■ジムニーは世代を超えて人気? いまや「ジムニー女子」という言葉誕生!
登場から約2年経った現在でも長期にわたる納車待ちが続いているのが、スズキ「ジムニー/ジムニーシエラ」です。
2018年7月に発売されて以降、常にジムニーはバックオーダーを抱える状態。ユーザーは発注から納車まで1年以上待つのが当たり前の状態ですが、それでも注文する人が後を絶ちません。
東京都内と大阪府内のディーラーで納期を調べたところ、ジムニーが関東で10か月から11か月、関西で7か月から8か月。ジムニーシエラは関東で9か月、関西で7か月から8か月とアナウンスされているようです。ちなみに、ツートンカラーの発注した場合は1年以上かかることもあるといいます。
登録台数を見てみると、2020年1月から10月までの登録総台数は、3万238台。4月度は、コロナ禍の影響によって生産現場が滞ったために、1231台と伸び悩みましたが、その後は月販3000台以上に戻し、9月以降は月販4000台以上を記録する勢いとなっています。
なぜジムニー人気は、ここまで加熱するのでしょうか。ジムニー人気のもっとも大きなファクターは、見ればひと目で分かるあのデザインやパッケージにほかなりません。
ここ数年のキャンプ、登山といったアウトドアレジャーの人気上昇により、いわゆるラギッドな雰囲気を持つモノが併せて人気となっています。
さらに、「1980年代への回帰」というのもキーワードになっています。例えば、2020年発売直後からジムニーと同じバックオーダー状態になっているホンダ「CT125ハンターカブ」は、1980年代に登場した「CT110」というモデルをモチーフにしたオフロードタイプのオートバイです。
さらにセイコーは、1980年代に発売したダイバーズウォッチを、次々と現代に復刻させています。
現行型ジムニーもまた、1980年代に登場した2代目をフィーチャーしたデザインとなっており、人気商品には“ラギット+80年代”という方程式が成り立つようです。
こうした傾向は特別なものではないと、ジムニーのカスタムを手がけ、自らも工業デザイナーだった経験を持つアピオ株式会社代表の河野仁氏は次のように話します。
「ユーザーは、モデルチェンジごとにコロコロとデザインを変えるクルマにはもう飽きてしまっていると思います。
気がつけば愛車が古くなってしまっているよりも、古くなればなるほど優越感にひたれるほうがいいに決まっています。
いま市場でそういうオフロード4WDというのは、メルセデス・ベンツ『Gクラス』、トヨタ『ランドクルーザー70』、ジープ「ラングラー」で、どれも基本デザインが何年何十年と変わりません。
しかし、それは性能上で必要だからそういうカタチになったわけで、狙ってそういうカタチになっているわけではないからです。
現代は普遍的なデザインが、クルマだけでなく多くのモノに求められているんだと思います。そして奇しくも、そういうモノの多くが、80年代に生まれているというのも面白いです」
※ ※ ※
1980年代といえば、いまの50代から60代の人々が青春を謳歌した時代ですが、この世代のユーザーがジムニーに戻ってきている一方で、新たな世代が今のジムニー人気を支えているというのは、株式会社タニグチの谷口武氏です。
「かつては40代以上のお客さんが大半でしたが、今は20代から30代の人たちとの割合が50:50になっています。
若返りの要因のひとつが、現行モデルが先代とは違ってファッションアイテムになり得るということ。
見たら誰でも分かる機能美デザインのジムニーに乗るというのは、アウトドア派の若者にとってはノースフェイスやパタゴニアなどの服を着るのと同じ感覚です。そして、若い世代にとってジムニーは懐かしいものではなく、新しいアイテムなのです」
ジムニーの魅力の要因となっているのは、デザイン性やファッション性、新しさだけでないようです。
先日、10代・20代の女性ジムニーユーザー10名ほどと対談する機会を得ましたが、彼女たちの多くが口を揃えていうのは、「ジムニーは、オフロードも走れる本格クロカン4WDなのに、とてもかわいい」という台詞。
彼女たち曰く、大型のオフロード4WDには自然に圧倒されない力強さ、かっこよさがある一方で、他人を威圧するような雰囲気もあるといいます。
