「人気のクルマ」はたくさんある。しかし他に並ぶもののない“天下無双のクルマ”というと、その称号を与えるにふさわしいクルマは少なくなってくる。
そんな、ライバルらしいライバルを探すのすら難しい(ただこれは不幸なことでもあるのだが)「天下無双のクルマ」が、今の日本車のなかにどれだけあるのかを探す出すのが本企画。
編集部が「天下無双」の候補として挙げた現行日本車22台の「天下無双度」を、自動車ジャーナリスト渡辺陽一郎氏が多角的に評価し判定。90%以上なら「天下無双に認定」というルールとする。
※本稿は2018年1月のものです
文:渡辺陽一郎、ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2018年2月26日号
■Section 01
■TOYOTA アルファード&ヴェルファイア
●敵なし状態が続く高級ミニバンの象徴
ヴェルファイア&アルファードは「天下無双」の語感にピッタリだ。良し悪しは別にして、フロントマスクなどに無双の風格がある。競争の激しいミニバン市場で、ほかのライバル車を蹴落としまくって売れゆきを伸ばす豪快さも無双のゆえんだ。大きく豪華なボディは、重くなって燃料の消費量を増やす。そこでハイブリッドを設けたことも王者らしいフェアな生き様だ。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……93%
■TOYOTA タンク&ルーミー
●クラスNo.1の販売が続くヒットモデル
ルーミー&タンクは売れゆきが絶好調。2017年の2車の販売総数を合計すると14万9529台だ。ノート(13万8905台)を超えて、N-BOX(21万8478台)、プリウス(16万912台)に次ぐ3位になる。凄い人気車だが、クルマの実力は4万9742台のソリオに負ける。軽自動車の販売が増えて、ユーザーの流出を避けるべく2年間で急造したから、走行性能やシートの座り心地が粗っぽい。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……65%
■TOYOTA プリウスPHV
●専用ボディ採用で売れゆき伸ばすPHV
日本には充電可能なハイブリッド車が少ないから、プリウスPHVとアウトランダーPHEVしか選べない。しかし欧州製輸入車には豊富に用意され、日本は遅れているためにこの2車種が目立っている。プリウスPHVにはソーラー充電で走る機能もあって技術は先進的だが、王者の風格はない。王者になるには、価格を下げてプリウスの売れゆきを上回るといった実績が必要だ。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……81%
■TOYOTA MIRAI
●世界初&唯一の量産燃料電池モデル
MIRAIは凄い。水素を充填して酸素と反応させ、電気を生み出してモーターで走る。充電ではなく化学反応による発電を行うクルマだ。トヨタはこれをリースではなく一般ユーザーに市販した。所有するには自宅付近に水素ステーションが必要で、大量には売れないが、将来に向けた環境技術の王者であることは確実だ。ルーミー&タンクと同じメーカーの商品とは思えない。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……98%
■TOYOTA 86&BRZ
●6年目に突入も魅力衰えぬFRスポーツ
水平対向2Lの直噴エンジンをボンネットの内部に収めた後輪駆動のスポーツカーは、世界的にも珍しい存在だ。優れた重量配分により、アクセル操作で車両の挙動をコントロールする楽しさも満喫できる。その意味では“無双”と呼べるが、価値観の幅が狭く、ユーザーに向けた優しさが乏しい。例えばオープンモデルを用意するとか、積極的に楽しませる工夫が欲しい。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……78%
■Section 01 まとめ
このセクションのなかで最も「無双度」が高かったのはMIRAI(98%)。世界初&唯一の量産燃料電池車なのだから当然だろう。
アルファード/ヴェルファイアの93%も立派。高級ミニバンという分野では国内のみならず世界でも唯一無二の「天下無双」といえる存在だ。
惜しかったのはプリウスPHV(81%)。競合するアウトランダーPHEVの存在と、標準仕様のプリウスほどは売れていないという事実でこの評価となった。
■Section 02
■TOYOTA ランドクルーザー200
●強さと豪華さを兼ね備えた「陸の無双」
SUVは悪路を走るための4WDとして誕生したが、力強いボディ形状が人気を得て独自の発展を遂げた。今のSUVは前輪駆動をベースにしたシティ派が主力だ。悪路を走る野性の本能が忘れ去られようとしている。そんな今だからこそ70年近く悪路を走り続けてきたランドクルーザー200を“無双”と讃えたい。SUVの外観がファッションではなく、必然であることを問いかけている。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……91%
■TOYOTA ハイラックス
●今 日本で唯一のピックアップトラック
ハイラックスは、今の日本では唯一のピックアップ4WDだから、このカテゴリーの王者だ。しかし生産国のタイなど海外では普通のクルマになる。またかつての日本には、ダットサンを筆頭にピックアップ4WDが多かった。それでも現行ハイラックスは、ミリ波レーダーと単眼カメラを使った歩行者対応の緊急自動ブレーキを採用するなど先進的だ。着実に進化している。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……78%
