価格や性能は570GTと720Sとの中間
text:James Disdale(ジェームス・ディスデイル)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
F1などで名高いマクラーレンによる、グランドツアラー(GT)に対する回答。従来のモデルとは一線を画する内容なことは明白だ。
見ての通り、レーザー張りの空間に包まれた伝統的な大陸横断マシンとは異なる。ミドシップ・レイアウトに極めて機敏な操縦性に、衝撃的なまでのパフォーマンス。贅沢さ以上に、さらにひとサジのスパイスを効かせた、だいぶスーパーカー寄りのクルマ。
マクラーレン720Sの圧倒的な直線加速を、95%くらいの領域まで楽しんでいるドライバーも沢山いる。手首の動作だけで鋭く走らせられるが、日常的に一緒に暮らしていても苦ではない。
前回マクラーレンGTの発表会が開かれたのは南フランス。サントロペの上の丘陵に伸びるカーブの連続する道では、運転にのめり込んだ。だがGTの本来の姿を確かめるには、フランスから英国まで走らせるくらい長距離をともにし、快適性を確かめなければわからない。
まずはマクラーレンGTの概要をおさらいしよう。マクラーレンは独立した新しいモデルだとしているが、価格とパフォーマンスを比べると570GTと720Sとの中間に位置するクルマ。
ボディパネルはほぼすべてが新しくデザインされ、車体全体で見ても3分の2は新設計となっている。スピードテールが登場するまでは、マクラーレンの公道モデルとしては最長のボディを持つ。大きなグラスエリアや電動のリアハッチ、伸ばされたノーズなどは、GTの実用性や扱いやすさを示唆している。
620psと64.1kg-mのV8ツインターボ
インテリアはモダンでラグジュアリー。美しくステッチの施されたレザーやローレット加工の施された金属製のノブなど、思慮が行き届いている。バウワース&ウィルキンス製のスピーカーが収まるパンチングメタルも注目に値する仕上り。
車体後方には420Lという大きな荷室があり、NASA仕様の耐摩耗性に優れた素材が敷かれ、大切な荷物を収容してくれる。エンジンルームの上に位置するが、荷室の床の下へ外気を流し温度の上昇を防いでくれる。40度以下には保たれるようだが、真夏日や渋滞時には、荷物は温まってしまうだろう。
滑らかなボディの内側には、マクラーレンおなじみの強固なカーボンファイバー製のタブと、4.0LのV8エンジンが隠されている。高圧縮比の特注ピストンと、小径で立ち上がりの早いターボが組み合わされている。
最高出力は620ps/7500rpmで、最大トルクは64.1kg-m/5500rpmだが、多くのエネルギーは2000rpm前後から引き出せる。アダプティブ・スポーツエグゾーストを装備し、V8エンジンの目覚めのひと吠えはさほど大げさではない。防音材も増やされ、フラットプレーン・クランクのメカニカルでエッジの効いたサウンドも穏やかになっている。
サスペンションの構造は、マクラーレン720Sと基本的に同一。だがスプリングレートは柔らかくなり、GT独自のアルゴリズムが与えられている。足回りの防音処理も向上し、ステアリングフィールも細かな振動などを消し、上質感を高めている。
リラックスしてフランスから英国まで走破
マクラーレンGTは、運転が大好きなドライバーのためのクルマ。曲がりくねった道を走らせれば、重量のかさむ従来様式のグランドツアラーが酔っ払いのように感じさせる、無駄の廃された身のこなしを披露する。グリップ力だけでなく、操縦性のバランスや落ち着き、機敏性は衝撃的なまでに優れている。
ステアリングの操舵感も落ち着きを増しているが、手に伝わってくる感触は濃密。ステアリングを回した分だけ正確に、ドライバーのお尻を中心に回転するかのようにGTは向きを変えていく。
わずかに柔らかさを増したサスペンションと、穏やかなターボラグのエンジンとの組み合わせで、アクセルペダルの操作でコーナーのライン調整も許してくれる。もっとも、マクラーレンとして期待される内容ではある。
