メルセデス・ベンツ190クラスは、1982年に発表されたメルセデス初のコンパクトセダン。Sクラスを小さくしたような外観、作りのよさもSクラス譲りで、バブル時代には「小ベンツ」のあだ名が付くほどの大人気モデルだった。
W201のコードネームで知られる190クラスもすでに生産終了から28年が経過し、中古車店に並ぶ姿も見かけなくなってきた。かつて隆盛を極めた「小ベンツ」たちは、いったいどうなってしまったのか?
そこで今回は、記憶に埋もれそうな190クラスを再発掘。日本仕様の変遷から、現在の相場価格と中古車のメンテナンスポイント、さらに世界的に高騰しているスポーツモデルのバイヤーズガイドまで、現在のW201事情を探ってみた。
文/北澤剛司
写真/メルセデス・ベンツ、北澤剛司
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■「最善か無か」を体現したメルセデス初の小型セダン
1982年に誕生したW201の190クラス
まずはW201の190クラスについておさらいしておこう。
デビューは1982年で、当時のダイムラー・ベンツ社が初めて開発した小型乗用車だった。しかし、それまでのメルセデス・ベンツ乗用車は高額なモデルに特化していたため、小型車市場への参入はブランドイメージを損なうリスクがあった。
そこでW201は、ボディこそ小さいものの、中身はほとんどSクラス並みといえる徹底した造り込みを実現。世界初となるマルチリンク式リアサスペンションの採用をはじめ、ボディ剛性から操縦性、そして安全性に至るまで、小型車としてはあり得ないオーバークオリティな設計が特徴。コストを度外視した設計思想は、同社のフィロソフィである「最善か無か」を体現していた。
■日本に最適だったボディサイズ
コスワースチューンの2.3L直列4気筒DOHCエンジンを搭載した190E 2.3-16
日本には1985年に導入開始。2L直列4気筒エンジンを搭載する190Eを皮切りに、2.5L 5気筒ディーゼルエンジン搭載の190D 2.5、スポーツモデルの190E 2.3-16、2.6L直列6気筒エンジン搭載の190E 2.6などが追加された。
ボディサイズは全長4420×全幅1680×全高1385mmで、5ナンバー枠にゆうゆう収まるコンパクトさ。最初から右ハンドル仕様が設定されたこと、そしてハンドルが異様に切れる抜群の小回り性能と併せて、日本での使い勝手にも優れていた。
マイナーチェンジで高級感を増した後期型の190クラス
1989年モデルではマイナーチェンジを実施。外観では前後バンパーの変更と側面下部へのプロテクションパネル(通称:サッコプレート)の装着、内装では前後シートの改良などが行われた。
また、Sクラス(W126)およびミディアムクラス(W124)と同様に、ボディ上半分と下半分を同系色の2ツーンカラーで塗り分ける新たなボディカラーを採用。上級モデルと同じ高級感溢れるエクステリアとなって大ヒットモデルとなった。
ラインナップは、スポーツモデルの190E 2.3-16が排気量拡大により190E 2.5-16に変更。ディーゼルではターボを装着した190D 2.5 ターボが追加された。さらに1991年モデルでは2.3L直列4気筒エンジン搭載の190E 2.3が加わり、フルラインナップが完成。1993年モデルまで販売された。
■30万円台から狙える190クラスの中古車市場
メルセデス・ベンツ190クラスの専門店『グンオートトレード』
グンオートトレードのホームページはこちら!
メルセデス・ベンツ190クラスの中古車情報はこちら!
後継のCクラスが登場してからは、100万円以下で買える中古車として人気となった190クラス。しかし、現在は同世代のW124やW126に比べて話題に上ることが少なく、W201はオークションで高騰している2.5-16 エボリューションIIの話題ばかり。そんなことを考えていたら急にW201の生息状況が気になってしまった。
そこで埼玉県所沢市にある190クラスの専門店『グンオートトレード』を訪問。W201の現状について尋ねてみた。
『グンオートトレード』代表の郡司智之さんは、クルマ好きが高じて脱サラし、2005年にショップをオープンさせた根っからのカーガイ。
20代の時に最終モデルの1993年式190E 2.6を新車で購入し、メルセデスの魅力に開眼。1995年には当時まだ安かった190E 2.5-16 エボリューションII(通称:エボII)を購入するなど、W201へのこだわりが尋常でない。
ちなみに現在の愛車は、25年以上乗り続けているエボIIと、お客様から購入したAMG 190E 3.2というレアモデル2台体制。名実ともにW201の「ヘンタイ」だ。
『グンオートトレード』代表の郡司智之さん
―早速ですが、W201の中古車はネットでも40台くらいしか見つからないですけど、流通量が減っているんでしょうか?
郡司さん―今は全体的に流通量が少ないです。主な理由は、中古車価格が安くなったときに買われた方がそれなりの整備しかしなかったのでダメにしてしまったことが挙げられます。あとは修理費用が想定の範囲を超えてしまい、維持を諦めてしまったという場合もあります。
―今流通している車両の傾向などはありますか?
