クルマ好きが応援したくなるタイプのクルマが今イチ売れないのはなぜ? 愛すべきモデルたちの販促プランを(勝手に)考えます!
●ラインナップ
・ホンダ フィット
・ホンダ CR-V
・スズキ ソリオ
・スズキ エスクード
・三菱 デリカD:5
・三菱 エクリプスクロス
・日産 キックス
・日産 スカイライン
トヨタ、物流でも存在感示す!? 新興メーカー・リーマック何者ぞ!!? クルマ界近未来ニュース3選
※本稿は2021年7月のものです
文/伊達軍曹、ベストカー編集部 写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2021年8月10日号
【画像ギャラリー】ライバルと比較! 「惜しいモデル」たちの“売れるカギ”はどこにある?
■ホンダ・スズキ編
■ホンダ フィット
ホンダ フィット…2020年2月に発売された4代目フィット。このところ落ち込みが激しく、2021年5月単月では2032台しか売れていない ●2021年1~5月平均販売台数:5258台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:23位
柴犬をイメージしたというフロントマスクや、全体的な「押し出しが強くない感じ」は、正統派のカーマニアとしては好ましく感じるポイントだ。
しかし一般のお茶の間系ユーザーからすると、それらは「地味」「高そうに見えない」的なニュアンスで、敬遠される要因にもなっている。
要するに「いい人なんだけど、付き合うならもっとワイルドな人のほうが……」みたいな、男女の間でよくある話みたいになっているのだ。これこそが、フィットが伸び悩んでいる理由ではないだろうか。
この状況を打開するには、「いい人だけでは終わらない」といったイメージの強烈なEVOモデルを、柴犬顔のままで作るのが効果的だ。人々は驚き、そしてその驚きから、何かが始まるだろう。
●結論!→→→「いい人」を卒業してワイルドな一面を訴求!「柴犬顔のEVOモデル」で世間を驚かせ、まずは認知を得よ!
■ホンダ CR-V
ホンダ CR-V…2018年8月に発売されたSUV。パワーユニットは1.5L直4ターボまたはハイブリッド。いいクルマだが売れず ●2021年1~5月平均販売台数:396台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:TOP50圏外
モータージャーナリストや硬派カーマニアからは「真面目に、丁寧に作られたSUVである」と高く評価されるCR-Vだが、販売台数ではトヨタのRAV4の約10分の1しかない。
多くの者は、CR-Vが売れない理由は「価格が高いからだ」と言う。それはある意味そのとおりで、類似グレード同士ではRAV4よりCR-Vのほうが20万円ほど高く、最安グレード同士で比べると約60万円の差がある。
これを見て人々は「CR-Vは価格を下げるべき!」と言うわけだが、それはハッキリ言って愚策。
値下げすることで一時的に販売台数は増えるだろう。だが結局は「安物イメージ」が付くことでブランドが壊れ、よりいっそう売れなくなるのだ(筆者は消費財メーカーに勤務していた時代、この現象を嫌というほど実感した)。
今、CR-Vに必要なのは値下げではなく、むしろ「値上げ」だ。当然、その際にはチープな内装をもっとちゃんとしないといけないが、とにかく世の中には「安いのが欲しい」という人だけでなく、「お金は出すから、いいモノが欲しい」と考える人もたくさんいる。
CR-Vは断固値上げして質感を高め、小金持ちをターゲットとしたい。いわば「SUV界の(西友ではなく)紀ノ國屋を目指す!」ということだ。
値上げして現状ちょいイマイチな木目調パネルなどの質感を向上させ「SUV界の紀ノ國屋(高級スーパー)」を目指せ!
●結論!→→→価格競争から撤退し、むしろ値上げして「超プレミアム」を目指せ!
■スズキ ソリオ
スズキ ソリオ…現在の2代目は2020年11月に登場したコンパクトトールワゴン。パワーユニットは1.2L直4+マイルドハイブリッド ●2021年1~5月平均販売台数:4948台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:15位
走行フィールに関しては、トヨタのルーミーよりソリオのほうが明らかに優れている。これはカーマニアが乗れば3秒で理解でき、マニアでない一般の方が乗っても30秒でわかる事実だ。
にもかかわらずソリオのほうが売れていない理由は、スズキというブランドの「フィジカルアベイラビリティ」と「メンタルアベイラビリティ」の低さだ。
この横文字の意味は番外コラムで説明するとして、要するに販売拠点が少なく、消費者に認知もされていないということである。この点についてトヨタというのは圧倒的ゆえ、「トヨタのクルマを選んでおけば間違いないよね」という心理により、ルーミーがバカ売れするのだ。
初代よりも後席はぐっと広くなった2代目ソリオのキャビンスペース。全長もやや長くなったが相変わらず小回りは利く
この現状を打破し、ソリオが実力どおりの販売台数をマークするためには、スズキの販売拠点数をトヨタ並みにまで増やし、同時にCM等の投下量も倍増させるしかない。
だがそれには莫大な予算がかかるため、スズキ単体では不可能。
……これを実現させるためにはソフトバンクグループ(SBG)とスズキが大同団結し、SBGの資金力によって販売拠点数を現在の10倍にし(※一部店舗はSBGではなくコメリと協業)、大量投下するソリオのCMに「白戸次郎(お父さん犬)」を出演させ、お茶の間の認知を得る! ルーミーに打ち勝つにはこれしかなかろう!
