのだ。

近年、レース参戦のためではなくパフォーマンスのすべてを体感するためにサーキットを走る人が増えている。そんな機会があるなら、間違いなくM4コンペティションはオススメのモデルとなる。

BMW M5 Competition そして最新となるM5コンペティションは、ベースモデルの4.4L V型8気筒ツインターボエンジンに対して25ps上乗せさの625psに到達する。そのパフォーマンスはサーキットでこそ本領が発揮される。だが、日常的な場面でもポテンシャルの高さが実感できる。なぜなら、Mスポーツ・エキゾースト・システムを装備するからだ。

エンジン制御を「SPORT」にすると、アクセル操作に対するトルクの立ち上がりがシャープになることに加え、いかにも爆発圧力が高そうな超刺激的な鼓動音を刻みはじめる。こうしたサウンド演出により、交差点からの発進でフル加速するまでもなくドライバーの気分を高揚させる。そして、高回転域までブン回せる高速道路の本線合流などでは爆音が響く。鼓動の密度が増して連続音になり、ストーリー性あるドラマチックな変化がもたらされ、まさにエンジン回転数でパワーを稼ぎ出しているかのような臨場感が高まるのだ。

サスペンションは、ベースモデルと比べてスプリングが10%強化され車高が7mmさがる。乗り味自体も硬めとなるが、サスペンションはスムーズに動くので不快感を伴う突き上げを回避。ダンパー制御が「COMFORT」なら、ラグジュアリー・セダンとしても扱える。M5は、同じコンペティションでもM2やM4よりも幅広い場面で楽しめるモデルといえるわけだ。

 

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