郡司さん―まず前期型は全然流通していないですね。ほとんどがマイナーチェンジ後の後期型です。今はオークションだと程度の良い車両が出てくることは稀で、しかも高いですね。
うちは管理ユーザーが多いので、以前購入いただいた車両が戻ってくる場合があります。距離を伸ばすお客様が少ないので、1992~1993年式で5万キロ程度の車両が出てくることはあります。
―W201の中古車はざっくり100万円以内というイメージでしたが、今は50万円前後から200万円以上までピンキリですよね。正直、どれくらいの予算があれば楽しめますか?
郡司さん―16年前にお店を始めたときは、走行距離3万キロ以内のクルマが2~3ヵ月に1台くらいの割合で出てきたので、その中から1992~1993年式のモデルだけを選んで販売していました。
そのように昔は低走行のクルマが比較的安く仕入れできたので、120万円くらい出せば良い物件が購入できました。でも、今は年月がかなり経ってしまったので、単純に120万円出せば安心とは言えないです。
ただ、今まできちんと整備されてきた車両は、これから乗ってもあまりお金がかからない場合が多いです。逆に30万円とか50万円のクルマは程度もそれなりですので、乗ってからお金がかかる可能性は高いと思います。
―W201の中古車物件を見に行くときにチェックすべき項目はどのあたりですか?
郡司さん―基本はエンジンがスムーズにかかること、シフトが早くつながることです。ただ、昔と違い流通量が少ないので、何かしら問題を抱えている車両も少なくないと思います。
その問題がお店の人に相談して直せるのであれば買いですけど、たぶん直せるだろうという漠然とした自信だけで買ってしまうと、後でひどい目に遭うこともあります。自分の判断ではなく、お店の人に相談することをオススメします。
独特の伸縮式1本ワイパーが故障すると、ピラーに当たって動かなくなることも。これは社外品パーツなどで修理できる
■気になる190クラスのウィークポイントは?
エンジンの基本部分は丈夫だが、オイル漏れはある。製造から年月が経ったこともあり、ヘッドガスケットも消耗部品に
―W201を維持する上での注意とか、ウィークポイントがあれば教えてください。
郡司さん―エンジンは基本的に丈夫です。ただ、オイル漏れなどはあるので、丁寧に直していけば元に戻ります。あと、ヘッドガスケットが抜けてクーラントとオイルが混ざったり、原因不明でクーラントが減ることがあります。その場合はヘッドガスケットの交換とシリンダーヘッドのオーバーホールが必要で、費用はだいたい20万円くらいです。
―1980年代から1990年代のメルセデスはオートマとエアコンが鬼門というイメージがありますが、実際どうですか?
郡司さん―オートマは走り方次第で変わりますが、やさしく扱えば15万キロくらいは持ちます。修理は消耗部品だけならオーバーホールで大丈夫です。
ただ、オーバーホールキットがなくなりつつあるので、もし不安があるなら早めに決断したほうが良いです。エアコンで一番壊れるのはエバポレーターです。W201のエバポレーター交換は、ダッシュを外す必要がないので工賃は安いです。あとはコンプレッサー、コンデンサー、ホースなどが故障しますね。
オートマのトラブルは、故障というより消耗品が寿命になった場合がほとんどだという
―入手困難なパーツなどはありますか?
郡司さん―先日困ったのは、4気筒用のパワステの高圧ホースがなかったことです。ほかのパーツも在庫切れが増えていて、修理に不可欠な消耗部品が欠品になることもあります。
でも、部品が調達できないので乗るのを諦めてくださいと言ったことは一度もないです。ディーラーで入手できないパーツでも社外品などで直すことができますので、一度ご相談いただければと思います。
純正のエバポレーターは高価で在庫もないため、社外品で対応。現在は16V用のコンデンサーが在庫切れだという
―社外品パーツのクオリティは安心できますか?
郡司さん―使用部位によっても性能が違うので一概にこのパーツが良い悪いということは言えませんが、共通して言えるのは、あまりにも安いパーツは品質もそれなりということです。安いと思って飛びつくと最初からダメだったり、あるいは耐久性が伴っていなかったりする場合があります。
■ズバリ!今オススメの190クラスは?
1992年モデルで運転席エアバッグが標準装備に。ウッドパネルが増え、灰皿がプッシュ式に変更された
メルセデス・ベンツ190クラスの中古車情報はこちら!
―オススメのモデルや年式はありますか?
郡司さん―当時の右ハンドル車は、W124後期ほどではないけど若干アクセルペダルが重いなどの違和感があるので、左ハンドル車が良いですね。
車両全体のバランスでいえば2リッターエンジンの190Eがベスト。ただし、超絶遅いです。190E 2.3も大して変わりません。年式では、運転席エアバッグが付いてウッドパネルの部位が増え、ドアミラーがボディ同色になった1992年モデル。それにパワーシートが付いて8穴ホイールを装着した1993年モデルがオススメですね。
最終の1993年モデルで8穴ホイールを装着。ドアミラーのボディ同色化は1992年モデルから
―速さを求めるなら、コスワースが手がけた16V系の2.3-16と2.5-16になりますか?
