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誇り高き「重厚感」 アストン マーティン・ヴィラージュ 6.3(2) 魅力の中心がV8エンジン 好調のトリガー

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誇り高き「重厚感」 アストン マーティン・ヴィラージュ 6.3(2) 魅力の中心がV8エンジン 好調のトリガー

アストン マーティンは本来はこうあるべき

アストン マーティンの技術者による熱心な開発を経て、ヴィラージュ 6.3はお披露目の準備が整った。会場に選ばれたのは、1991年のグッドウッド・サーキットで開かれた、オーナーズクラブ・ミーティングだった。

【画像】好調のトリガー アストン マーティン・ヴィラージュ 最新DB12とヴァンテージ 同時期のスーパーカーも! 全172枚

試乗したアストン マーティンのオーナーは、引き上げられた動力性能を実感。ワイドボディが、シケインから鋭く加速していく姿へ魅了された。

通常モデルの英国価格が14万ポンドだったのに対し、6.3L仕様へのコンバージョンに求められたのは6万ポンド。それでも、0-97km/h加速5.1秒、0-160km/h加速11.5秒、最高速度281km/hという数字は、大きな話題をさらった。

少なくないオーナーが、本来はこうあるべきだと考えたに違いない。中には6.3Lエンジンは不要で、ボディキットとシャシーのアップデートだけを希望した人もいたというが、合計で約60台が「6.3」へ生まれ変わった。

コンバージョンには、1台につき12週間が必要とされた。在庫していたヴィラージュを6.3化することで、新たな契約にも結びつけることができ、ディーラーにとってもプラスだった。

技術者による意欲的な仕事と、オーナーやメディアからの反応などは、新しいアストン マーティンDB7の具体性を検討していた、親会社のフォードへ刺激を与えた。スーパーチャージャーを載せたヴィラージュの高性能版、ヴァンテージの予算も確保された。

1992年には、コンバーチブルのヴォランテも追加。カスタマーサービス部門へ、顧客から予約の電話が入ることもあったそうだ。

アストン マーティンらしい誇り高き重厚感

1993年に5.3L V8スーパーチャージャーのヴァンテージが登場。新しいDB7も1994年に発売され、ヴィラージュ 6.3の存在感は小さくなっていった。しかし、これがブランド好調のトリガーになったことは間違いない。

一時は倒産の危機にもあったアストン マーティンは、年間数1000台を提供する規模へ成長。ブランド・ファンの期待へ応えることで、自ら将来を切り拓いたといえる。

試作車の通称「ミンキー」は、1993年に最新仕様へアップデート。6.3Lの排気量はそのままに、最高出力507ps、最大トルク66.2kg-mへ引き上げられた。

改めてJ402 MNKのナンバーを付けたヴィラージュ 6.3へ近づいてみると、フレアしたホイールアーチと、マッシブなテール周りに特有の重量感が漂う。アストン マーティンらしい、誇り高き重厚感ともいえるだろう。

ドアを開けば、コノリー・レザーのワックスに似た香りが漂ってくる。内装の殆どはレザー張り。ウォールナット・パネルの艶は深い。モダンなステレオユニットが、少し雰囲気を乱している。

リアシートの乗員のために、ソニー社製のテレビがセンターコンソールへ埋められている。1990年代では、最高のおもてなしだった。設計の古さを感じさせるのが、キャビンの狭さ。内装パネルは、固定ポイントの周辺が不自然に歪んでいる。

巨大なトランスミッション・トンネルが、運転席と助手席を分断。エアコンの送風口がダッシュボード下に追加され、膝周りが窮屈に感じてしまう。

魅力の中心にある6.3L V8エンジン

ステアリングホイールとクラッチペダルは重い。5速MTのシフトレバーは、動きが渋い。6.3L V8エンジンが、前方で威圧的に唸る。ステアリングレシオはややスロー。低回転域から太いトルクがみなぎる。

標準の5.3Lエンジンを積んだヴィラージュは、充足感の高いグランドツアラーだった。対してヴィラージュ 6.3のアクセルペダルを踏み込むと、眠った獅子が目覚めたように、怒涛の突進が始まる。瞬間的に、巨大なトルクが路面へ伝えられる。

ボンネットは、加速時に明らかに斜め上を向く。3速で引っ張れば190km/hを超えるが、どんなコーナーからの加速も短時間にこなせる、粘り強さもある。アウトバーンでは、4速に入れたまま地平線の彼方まで疾走できるだろう。

ホイールベースは2610mm。小回りは余り利かず、アンチロールバーは強化されているものの、ボディロールは大きめ。そのかわり、乗り心地はしなやかで優しい。

シャシーバランスの高さは、驚くほど。速度域が高まるにつれ、ステアリングホイールは徐々に軽くなり、敏捷性が増す。意欲的にヴィラージュ 6.3は回頭していく。繊細に重み付けされたアクセルペダルを傾ければ、痛快なレスポンスでカーブを脱出できる。

6500rpmのレブリミットまで、エンジンサウンドはクレッシェンドし続ける。深く厚みのあるコーラスがドラマチック。プロトタイプ・レーサー譲りのV8エンジンが、魅力の中心にあることは明らかだ。

ニューポート・パグネルによる30年前の賜物

車内空間には、多少の妥協はある。グランドツアラーとしても、スーパーカーとしても、中途半端かもしれない。そんな事を、特別なパワーユニットが忘れさせる。

確かに、DB7の方が広く受け入れられた。ヴァンキッシュなら、より多くの利益を得ることができた。現在のラインナップは、しっかり市場にマッチしている。それでも、いかにも英国車らしいヴィラージュ 6.3の魅力が霞むことはない。

ニューポート・パグネルに拠点を残すアストン・マーティン・ワークスで、この貴重な例は今も大切に維持されている。ブランドを守りたいと考えた人々、必死にクルマを作り続けた人々による、30年前の賜物といえるだろう。

協力:アストン マーティン・ワークス

アストン マーティン・ヴィラージュ 6.3(1992~1993年/英国仕様)のスペック

英国価格:20万ポンド(新車時)/12万ポンド(約2304万円/現在)以下
生産数:約60台
全長:4737mm
全幅:1854mm
全高:1321mm
最高速度:280km/h
0-97km/h加速:5.1秒
燃費:5.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1969kg
パワートレイン:V型8気筒6347cc 自然吸気DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:507ps/6000rpm
最大トルク:66.2kg-m/5800rpm
トランスミッション:5速マニュアル(後輪駆動)

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