■LEXUS LS
●12年ぶりFMCの日本最高級サルーン
レクサスの最上級車種とあって安全装備は先進的。デザインも相応に新しいが、すべて想定の範囲内。1000万円クラスの高級車が、11年ぶりにフルモデルチェンジするとなれば感動は不可欠だろう。初代セルシオ(海外では初代LS)は世界一静かでスムーズなセダンだと驚嘆させられたが、現行型にはそれがない。“無双”とはいい難く、国産最上級セダンなのに話題性が乏しい。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……85%
■LEXUS LC
●欧州プレミアムと勝負する高級クーペ
外観はカッコよく加速力も凄いと思ったが、“無双”かと問われると厳しい。V型6気筒3.5Lのハイブリッドは、メリハリのある有段変速の運転感覚が持ち味だが、V型8気筒の5ℓは旧来のエンジンだ。運転支援の機能も操舵制御は未熟で、乗り心地も高級車にふさわしくない。この点は開発者も認識しており、今後の課題とのことだった。従って無双度も高まらない。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……72%
■NISSAN ノート e-POWER
●新感覚の走りが楽しいコンパクト
e-POWERは、アコードやアウトランダーPHEVなどと同様のシリーズハイブリッド。高コストだが特別な技術ではない。しかし凄いと錯覚させて大ヒットに導いたのは、ノートe-POWERではなく、その宣伝戦略が無双だったからだ。「それを人は発明って呼ぶんだ。そうだろう? ミスター・エジソン」と矢沢永吉が言う。こんなCMを平気で製作できるのは“無双”なクルマだけだ。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……90%
■NISSAN リーフ
●世界で最も売れている量産電気自動車
先代(初代)リーフは世界初の量産電気自動車だ。バッテリーが疲労する、電欠が心配、外観がカッコ悪い等々、色々な悪口をいわれながらも頑張って走り続けた。2代目の現行型は先代の発展型で新鮮味は乏しいが、JC08モードの航続可能距離を400kmに伸ばした。2018年中に60kWhの駆動用電池を搭載して、600kmに達する仕様も加える。人知れず研鑽を積み高みを目指すのも無双にしかできないことだ。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……98%
■Section 02 まとめ
このセクションの注目車はリーフ。実に98%の「無双度」となった。
確かにこれほど一般的なEVはなく、競合車も皆無となれば「天下無双」の満漢全席。前ページのMIRAIと同じパーセントを獲得するのも納得だ。このほかランクル200(91%)とノートe-POWER(90%)が「天下無双」に認定。エンジンを充電専用に使うノートe-POWERの新しさが光る。
■Section 03
■NISSAN GT-R
●世界トップレベルの爆発的速さは健在
2007年発売時の価格は777万円で、10年後の今は最廉価のピュアエディションが1023万840円だ。約246万円の値上げで、シルフィGやセレナXが買える金額だが、それでも納得させる走行性能を発揮する。今は見慣れたが、発売された時は大騒ぎだった。今後も値上げしていいから着実に進化させながら作り続けて欲しい。今の時代、GT-Rは存在しているだけで価値がある。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……90%
■HONDA シビックタイプR
●ニュルFF世界最速を誇るハッチバックスポーツ
1997年登場の初代シビックタイプRは小さなボディに1.6LのVTECを搭載し、テクニックを駆使する走りが楽しかった。価格は199万8000円だ。2Lターボで320馬力を発生する450万360円の現行型は別のクルマに思える。それでもFFの王者だが、唐突に発売された印象が強い。この種のクルマには「なぜ今登場したのか」というストーリーが重要なのに、今のシビックタイプRにはそれがない。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……88%
■HONDA NSX
●最先端技術満載のスーパースポーツ
生産規模が小さく、発売後も受注を停止していたが、今は人気が落ち着いて納期も約10カ月と短い。2370万円を支払えれば、普通に買える。運転感覚はアウディR8に似て普通に扱えるが、停車から時速100kmまでの所要時間は約3秒だ。しかもハイブリッドだからJC08モード燃費は12.4km/L。初代NSXに比べるとインパクトが弱いが、高性能と低燃費の両立は受け継いだ。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……85%
■HONDA S660
●日本独自のマイクロ本格スポーツ
NSXのようなスーパーカーは豊富に揃うが、S660のような軽自動車のスポーツカーは違う。日本独自の規格で海外メーカーは用意しない。しかもS660は、先代N-BOX用に空間効率を重視して開発された縦長のエンジンを積む。エンジンがボンネットには収まらず必然的にミドシップとなった。社員から募ったアイデアに基づいて、紆余曲折を経て誕生した小さな“無双”だ。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……91%
■HONDA N-BOX
●軽自動車のレベルを超えた意欲作
