未来を感じるタイカン・クロスツーリスモ
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
【画像】タイカン・クロスツーリスモ タイカン、パナメーラなどと比較 全130枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
英国の名門美大、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのビークルデザイン学科は、卒業作品展を毎年開催している。自動車メーカーでデザイナーとして活躍することを夢見る彼らの作品は、素晴らしいものばかり。
だが、アイデアの中には非現実的なものが少なくない。遠くの未来を空想しているのだろう。ワイルドなルックスは想像を掻き立ててくれるが、実現できるとは限らない。
しかし、われわれは間違いなく未来へ進んでいる。ポルシェ最新のタイカン・クロスツーリスモは、その卒業作品展に出展されているデザインのよう。2021年に発売が始まる、実在するモデルだ。
グレードは4段階あり、最新のBMW M3コンペティションよりわずかに高い価格から買える。英国では、8万ポンド(1200万円)くらいから手に入る。
一番安価なタイカン・クロスツーリスモでも、電気モーターは475psを生み出す。フェラーリ並みに目を引く存在感があり、それでいてルーフレールにキャリアを載せて自転車も運べる。今まででは考えられなかったようなモデルだ。
だが今回、初めて試乗する量産版は、穏やかな方のクロスツーリスモではない。現在8種類が存在することになったタイカンのラインナップで、トップに位置するターボS。英国価格は約14万ポンド(2100万円)に跳ね上がる。
このクロスツーリスモ・ターボSは、カテゴリー分けが難しい孤高のモデル。オーバーブースト時の最高出力は761psもあり、重心高は低く、スーパーカーのようでもある。
オフロードもこなせるグランドツアラー
だが、5段階に車高調整できる3チャンバーのエアサスを備え、4シーターか5シーターが選べる。車内は非常にラグジュアリー。上級なファミリー・グランドツアラーでもある。
さらにホイールアーチには黒いカバーが付き、ドライブモードにはグラベルが用意された。車高を持ち上げれば、相応のオフロード性能を発揮することも可能。履いているタイヤは21インチで、305/30サイズのピレリだ。
ルーフラインは高くなり、車内の頭上空間も余裕を増している。クロスツーリスモのサイドビューは、通常のタイカンとの違いを強調するポイントだろう。
シューティングブレークのシルエットを獲得し、リアシートを折り畳めば1171Lという広大な荷室空間が生まれる。リアシートを使える状態にしていても、BMW 3シリーズ・ツーリングの8割程度の荷室容量が確保されている。
ボディ幅は広く、荷室の開口部は位置が高く少し狭い。だが、実用性は想像以上にある。
加えてタイカンは電気自動車。2019年より以前、ポルシェには内燃エンジンを搭載しないモデルなど存在しなかったという事実には、驚かされる。
ハイテクでマッチョ。正直なところ、ポルシェ・タイカン・クロスツーリスモ・ターボSの実態は掴みにくい。
車重は2320kgもあり、軽くない。よりボディサイズが大きく、ツインターボV8エンジンを積むパナメーラ・ターボSスポーツツーリスモより185kgも重い。
快適性と操縦性の高次元なブレンド
その理由は、最大495kmの航続距離を与える93.4kWhの大容量バッテリー。電圧800Vのシステムを搭載し、急速充電を用いれば5%から80%の容量まで、20分で充電できるという。
クロスツーリスモの数少ないマイナスが、761psもあるクルマを運転しているという実感が薄いこと。充分に角が丸めてあり、かすかに感じ取れる程度だ。
サスペンションは、前後ともにダブルウイッシュボーン式で、エアスプリングが路面の不整を均してくれる。驚くほどコミュニケーション力に長けたステアリングと、快適なスポーツシートで、運転が心地良い。
テクニックが要求される道でも、はるかにコンパクトで軽量なモデルのように、繊細で正確に操れる。バランスの取れたシャシーと、シャープなアクセルレスポンスを活かしながら、力むことなく操舵できる。
フロント側よりパワフルな、リア側の駆動用モーターも効果的。ターボSは、アクティブ・アンチロールバーやトルクベクタリング、後輪操舵など、複雑なシャシー技術も満載している。快適性と操縦性の高次元なブレンドだ。
ただし操縦性は、スタビリティとロードホールディング性が優先。先進の技術を持ってしても、重いボディを動かすという物理学は存在する。ドライバーが活き活きと操れるタイプではない。
タイトコーナーを旋回すれば、大質量と対峙する大径タイヤという関係性が浮き彫りになる。911のような自由度は得ていない。スタビリティ・コントロールがためらうことなく介入し、ドライバーの気持ちを抑え込もうとする。
3種類の異なるクルマのタイプが融合
リアモーターが空回りしそうなら、トラクション・コントロールが予期したように立ち上がる。といっても、エアサスペンションが車高を落とすスポーツ・モードを選んでいても、グリップ力やトラクションは強大。滅多にそんな状態には陥らないのだが。
安全で速く、洗練されたタイカン・クロスツーリスモの別の魅力は、上質なクルージング・マナー。オプションの二重ガラスを選択すれば、110km/hで走行中に、車内ではひそひそ話ができるほど。
2320kgという車重は、落ち着いた乗り心地も与えてくれる。パナメーラだけでなく、多くの高性能サルーンより優れている。通常のタイカンよりも。事前に急速充電が可能なポイントを確認していれば、ロングドライブも楽しいに違いない。
タイカン・クロスツーリスモ・ターボSは実態が掴みにくい。アウディRS6アバントほど実用的ではないし、メルセデスAMG GT 4ドアクーペのように自由に振り回せるわけでもない。定員や航続距離では、テスラ・モデルXに届いていない。
筆者が一番に感じ取ったことは、ドライバーの充足感と同等の穏やかさ。スーパーカー級の特別さと、幅広い能力を併せ持っているということだ。
3種類の異なるクルマのタイプを融合させ、見事にすべてを両立させている。タイカン・クロスツーリスモは、そんなコンセプトのクルマなのだろう。
ただし、ターボSは高価過ぎて不必要なほどに速い。手頃なクロスツーリスモの方が、よりまとまりがあり、実用性や訴求力で勝るのではないかと思う。
ポルシェ・タイカン・ターボS・クロスツーリスモ(欧州仕様)のスペック
価格:13万9910ポンド(2098万円)
全長:4974mm
全幅:1967mm
全高:1409mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:2.7秒
航続距離:387-418km
CO2排出量:−
車両重量:2320kg
パワートレイン:ツインAC永久磁石同期モーター
バッテリー:93.4kWhリチウムイオン(実容量:83.7kWh)
最高出力:761ps(オーバーブースト時)
最大トルク:106.8kg-m(オーバーブースト時)
ギアボックス:1速オートマティック(フロント)/2速オートマティック(リア)
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