現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 「HY戦争」「ゼロハン」「ドラヘル」昭和生まれライダーが懐かしさに涙するバイク用語と習慣は今?

ここから本文です

「HY戦争」「ゼロハン」「ドラヘル」昭和生まれライダーが懐かしさに涙するバイク用語と習慣は今?

掲載 18
「HY戦争」「ゼロハン」「ドラヘル」昭和生まれライダーが懐かしさに涙するバイク用語と習慣は今?

「ナナハン」へのあこがれが「ゼロハン」「ニーハン」などの愛称を生んだ

密かにスズキGSX-S750が生産終了になるということが話題になっています。それは、GSX-S750が国産最後の4気筒「ナナハン」エンジンを積むバイクだからです。

【画像7点】ナニコレ!? 走り屋のヘルメットによく生えていた「フサフサの尻尾」を覚えてる?

ところで排気量750ccクラスのエンジンを積むバイクのことを「ナナハン」という愛称で呼ぶようになったのは、1970年代のことでした。なぜなら国産初のナナハンモデルであるホンダ・ドリームCB750FOURが登場したのが1969年で、そこから5年内に国内4メーカーが「ナナハン」モデルをラインナップすることになりました。

その後、日本国内で販売されるバイクに関しては上限排気量が750ccが上限となったのは行政サイドの思惑を受けた業界の自主規制だったというのも、昔話として耳にしたことがあるかもしれません。

そして「ナナハン」という言い方と同様に、排気量に由来する派生語が多く生まれました。
1970年代あたりから、排気量50ccの原付バイクのことは「ゼロハン」と呼ばれました。そのほか250ccクラスを「ニーハン」と表現することが多かったと記憶している方も多いのでは?

なぜか350ccエンジンについては「サンハン」よりも「サンパン」と呼ぶことが多かったのは不思議ですが、いずれにしても最近では「〇〇ハン」」と言い方をすることは減っています。考えてもみてください、ホンダ GB350のことを「ジービーサンパン」と呼んでいる人あんまりいませんよね?

不思議なことですが、おそらく「〇〇ハン」という呼び方はナナハンありきで、ナナハンが国産の最高峰といえる時代だったからでしょう。だからこそナナハンが国産バイクの排気量上限という自主規制がなくなった1990年代以降、ゼロハンやニーハンといった呼び方も減ってきたのかもしれません。

「HY戦争」でドンパチしていたホンダとヤマハも2016年にはOEMで提携

さて、原付バイクのことを「ゼロハン」と呼ぶライダーも多かった1980年代のバイク業界についての新聞記事では「HY戦争」という言葉が数多く使われました。

H=ホンダ、Y=ヤマハ発動機。ホンダとヤマハのバイクが国内市場で激しく競争していたことを意味するものであり、国内シェアにおいてトップを守り続けるホンダが、瞬間風速的ですがヤマハに抜かれることになるほどの鍔迫り合いぶりを指した言葉です。

とくに両社が競い合ったのが「ゼロハン」のスクーター市場です。ヤマハ パッソルがスカート姿でもスマートに乗ることのできるステップタイプのデザインをアピールしたことで、女性の足としてゼロハンクラスの市場が急拡大。同カテゴリーにホンダはタクトを投入するなど、激しい商品開発が繰り広げられました。

シェア拡大のために、無理な値引き販売などが行われたこともHY戦争でのトピックスのひとつといえます。

もっとも、現在では原付スクーターについては日本国内専用の排気量区分ということもあって、各社ともそれほど力を入れていません。なにしろ、ヤマハの原付スクーター ビーノなどは、2016年からホンダ ジョルノのフロントデザインをそれぞれ変えただけの兄弟車(OEM車)となっているほどなのです。もはやHY戦争というのは歴史の教科書に載るレベルの昔話といえるかもしれません。

走り屋全盛期、ヘルメットにはフサフサの「尻尾」が付いていた!?

企業トップの話し合いによりHY戦争が集結したのは1983年のことですが、ユーザーレベルでのHY戦争はまだまだ続いていました。その舞台は、全国各地の「峠」でした。漫画や雑誌の影響により盛り上がった「走り屋」文化の全盛期は1990年代も続きました。

ニーハンでいえばホンダ VT250FやNSR250Rに対して、ヤマハ RZ250やTZR250といったバイクを駆った走り屋が、速さや腕を競い合っていたのです。

そんな走り屋文化を象徴しているのが「メットの尻尾」でした。ヘルメットの後ろにキツネなどの尻尾を模したフサフサのキーホルダーを取り付け、尻尾をなびかせながら峠を走ることが流行ったものです。今でも観光地に行けば土産物として、こうした尻尾のキーホルダーは売られていますが、さすがにヘルメットにつけているライダーはほとんど見かけなくなりました。