ある女性ユーザーは「本音をいえば、ランドクルーザーやラングラーとか大きな四駆に乗りたいんです。でも今は経済的に厳しいし、それに20代の自分が普段乗っている姿を想像すると、ちょっと気後れしてしまいますね」と、大型オフロード4WD独特の雰囲気を指摘していました。
■かつて衰退した「四駆ブーム」。なぜそれを受け継ぐジムニーは生き残るのか。
前出の河野さんも「大型オフロード4WD独特の雰囲気」によって、四駆ブームは衰退したと唱えます。
「1980年代から1990年代にかけての四駆ブームは、バブルの追い風もあって完全な“イケイケ状態”になってしまいました。
多くのクルマが高くリフトアップし、ガッシリしたグリルガードを付けるのがスタンダード。
それも、必要とされる機能に裏付けされるものだったのですが、世の中が“あんなクルマは街ではオーバースペックだ、危ない”といい出し始めた瞬間から、オフロード4WD=悪というイメージになってしまいました。
それでもジムニーが残り続けているのは、街にも自然にも溶けむようなフレンドリーな雰囲気からでしょう」
コロナ禍によって、新車販売が打撃を受けている反面、衰えないジムニーの健闘ぶりは驚きに値します。
そこには、多くのコロナを恐れて一人で出かける人が多くなったという世情があります。
そのムーブメントのひとつが、「ソロキャンプ」。家族や友人たちとキャンプに行くのであれば、その装備を積むのに大きなスペースユーティリティを持ったクルマが必要です。
しかし、ソロでならジムニーの車内空間で十分。さらに人里から離れた山中を目指すには、優れた悪路走破性を持ち、コンパクトなジムニーは実に実用的な愛車というわけです。現行型であれば、車中泊をするのも容易です。
一方で、この小回りの利き使いやすいボディサイズが、ジムニーの弱点にもなっていると、前出の谷口さんはいいます。
「ジムニーはスペースユーティリティが小さいのですが、ルーフラックやキャリア、アタッチメントを活用することで、簡単に改善することができます。
しかし、後席へのアプローチだけはドアの枚数が増えないと改善できません。小さい子供やシルバーエイジには、後席にアプローチするのは難しく、ほとんどのユーザーが2シーターで使っているのが実情です。
お客さんのなかにも“5ドアはいつ出るのでしょうか?”という問い合わせがあり、とくにファミリー層ではかなりいますね。もちろん、5ドアモデルが出れば、ファミリー層だけでなく、より大きなアイテムを積みたいアウトドア派やプロフェッショナルも購入するはずです」
※ ※ ※
2022年に最初のマイナーチェンジイヤーを迎えると思われるジムニーですが、燃調プログラムやブレーキLSDトラクションコントロールの改善など、ユーザーが求める改良点は少なくありません。
そして、多人数乗車もユーザーのニーズのひとつです。すでにジムニーシエラ5ドアの国内販売が決まっているとされていますが、マルチスズキ・インド工場での生産開始が大幅に遅れている状況です。
現在はジムニーとジムニーシエラしか注文できない状態ですが、仮にシエラ5ドアの販売が開始されれば、ユーザーがショート、ロングでほどよく分散される可能性もあります。
ユーザーニーズが満たされるだけでなく、納期改善につながるともいえ、5ドアの販売いかんでは、シリーズ累計の年間販売台数が5万台を突破するかもしれません。
登録台数から鑑みると、スズキも生産体制を強化しているようですが、商品力の強化も必要な時期がそろそろ訪れているのも確かです。
実は2020年は、初代モデルが1970年に登場してから50周年目にあたる記念イヤー。しかし、さまざまな状況ゆえに記念モデルも新バリエーションも登場することのない寂しい年になってしまいました。
絶好調のジムニーですが、その人気を盤石にするためにも、そろそろ心躍るニュースを聞きたいところです。
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みんなのコメント
もともと軽規格の車体を伸ばしてドアと荷室を拡げても、
車内幅が狭くて不便なまま重量だけ増えてしまい、現在のシエラの1500ccエンジンでさえ非力。
乗り心地だって良くはありませんし、価格も上がってしまいます。
それよりも、エスクードを原点回帰のスクエアなデザインにしてジムニーの兄貴分として
売り出せば解決すると思うのですが。
独身と、50代〜の男性が欲しがる車になると思う。