ジムニーが未だに大人気というリポートを書いた。わが家の次期ワイフ機=小型のSUVを真剣に検討しはじめていたこともあって、買ってもいい気満々でディーラーに行ってみれば「一年待ち」だと言われてしまった。ジムニーは以前にいちど乗っていたことがあるし、今のパンダは5ドアで使い勝手もよくそれなりに気に入っているから、まぁしょうがないかとろくすっぽ商談もせずに帰宅したのだった。
そのとき件のディーラーで、「ジムニーシェラに5ドアが出る可能性があるなら待つ意味もあるんだけどなぁ」と話を振ってみれば、「そのような予定はないと思いますよ~。5ドアならうちにはハスラーがありますから!」と元気よく返されてしまった。そう、大人気を誇った初代ハスラーがフルモデルチェンジして新型になっていたのだった。
RS Q3で再び楽しめるクワトロシステム+5気筒エンジンの組み合わせ
初代ハスラーは売れまくった。6年間で50万台くらい。ジムニーほどハードコアではない軽のSUV。実をいうとそういう商品企画が今までなかったというわけじゃない。スズキのみならず他のメーカーからも“ジムニーほど本格派ではないSUVスタイルのKカー”という試みは何度かあった。けれども、2代目を続けて造るほどには人気を得ることができなった。
ギャラリー:人気モデルのお手本のようなフルモデルチェンジを果たしたハスラーコンパクトボディの最小回転半径は4.6m。前29度、後ろ50度のアプローチアングルも確保されているので、SUVとして基本性能も優秀。スズキ ハスラー|SUZUKI HUSTLER通常時でも荷物が多く載せられるように床下にアンダーラゲッジボックスを設定。荷室の広さは幅1330×高さ1270mmという設計になっている。軽自動車ながらアダプティブクルーズコントロールなども備えたハスラー。車内デザインも遊び心があり、差し色も効果的に使われている。新型ハスラーは全モデルマイルドハイブリッドとなり、自然吸気とターボの2種類が設定されている。出力は自然吸気は49ps、ターボが64ps。グレードは大きく分けてハイブリッドGとハイブリッドXの2つ。それぞれ自然吸気とターボが用意されている。駆動方式も2WDと4WDの設定がある。価格は128万円400円~179万円。ボディサイズは全長3395×全幅1475×全高1680mm。車両重量が約800kgと軽く、燃費性能も18.5~30.4km/ℓと非常に優秀。スズキ ハスラー|SUZUKI HUSTLERどうしてハスラーだけが成功したのか?
もちろんデビューしたタイミングが良かった。時代の空気に合っていたのだ。たとえば今、トヨタ&ダイハツのライズ&ロッキーが爆発的に売れているのと同じで、時代が望むカテゴリー、サイズ、デザインがばっちりハマった。
もっともこう言ってしまうと売れた商品というものは何でもそうなわけで、エラいのは市場マーケティングをやってた連中か大きな一声を上から投げ掛けた鶴かどちらか、という話になってしまう。実際、ハスラーはトップダウンの賜物だったが、それを受けて魅力的な商品へと仕立てたアイデアは、やはり現場の力というものだろう。ハスラーの場合、それは可愛いフロントマスクであり、女性ウケするヴィヴィッドなカラーバリエーションの数々だった。もちろん、乗ってもよくできたKカーであったこともロングセラーに繋がっている。
デザインで惹きつけ、走りで魅力を押し上げる。“見て良し乗ってさらに良し”は新型車の商品企画として理想的な展開だ。外見も中身もカスタマーの期待を超えたからこそ、街中を走るハスラーが最高のマーケティングツールになりうる。人気が人気を呼ぶという好循環がそれだった。
けれどもそんな人気モデルの、特に個性的なデザインがバカウケした場合のモデルチェンジは相当に難しい。キープコンセプトでも、フルイメチェンでも、必ず不平不満が出る。どちらの声が大きくなりそうか。その見極めが難しい。
驚いたのはドライブフィールの進化2代目ハスラーはキープコンセプトだ。それは間違いない。何しろモデル末期まで売れていたのだから、丸目の顔をわざわざツリ目にする必要などまるでなかった。ハスラー顔はしばらくこのまま続けるべき。
一方で、ヘッドライト以外の要素をよく見れば、けっこう大胆に変えている。ひと言でいうと、全体的にかなり無骨な印象が増した。バンパーやフェンダーまわりはタフギアのようだし、ボディはより角張っている。ドアの見切りなど真っ直ぐに引き下ろされて潔い。インテリアのダッシュボードデザインに至ってはユニーク極まって、もはや何をしたかったのかコンサバコクピット派の筆者にはよく分からないほど。
デザインだけじゃない。ホイールベースと全高を伸ばして、室内と荷室のスペースを増やした。特にラゲッジスペースでは開口部が広く四角くなって荷物の出し入れがさらに容易になった。売れたクルマだからこそ、細かなところまで気を回した改良ができる。成功する2代目の典型だと言っていい。
何より驚かされたのはドライブフィールだった。いたって真っ当な乗用車なのだ。軽自動車だからって、たとえばリッターカーあたりに何か目立って劣るような場面がない。高速道路を走っていて、そのあまりにしっかりとした走りにKカーをドライブしていることを忘れてしまいそうになった。
なかでも自然吸気、つまりは安いほうのラインでも快適に乗れたのには驚いた。昨今のKカーといえば“ターボはいいけどNAはちょっと?”というモデルが多かったからだ。端的に言って、装備が増えてクルマが重くなっているのにエンジンだけはエコ重視でスカスカ。それをターボパワーでようやく補っていたのだ。
ところが新型ハスラーにはそれがない。もちろんターボもいいけれど、NAも悪くない。なぜか。ありえないことにNAのエンジンを専用に変えてきた。フツウはターボの有無に関わらずベースのエンジンは同じだ。けれども新型ハスラーは違う。NAの特性にあわせて、使い勝手と燃費を両立したロングストロークエンジンを新たに用意した。これが粘り強くまわっていい感じなのだ。
幕張を試乗していると、数分にいちどは旧型ハスラーとすれ違った。旧型オーナーからもっと注目を浴びるかと思ったら、そうでもなかった。代わり映えしないのだろう。けれどもそれでいいと思う。代わり映えだけのモデルチェンジも少なくない。新型ハスラーは実のある変身に徹していた。
文・西川 淳 写真・郡 大二郎 編集・iconic
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みんなのコメント
これならターボ無しでもストレス感じないし、使い勝手も弱点をよく改善されている。
きっとこれから徐々に買い換えが進むでしょう。