当時の感覚としては、ヘルメットから垂らした尻尾を風になびかせることでより速さをアピールするという気持ちもあったようですが、ちょっとした遊び心でもありました。

また「尻尾付きヘルメット」の進化としてヘルメットの頭頂部に「ネコ耳」のように見えるパーツを取り付けたり、さらにはそこに『ドラえもん』の顔をペイントした「ドラヘル」と呼ばれるカスタムなども流行しました。「ネコ耳ヘルメット」や「ドラヘル」は、現代でも一部のライダーに愛好され、当時物に倣って自身のヘルメットをカスタムする平成生まれの若いライダーも散見されます。

もっとも、各メーカーは転倒した際の衝撃吸収性能やかわし性能を考えてヘルメットの形状を決めているため、形を変えてしまったり、余計な装飾をくっつけてしまったり……というのは、あまり推奨できるものではありません。

すれ違いざまの挨拶「ライダーピース」は「ヤエー」と呼ばれるように

そして、峠の走り屋にはすれ違うときにピースサインでお互いに健闘を祈るという慣習もありました。これには決まった名前がなく、単に「挨拶」とか「ピース」とか呼ばれていましたが、筆者の周りでは「ライダーピース」と呼ぶ人も多かったように思います。いまでは考えられないほどの多くの若者が峠で命を落としていた時代、ライバルであり仲間であるという意識があったから生まれた文化といえるでしょう。

当時を思い出すと、ピースサインだけでなく足を軽く上げるというポーズもありました。攻撃的な意味でのキックというよりは、ピットに入る合図として足を上げるポーズに近いイメージだったと記憶していますが、そのあたりの文化が地方や峠、コミュニティによって違っていたのも、また事実でしょう。

なにかと厳しい時代、無茶がまかり通っていた峠の走り屋文化はすっかり失われています。とはいえ、走り屋が交わしていたピースサインの精神は、すれちがうバイク同士が軽く手を挙げて挨拶する「ヤエー」に受け継がれているのかもしれません。

「ヤエー」というのは2000年代前半に生まれた言葉といわれ、ライダーピース同様、「ライダー同士がハンドサインで挨拶をする習慣」のことです。

その語源は、2003年9月15日、巨大インターネット掲示板「2チャンネル」(現在の5チャンネル)のバイク板に立てられていた「ピースしようぜ!」というスレッドの中で、一人のユーザーが「Yeah」(イエーイ、ピースサインをすること)のつづりを誤って「Yaeh」(イエーイとはaとeが逆、ローマ字読みでヤエーと読める)と書き込んでしまいまったことにあります。

スレッド内の原文では下記のようになっており「ピースサインをして返してもらえないと悲しい、返してもらえるとほっこりする」という意図で書き込まれたコメントのようです。

(・∀・)凸Yaeh!→(゚Д゚)ハァ?→(´・ω・’)ションボリン。
(・∀・)凸Yaeh!→凸(・∀・)凸Yaeh!!→(´∀`)ポワーン。

2チャンネルバイク板「ピースしようぜ!」2003年9月ログ
このコメントに対し、他のスレッド参加者が「ヤエーと読める」「かわいい」などと反応し、徐々に「ライダー同士がハンドサインで挨拶をする習慣」の愛称として広まっていったというのが「ヤエー」の語源と言われています。
「ヤエー」という言葉の響きもその語源も、なんとも牧歌的ではないでしょうか。

筆者のような昭和生まれライダーが思わず懐かしさに涙してしまうような用語や習慣はそのすべてが消えてしまったわけではなく、一部は名称やあり方を変えて受け継がれているのです。