●結論!→→→ ソフトバンクと提携して拠点を増やし、CMに「お父さん犬」を出す!
■スズキ エスクード
スズキ エスクード…4代目エスクードとして2015年に登場。ハンガリーのマジャールスズキが製造するコンパクトSUVだが、ぜんぜん売れず ●2021年1~5月平均販売台数:148台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:TOP50圏外
クルマ好き界隈からは「地味にいいクルマだ!」と高く評価されているものの、一般的にはサッパリ売れていないスズキのSUV、エスクード。
活発な1.4Lターボエンジンを積むナイスなクルマだが、「日本製ではなくハンガリー製である」という点がお茶の間におけるネックとなっているようだ(スズキのほうも年間1200台ぐらい売れればよしとしている向きもあるようなのだが)。
とはいえこんな「ちょうどいいSUV」が、「ハンガリー製だから」という理由で売れないのは悔しい。
ならばここは「多様化、グローバル化の時代にあっては純国産にこだわるほうが逆にダサい!」という機運を作り出し、車名エンブレムの横にハンガリー国旗を配置するぐらいの開き直り戦術を採用したい。
●結論!→→→ハンガリー製であることを逆手に取って「国際色」をウリとせよ!
【閑話休題】「フィジカルアベイラビリティ」と「メンタルアベイラビリティ」とは?
●「手に入れやすさ」と「想起されやすさ」の違い
ソリオのところで述べた「フィジカルアベイラビリティ」とは、「その商品をいかに簡単に手に入れられるか」ということ。
クルマの場合は、要するに販売拠点の数が多いか少ないか、だ。
「メンタルアベイラビリティ」というのは「ブランドの想起のされやすさ」で、クルマを買おうと思った人の頭のなかに、そのブランドがパッと思い浮かぶかどうかということ。広告やプロモーション活動などが重要となる分野である。
この2つのアベイラビリティ(可用性)をともに向上させていくことが、モノを売るうえでは重要であり、それすなわち“マーケティング”である。
■三菱・日産編
■三菱 デリカD:5
三菱 デリカD:5…登場は2007年と古いが、インパクト充分なマイナーチェンジで人気を保つ三菱のミニバン。だが直近の2021年5月は619台しか売れず ●2021年1~5月平均販売台数:1581台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:46位
独自の世界観を築き上げているデリカD:5は、一部ユーザーの心はガッチリつかんでいるものの、市場全体で見ると5月度の販売台数はわずか619台の46位と、いささか弱い。
まぁ登場してからずいぶん時間がたつモデルゆえ仕方ないのだが、「悪路もイケるミニバン」という稀有なキャラから考えれば、もっと売れて然るべきである。
デリカD:5の販売台数を増加させるには、「電気シェーバーみたい」と揶揄されてしまうことも多いフロントグリルのデザインを逆手に取り、メンタルアベイラビリティ(ブランドや商品の想起のされやすさ)を上げるのが効果的。
たしかに電気シェーバーに激似のD:5のフロントマスク。これほどまで似てるならそれを生かさない手はない。ブラウンと提携を!
すなわちブラウンやパナソニックなどの電気シェーバーメーカーと、大々的なタイアップ戦略を展開するのだ。
それにより毎朝電気シェーバーでヒゲを剃る男性は、「そういえばそろそろ車検だけど、次はデリカD:5にしようかな?」などと、ヒゲを剃りながらD:5を“想起”することになるに違いない!
タイアップの相手はパナソニックでもいいが、今となっては「モーニングレポート」のCMも懐かしいブラウンが筆者の好みだ。
●結論!→→→イメージを逆手に取れ! 電気シェーバー「ブラウン」と徹底的なタイアップ戦略を実行!!!
