見慣れた雰囲気ながら全長は65mmプラス
text:Greg Kable(グレッグ・ケーブル)
【画像】発表間近 次期と現行Cクラスを比較 競合A4と3シリーズも 全83枚
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
現行の4代目となるメルセデス・ベンツCクラスは、これまで250万台以上を販売してきた。新しいW206型の開発で、支持されてきた特長から大きく外れるわけにはいかない。
今回試乗した5代目のプロトタイプには軽い偽装が施されていたが、それを示すように、現行型との共通性は見た目からも観察できる。正式発表は2月下旬へと迫っている。
キャビンがボディ後方に位置するプロポーションは、トラディショナルなFRレイアウトを強調するよう。ボディパネルやライト類のデザインは一新しているにも関わらず、スタイリングには見慣れた雰囲気が漂う。
新しいと感じる部分は、Cクラス共通で与えられるボンネット中央の膨らみ、パワードーム。フェンダーアーチは大きくなり、フロントトレッドは現行型より広げられている。
過去3世代に渡ってCクラスに関わってきた、開発部門トップのクリスチャン・フリューが今回のドライバーを務めてくれた。筆者は助手席で大人しくしていることにする。
全長は、4ドアサルーンで4代目より65mm長くなっているという。10mmがフロント・オーバーハング、30mmがホイールベース、25mmがリアのオーバーハングに宛てられているとのこと。これにより、Aクラス・サルーンとの見た目の差別化を強めている。
Sクラスと同じプラットフォーム
インテリアに目を向けると、ダッシュボードのデザインは新しいSクラスの影響を受けたように見える。メーターパネルには大きなモニターが充てがわれ、センターのタッチモニターも大型化。エアコンの送風口は、設定によって青や赤にほんのり光る。
拡張現実ディスプレイなど、新しい機能は最新のMBUXシステムによって制御。無線でのソフトウエア・アップデートにも対応する。
一部が隠されているものの、すべてが現代的で質感も極めて高いと感じた。肌触りの柔らかい素材が要所要所に用いられ、あまり目が届かないような場所でも、安っぽいプラスティックは採用されていない。
実際に押せるスイッチ類は、一見したところダッシュボードには見当たらない。唯一、ハザードランプだけのようだ。
車内空間は広々している。「パッケージングも改善されています」。とフリューが説明する。リアシート側の足元空間は25mm長くなり、頭上空間は13mm増えているという。
新しいCクラスがベースとするのは、モジュラー・リア・アーキテクチャ。驚くことに、大きなSクラスと同じプラットフォームとなる。しかし、Sクラスではアルミニウムが多用されるが、Cクラスでは高張力鋼板が多く用いられている。
エンジンには、まったく新しい電圧48Vの電動システムが搭載される。選択肢は、マイルド・ハイブリッドの直列4気筒ユニットに絞られる。新しい直列6気筒ユニットは長さがあり、今以上に大きなエンジンルームが必要になるためだ。
PHEVのバッテリー容量は倍増
C300eと呼ばれるガソリン・プラグイン・ハイブリッド(PHEV)と、C300deのディーゼルPHEVでは、バッテリー容量が従来からほぼ倍増。13.5kWhから25.4kWhへと大きくなる点がトピックとなる。
フリューによれば、PHEVのEVモードでの航続距離は99kmを達成するという。こまめな充電をしていれば、ガソリンスタンドに行く機会は大幅に減るだろう。
今回試乗したC300 4マティックが搭載するのは、258psの2.0Lガソリンターボで、20psのパワーを持つスターター・ジェネレーター(ISG)が組み合わされている。フルスロットルで約30秒間、27psを上乗せするオーバーブースト機能も備わる。
トランスミッションは9速AT。4マティックだから、四輪駆動が標準になる。
新しいCクラスのなかで、C300は一番パワフルというわけではないものの、ISGのアシストで威勢のいい加速が引き出せる。低いギアで中回転域から引っ張ると、特徴的な4気筒ユニットの鼓動も響いてくる。
低回転域ではエンジンは非常に落ち着いたマナーを示し、上級サルーンとしての訴求力を感じる。ボディ剛性も高めてあり、ステアリングフィールや操縦性も従来のCクラスから向上させたと、フリューは話す。
試乗車にはオプションの後輪操舵システムは備わっていなかった。それでもドライブモード次第でレスポンスが変化し、スポーティーさは明らかに高められているようだ。ターンインは鋭く、グリップ力にも不足はない。
さらに上質さを引き上げるという課題
姿勢制御も優秀で、操縦性には引き込まれるような流暢さがある様子。ボディロールは漸進的に発生し、コーナー途中に乱れた路面があっても、フロントタイヤは安定を崩さないようだった。
Cクラスの上質さを引き上げるという課題は、フリューたちが重要視していた部分。高負荷時でもエンジンからの音振は少なく、Cd値0.24という良好な空気抵抗のおかげで、風切り音などの発生も著しく少ない。
新しいC300での高速クルージングは、心地よい落ち着きに包まれる。英国での予想価格は4万ポンド(576万円)程度だというが、それより2倍くらいするモデルに迫る洗練度だと感じた。
試乗車はサイドウォールが硬めのスタッドレスタイヤを履いていたが、乗り心地は驚くほどしなやかで穏やか。走行時の質感を引き立てている。
サスペンション構成は、フロントがダブルウイッシュボーン式、リアがマルチリンク式で先代と同じ。ハイブリッド・モデルには、エアサスペンションも指定できるようになる。
Cクラスの上質な走行フィールは、通常より10mm車高の下がるAMGラインでも極めて印象的なものだった。鋭い上下方向の入力がタイヤへ加わっても、車内へ不快な衝撃として届く場面はなかった。
助手席に限られたものの、メルセデス・ベンツは新しいCクラスに望まれる内容を与えることに成功した様子。訴求力に勝るモデルに仕上がる可能性は高いといえるだろう。
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みんなのコメント
色々ドイツ車を乗り継いできましたが、いまはメルセデス以外選択肢ないかなぁと個人的に感じています。