グランドツアラー的な側面はどうか。予想以上にリラックスして、フランスから英国までの長い道のりを運転できた。ベントレー・コンチネンタルGTほど柔軟で穏やかな乗り心地ではないが、ワインディングを鋭く走るクルマとしては予想以上に安楽だ。
なめらかに舗装されたフランスの高速道路はしなやかにこなし、路面が荒い区間になってもピレリPゼロ・タイヤのロードノイズが過度にうるさくなる事もない。シートは部分的に肉厚さを増し、リラックスした運転姿勢と向上した視認性も、長距離運転を快適なものにしてくれている。
橋桁の継ぎ目などではボディにもステアリングにも振動が伝わるし、ドアミラーやフロントガラスの両脇辺りからは風切り音が聞こえる。ミラー越しでもリアガラス越しでも、後方視界は良いとはいえない。だがそれ以外はとても落ち着いて運転ができる。
不満の残る路面を選ぶ走り
仮に不平をいうならエンジンとなる。軽くアクセルペダルを踏んでいる限りとても静かに回転するが、負荷が強くかかると急にボリュームが大きくなる。
110km/h程度で走行している限り、エンジンの回転数は2000rpm程度でターボも効いていない。つまり、追い越し車線で急加速させたい場面などでは充分なパワーが得られないということ。
一度ターボブーストが掛かり始めれば、狂ったような勢いでスピード上げていく。フランスの高速道路の制限速度は130km/hだが、警察官に許してもらえる135km/h程度で巡航した燃費は、驚くことに12.3km/Lという良好な数字を出してくれた。
路面の管理状態がいいとは呼べない区間では、マクラーレンGTがグランドツアラーとして不満が残ることも明らかになった。ツギハギの多い英国の道路網では、好ましくない不意の上下振動を抑えきれないのだ。ベントレーなら何事もなかったかのように、平然と走り抜けるはず。
まだらに補修された都市部での乗り心地は、快適とは呼べない。低速でマンホールのくぼみを超える場面では、硬いサスペンションとボディのきしみで騒がしい。エンジン回りの防音性を高めたことで、カーボンファイバー製タブの共振と共鳴する特性が表に出たのだろう。
速度を上げると、サスペンションの動きも良くなり、乗り心地も改善する。だが、やはり橋桁の継ぎ目などでは車内にもステアリングホイールにも、振動が伝わってくる。特定の路面状態では、タイヤノイズも大きくなるようだった。
グランドツアラーに最優先するもの
伝統的な仕上りのグランドツアラーと比較すると、荒れた路面での乗り心地や騒音で、マクラーレンGTは及ばない部分がある。特に舗装の古い高速道路では気になるはず。
だが殆どのコンディションで、驚かされるほどに快適で上質な走りを楽しむことができる。大きな荷室もライバルモデルより有利だし、マクラーレンの与えた車内のラグジュアリーさは、本物と呼べる仕上りを獲得している。
マクラーレンとしては優れた利便性を備えており、多くの人にとって満足できる完成度だとは思う。広い駐車場が確保できる限り、毎日の暮らしに寄り添うクルマとしても、充分に民主化された身近さを持っている。
ライバルのグランドツアラーと比較すれば、マクラーレンGTに気になるところがあることは確か。だがマクラーレンらしく、メスのように鋭いクルマとして楽しむこともできる。何を最優先にするかで、感じ取り方はだいぶ異なるように思う。
マクラーレンGTのスペック
価格:16万3000ポンド(2216万円)
全長:4683mm
全幅:2045mm
全高:1213mm
最高速度:326km/h
0-100km/h加速:3.2秒
燃費:8.3km/L(WLTP)
CO2排出量:270g/km(WLTP)
乾燥重量:1530kg
パワートレイン:V型8気筒3994ccツインターボ
使用燃料:ガソリン
最高出力:620ps/7500rpm
最大トルク:64.1kg-m/5500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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