郡司さん―16V系はタマ数がとても少ないので、程度と価格面で「これだ」と思う個体があれば早めに動いたほうが良いですね。エボリューションモデルのように、後で買おうと思ったらとんでもないことになってしまうこともあるので。
そこまで高性能を求めないなら、6気筒エンジンに16Vとほぼ同等の足回りを備えた190E 2.6スポーツラインもオススメです。6気筒なのでフロントの重さはありますが、足回りも固くなっているのである程度カバーできます。
街乗り主体であれば190E 2.6もありだと思います。乗りやすさでは低速トルクのある190D 2.5ターボがベストですが、自動車NOx・PM法で登録不可の地域もあるので、特に関東では難しいですね。
―16V系モデルにはハードルが高い印象がありますが、実際はどうですか?
郡司さん―普通のW201に比べるとスポーティな走りを楽しむ方が多いので、当然ながらすべての消耗が早いです。エンジンはみんなが言うほどセンシティブではないので、16Vでも優しく乗られている車両はトラブルが少ないです。
ただ、リアにハイドロニューマティック式の車高調整装置を使っているので、アキュムレーターは定期的な交換が必要です。あとはリアの車高を調整しているバルブの故障、リアのショックとハイドロポンプからのオイル漏れなどが発生することがあります。
リアにハイドロ式車高調整装置を備える16V系モデルは、アキュムレーターの定期的な交換が必要
■高騰しているエボリューションモデルの状況は?
購入以来、25年以上にわたって愛用されている郡司さんのエボII
―2.5-16のエボリューションモデルは海外のオークションでかなり高騰していて、1989年のエボリューション(エボI)で1000万円以上、1990年のエボリューションII(エボII)だと2500万円くらいが相場価格ですよね。エボIIに25年以上お乗りのオーナーとして、現在の相場はどのようにお考えですか?
郡司さん―現在の相場はバブルの時のように高価でも購入したい方がいるのでしょうがないかと思います。ですが、欲しい人が買えなくなってしまったのは残念です。昔は気軽に買えたので、サーキットなどでガンガン走っている方もいらっしゃいましたが、最近はそういう使いかたをする方が少なくなりましたね。
―最近、エボI・エボIIの売買情報などはありましたか?
郡司さん―最後に売ったのは5年前です。3台しかないといわれているディーラー車のエボIの1台でした。エボIは乗り尽くされてしまったものが多くて程度の良い車両を探すのが難しい状況です。
DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)用のグループAホモロゲモデルとして500台が生産された190E 2.5-16 エボリューションI
―参考までに、エボIとエボIIに固有の注意点というか、メンテナンスポイントなどがあれば教えてください。
郡司さん―エボリューションモデルにはハイドロを使った車高調整装置があって車高を3段階に調整できます。路面状況の良い道路ではローポジションでも走行できますが、路面からの突き上げが多いとフロントのシールからオイルが漏れやすくなります。あと、前後2段階に調節できるフロントのリップスポイラーを引き出した状態で走行すると、路面に擦れやすくなります。
特にスロープや段差では破損する可能性があるので、あらかじめ車高をハイポジションにする必要があります。その場合も、スイッチを押してから車高が上がり切るまでに時間がかかるので、すぐに走行しないようにしてください。
エボI/エボIIは車高を3段階に調整可能。車高調整スイッチはライトスイッチ横に配置される
フロントスポイラーを前方に引き出した場合は、ネジで車体に固定するとともに、ナンバープレートベース裏側とフロントスポイラーを2本のステーで固定する
■W124以上に手間をかけて製造されたAMG 190E 3.2
AMG 190E 3.2は、排気量を3.2Lに拡大した6気筒SOHCエンジンを搭載するコンプリートカー。200台程度しか作られなかった希少車だ
―ちなみに郡司さんが所有されているAMG 190E 3.2は、ある意味、エボI・エボII以上のレアモデルですよね。このモデルについて簡単に教えてください。
郡司さん―AMG 190E 3.2は、190E 2.6をベースに6気筒エンジンの排気量を3.2リッターに拡大し、234馬力を発生させるAMGのコンプリートカーです。
トランスミッションは、通常の190E 2.6には使われていない300E用を使用しています。W124のAMG 300E 3.2より手間がかかっているため、車両価格はAMG 300E 3.2と同等でした。そのため、日本では10数台しか売れなかったといわれるモデルです。
1992年4月にエーエムジー・ジャパンが発行したAMGモデルの価格表。AMG 190E 3.2とAMG 300E 3.2の価格差は、わずか65万円しかない
※ ※ ※ ※ ※
「グンオートトレード」の顧客には、昔憧れていたものの当時は買えず、今改めてW201との生活を楽しんでいる方が多いとか。生産終了から30年あまり経過したものの、いまだにファーストカーとして使える実用性があるという。
小型車としては空前絶後の造り込みを実現した、W201ことメルセデス・ベンツ190クラス。アナログ時代に造られた究極のコンパクトセダンとして、再び評価される時期に来ているのかもしれない。
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安くもなかったし。