レポート●山本晋也 写真●ヤマハ/ホンダ/みんカラ@か お る 編集●中牟田歩実

こんな記事も読まれています

首都圏―栃木“第三のルート”めきめき成長中!? 「常磐道からまっすぐ100km」構想の最終地点は今 宇都宮LRTからの“夢の続き”
首都圏―栃木“第三のルート”めきめき成長中!? 「常磐道からまっすぐ100km」構想の最終地点は今 宇都宮LRTからの“夢の続き”
乗りものニュース
ホンダ新型「“小型”ミニバン」初公開! 全面刷新で「車中泊」モデル“新”設定! ちゃんと「寝られる」3代目「フリード」の「真っ平らベッド」仕様とは
ホンダ新型「“小型”ミニバン」初公開! 全面刷新で「車中泊」モデル“新”設定! ちゃんと「寝られる」3代目「フリード」の「真っ平らベッド」仕様とは
くるまのニュース
大クラッシュのポルシェ911、シャシー交換へ。ドライバーのマリキンは決勝出走可能との診断/WECスパ
大クラッシュのポルシェ911、シャシー交換へ。ドライバーのマリキンは決勝出走可能との診断/WECスパ
AUTOSPORT web
自作フォード「GT40」は原付カーだった! EVなのにホンダエンジンのサウンドが楽しめるギミックとは【マイクロカー図鑑】
自作フォード「GT40」は原付カーだった! EVなのにホンダエンジンのサウンドが楽しめるギミックとは【マイクロカー図鑑】
Auto Messe Web
【バーンファインディング】納屋の隅で見つかった走行距離2,600kmのシボレー コルベットC3スペシャルモデルの復活物語!
【バーンファインディング】納屋の隅で見つかった走行距離2,600kmのシボレー コルベットC3スペシャルモデルの復活物語!
AutoBild Japan
【画家をも魅了】 DS 4に仏の初夏を連想させる「コクリコ・エディション」 バカンスの風物詩
【画家をも魅了】 DS 4に仏の初夏を連想させる「コクリコ・エディション」 バカンスの風物詩
AUTOCAR JAPAN
フェラーリを辞めマクラーレンに移籍も3カ月で退職したサンチェス、アルピーヌF1再浮上のキーマンとなるか
フェラーリを辞めマクラーレンに移籍も3カ月で退職したサンチェス、アルピーヌF1再浮上のキーマンとなるか
AUTOSPORT web
スズキ『ジムニー郵便車』ミニカー、限定500台で予約開始
スズキ『ジムニー郵便車』ミニカー、限定500台で予約開始
レスポンス
ついに2Lロードスター登場間近?? やっと手に入るかも 最速ロードスターが全国巡業へ
ついに2Lロードスター登場間近?? やっと手に入るかも 最速ロードスターが全国巡業へ
ベストカーWeb
エスパルガロ、ジャンプスタートで表彰台逃す「得はしてないけど、動いたなら仕方ない」
エスパルガロ、ジャンプスタートで表彰台逃す「得はしてないけど、動いたなら仕方ない」
motorsport.com 日本版
大阪~橿原直結へ「最後の未開通部」進行中!? 西名阪道へつなぐ「大和高田バイパス」全通まで「あと2.3km」どこまで進んだ?
大阪~橿原直結へ「最後の未開通部」進行中!? 西名阪道へつなぐ「大和高田バイパス」全通まで「あと2.3km」どこまで進んだ?
くるまのニュース
NEWモデルは全車ハイブリッド! トヨタが米国で「カムリ」の2025年モデルを公開
NEWモデルは全車ハイブリッド! トヨタが米国で「カムリ」の2025年モデルを公開
バイクのニュース
オヤジは知っている!! トラックだけじゃないんだよ!! [いすゞ]って実は名車の宝箱だった!
オヤジは知っている!! トラックだけじゃないんだよ!! [いすゞ]って実は名車の宝箱だった!
ベストカーWeb
トヨタ新型「クラウン スポーツ」に試乗! 素直にカッコいいと思える久々の国産車は590万円から
トヨタ新型「クラウン スポーツ」に試乗! 素直にカッコいいと思える久々の国産車は590万円から
Auto Messe Web
ヒョンデがスーパーオートバックス7店舗に「ヒョンデ コーナー」を設立、いったいどんなところ?
ヒョンデがスーパーオートバックス7店舗に「ヒョンデ コーナー」を設立、いったいどんなところ?
Webモーターマガジン
クリーンラップ得られず14番手のトヨタ小林可夢偉「解決策を見出しているところ」。ミディアムには自信も/WECスパ予選
クリーンラップ得られず14番手のトヨタ小林可夢偉「解決策を見出しているところ」。ミディアムには自信も/WECスパ予選
AUTOSPORT web
優勝争った勝田貴元&ロバンペラが共にデイリタイア……オジェが首位に。WRCラリー・ポルトガル3日目は波乱の展開
優勝争った勝田貴元&ロバンペラが共にデイリタイア……オジェが首位に。WRCラリー・ポルトガル3日目は波乱の展開
motorsport.com 日本版
[Pro Shop インストール・レビュー]トヨタ カローラスポーツ(大西宏昌さん)by ウェイブトゥポート 後編
[Pro Shop インストール・レビュー]トヨタ カローラスポーツ(大西宏昌さん)by ウェイブトゥポート 後編
レスポンス

みんなのコメント

18件
  • チャンバー
    手曲げ

    この辺も殿堂入り。
  • 峠では空き缶を潰して膝にガムテープで括り付けているライダーも多かったな。膝をするほどバイクを傾けていないのに膝を外に出してわざと擦るやつも多かった。バカバカしいけれど懐かしい。
    HYにSもKも引っ張られて結局は疲弊してブームが去った。あの新型車ラッシュじゃあユーザーも付いて行けないよ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村