2017年の国内販売ではN-BOXが1位。以前から軽自動車の年間1位になっていたが、プリウスなどを抜いて国内1位になったのは2017年が最初だ。しかも現行型の発売は9月だから先代型の台数が影響した。現行型は先代の発展型で、見た人を必ず驚かせる広い車内などの特徴を受け継ぐ。その上で時代のニーズに沿って安全装備を充実させた。正攻法の開発で誕生した生粋の“無双”だ。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……93%
■MAZDA ロードスター
●世界を代表するオープン2シーター
楽しいクルマであるには、停車中の価値も大切だ。車中泊もそのひとつだが、スポーツカーにも求められる。愛車から降りて振り向いた時「やっぱりカッコイイ、買ってよかった」と思わせねばならない。86やBRZはこれが希薄だが、ロードスターには造形の美しさ、開閉可能なソフト/ハードトップにそれがある。オープンにすれば、買い物に出かける移動もファンなドライブに変わる。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……90%
■Section 03 まとめ
このセクションの候補車のなかで最も「無双度」が高かったのはなんとN-BOX(93%)。GT-R、ロードスター(ともに90%)、S660(91%)という日本を代表するスポーツカーを抑え、しかも競合車がひしめき合う軽自動車のなかで「天下無双」の称号を得たのだからすばらしい。
いっぽうで、シビックタイプR(88%)、NSX(85%)は惜しくも90%に届かず。
■Section 04
■MAZDA CX-8
●需要の広がりが期待できる3列席SUV
CX-8は3列シートを備える。3列目はSUVでは最も快適で、マツダも居住性の王者と表現している。ところが本当の“無双”は、同じマツダが製造していたプロシードマービーだ。全長は4950mm、ホイールベースは3000mmでCX-8より長く、3列目は簡素だが足元空間は大幅に広かった。畳めばフラットな空間になりミニバン風SUVの天下無双の1台であった。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……81%
■SUBARU WRX-STI
●今や貴重な4WDターボ本格スポーツ
スポーツセダンの“無双”はWRX STI。水平対向2Lのターボで動力性能は抜群に高く、熟成されたプラットフォームと足回りにより、走行安定性はさらに上回る。乗り心地も硬めながら粗さを抑えた。全幅を1795mmに設定するなど運転のしやすさにも配慮したから、峠道も走りやすい。S4に備わるアイサイトツーリングアシストを含めてスポーツセダンの優等生的な“無双”だ。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……90%
■SUZUKI ハスラー
●遊びゴコロ満載のユニーク軽SUV
ハスラーは軽自動車サイズのユニークなSUVとされるが、車内の広さやシートアレンジは先代ワゴンRと同じで、実用性をしっかり高めた。収納設備も豊富だ。デュアルカメラブレーキサポートなど、安全装備も充実させている。基本を確実に押さえた上で、内外装をSUV風にカッコよく仕上げたからヒットした。これは売れるクルマの方程式ともいえるだろう。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……84%
■SUZUKI ジムニー&ジムニーシエラ
●日本が誇る走破性No.1小型クロカン
軽自動車サイズのオフロードSUVだが、運転すると見方が変わる。日本の狭く曲がりくねったデコボコの激しい林道に最適な4WD車を開発したら、たまたま軽自動車のサイズに収まったという感覚だ。舗装路では乗り心地が悪く操舵感は鈍いが、悪路に乗り入れると、すべてが具合のいい長所に豹変する。小型車版は海外でも売られ、日本の高い技術をアピールしている。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……95%
■DAIHATSU ウェイク
●圧倒的ハイトボディで存在感を発揮
FFの軽自動車では唯一、全グレードの全高が1800mmを超える。室内高にも余裕が生じて、頭上に棚を装着するなど車内を有効活用できる。前後席を倒すと、荷室を含めて車内が平らな空間になって車中泊も可能だ。ただしタントでも車中泊はできる。ウェイクの独占機能ではない。車両重量が約1トンだからノーマルエンジンでは力不足で価格は高めになり、欠点も散見される。
●渡辺陽一郎の“無双度”チェック……59%
■Section 04 まとめ
このページのクルマのなかではWRX STI(90%)とジムニー&ジムニーシエラ(95%)が「天下無双」認定車となった。
どちらも唯一無二の存在であることを考えればそれも納得。両車ともに世界的視野で見ても「天下無双」に君臨できることは確実で、まさに日本を代表するクルマである。
【番外コラム】 ベストカーweb認定 天下無双なクルマたち
これなら迷いなく買ってよーし!
渡辺陽一郎氏による評価で「無双度」を探った候補車22台のうち、90%超えで「天下無双」のクルマに認定されたのは11台。ちょうど半分とは、意外と多かったなという印象だ。
MIRAI(98%)、リーフ(98%)、ジムニー&ジムニーシエラ(95%)、アル/ヴェル(93%)、N-BOX(93%)、ランクル200、S660(ともに91%)、ノートe-POWER、GT-R、ロードスター、WRX STI(すべて90%)というのがその内訳。なるほど実力、人気ともに誰もが認めるクルマが揃っていることがよくわかる。
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