■三菱 エクリプスクロス
三菱 エクリプスクロス…2020年暮れのマイナーチェンジでPHEVを追加。S-AWCと併せスペック的には魅力的なのだから、もっとちゃんと「効く宣伝」をしたい! ●2021年1~5月平均販売台数:887台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:43位
国産SUVのなかではトップクラスの4WD性能を誇り、2020年12月には大幅改良を行ってプラグインハイブリッドも追加したエクリプスクロス。
が、売れゆきはどうにもいまひとつで、今年1~5月の単月販売台数順位は「48位→49位→47位→46位→43位」と低迷している。ヨンクのSUVとしてはピカイチに近いのに、もったいない話である。
この状況に対して三菱が打っている手は「スペシャルサイト内での、人気Youtuberや三菱自動車社員による体当たりチャレンジ動画の配信」。……拝見したが、残念ながらエクリプスクロスという優れたSUVのイメージ向上に寄与するところまではいっていないように思えた。
4WDは車両統合制御システム「S-AWC」搭載。’20年12月に大幅改良を行ったが、その後の平均月販は887台と苦戦中
ここはひとつ、あのテの「動画」ではなく、思い切って「映画」に出資すべきだろう(Netflixでも可)。タイトルはズバリ『私をスキーに連れてって─令和版─』だ。いや、スキーではなくスノボのほうがいいかもしれない。
主演は母になった原田知世と、その娘 さくら(のん)。原田知世とのんがエクリプスクロスの主たる購買層である中年男性と一部青年のハートを鷲掴みにする(少なくとも筆者は鷲掴みされる)。
そして雪原にて、セリカGT-FOURではなくエクリプスクロスが「優秀なヨンクがある歓び」をアピールするのだ。さあ今すぐ令和版『私をスノボに連れてって』を製作だ!
●結論!→→→ 映画またはNetflixで『私をスキー(スノボ)に連れてって』の令和版製作に全面協力せよ!
※編集部註:大目に見てください。
■日産 キックス
日産 キックス…海外では2016年から販売されていたが日本では2020年6月に発売。日本仕様のパワーユニットは全車「e-POWER」 ●2021年1~5月平均販売台数:3712台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:20位
ジュークの後釜として登場したコンパクトSUVであるキックスは、日本仕様のパワートレーンはe-POWERであるものの、「車台が新興国向けの安いやつである」「内装の質感がとにかくチープだ」みたいな感じで、いまひとつ支持を得られず、販売ランキングは20~27位付近で伸び悩んでいる。
だがキックスというクルマ、乗ってみればe-POWERは非常に活発であり、車内も広く、そしてチープな内装も「気を使わずガンガン使えるから逆にいい!」と感じられるものだ。
そういった、いい意味でのチープ系SUVであるにもかかわらず、日産公式の動画CMなどでは妙に高級感というか先進性のようなイメージを訴求しているため、実態とイメージの間にミスマッチが起きているように思える。
キックスの内装はパッと見、まあまあ豪華だが、よく見るとチープ。ならばいっそ「完全なチープシック」に変えたほうがいい!
ならばここはひとつ、日産 キックスは「高級感」「先進性」的なワードはNGにして、「庶民や若者のためのガンガン使えるSUV!」という路線に移行したい(ついでに車両価格も30万円ほど下げれば言うことナシ!)。
で、CMはおしゃれなイケメンに運転させるのではなく、『じゃりン子チエ』あるいは『ど根性ガエル』などのアニメーションの権利を買って使用し、「猥雑な庶民だからこその、カッコつけず、ざっくばらんに生きることの歓び」を強く訴求するのだ。そうすればランキング10位圏内は確実に見えてくる(ハズ)。
●結論!→→→中途半端な高級感の訴求は即刻やめ!「庶民派街道」を突っ走れ!!!
■日産 スカイライン
日産 スカイライン…2013年に登場した13代目スカイライン。マイチェンやV6ツインターボ「400R」の追加などで頑張っているが、売れず ●2021年1~5月平均販売台数:323台/月 ●2021年5月販売台数ランキング:TOP50圏外
日本経済新聞の「日産はスカイラインの新規開発を中止する」との報道に対し、日産の星野副社長は「日産自動車は決してスカイラインを諦めません」と否定したが、実際どうなるかはよくわからない。
まぁ日産に諦めるつもりがなかったとしても、このままでは「諦めざるを得ない」という状態になるはずだ。
そのまま永眠させてもよいように思える(失礼!)スカイラインブランドだが、もし起死回生の一撃を放つとしたら、「令和のR32GTS-tタイプM」を作るしかない。
つまり超ハイパワーじゃなくてぜんぜん構わないので「小ぶりで小気味いい動きをするスカイライン」の令和版を作るのだ。あまり数は出ないはずだが、少なくともおじさん各位は狂喜乱舞する。
●結論!→→→ 「R32 GTS-tタイプM」の令和版を作り、オヤジたちの心に火をつけろ!
【閑話休題】映画やテレビドラマがきっかけで「再び売れたクルマ」はけっこうある!
●ランクル40もルノー4もドラマがきっかけで人気に
昭和の『私をスキーに連れてって』で話題になったのはST165型のトヨタ セリカGT-FOURだった。
それ以外にも2003年のドラマ『GOOD LUCK!!』の中で木村拓哉が乗って大人気となったランクル40や、1997年のドラマ『ビーチボーイズ』で反町隆史が乗ったルノー4など、「映画やドラマがきっかけで人気が沸騰したクルマ」というのはそこそこあるのだ。
まあ当時と今では時代が違うが、それでも、映画がきっかけでエクリプスクロスの人気が沸騰する可能性はある(たぶん)!
今や中古車相場が1000万円以上の日産スカイランGT-R人気も、元はといえば映画『ワイルド・スピード』がきっかけだ
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