全日本スーパーフォーミュラ・ライツ選手権第6大会は11月19日、栃木県のモビリティリゾートもてぎで第18戦の決勝レースが行われ、このレースで2位となった木村偉織(HFDP WITH B-MAX RACING)が、2023年のスーパーフォーミュラ・ライツのドライバーチャンピオンを獲得した。
木村は1999年東京都生まれ。レーシングカートから2018年には太田格之進、三宅淳詞らとSRS(鈴鹿サーキットレーシングスクール。現ホンダレーシングスクール鈴鹿)でSRS-Fスカラシップ候補生となり、2019年にはFIA-F4にも挑戦を開始。2021年は激しいチャンピオン争いの末、FIA-F4で3位に。2022年からスーパーフォーミュラ・ライツに参戦を開始した。
スーパーフォーミュラ・ライツ第18戦もてぎは菅波冬悟が今季2勝目。2位の木村偉織が王座を決める
この年は小高一斗がチャンピオンを獲得し、太田が2位。同じホンダ育成の太田は2023年はひと足さきにスーパーフォーミュラとスーパーGT GT500クラスにステップアップしており、今シーズンの木村にとって、スーパーフォーミュラ・ライツのチャンピオンは悲願とも言えるものだった。
そんな木村は、第1大会となったオートポリスでは3連勝、さらに2回のポールポジション、3回のファステストラップとフルマークを達成。順調なすべり出しをみせたかと思われたが、その後は表彰台獲得こそあったものの、優勝は鈴鹿での第8戦のみ。ただ、木村は「もてぎでは3連勝する」ことを目標にこの第6大会に臨んでいた。
週末は木曜の専有走行でこそB-MAX RACING TEAM勢が速さをみせたが、金曜の専有走行は終日雨に。木村は木曜の好調さを乱すまいと金曜は走らず、迎えた土曜の第16戦/第17戦公式予選ではダブルポールポジションを獲得。さらに11月18日の第16戦、19日朝の第17戦ともポール・トゥ・ウインとファステストラップを獲得と、第5大会までランキング首位だった平良響(モビリティ中京 TOM'S 320 TGR-DC)との差を一気に逆転。第18戦では逆に有利な状況となっていた。
迎えた第18戦は、スタートこそこの第18戦で勝利を狙い、フレッシュタイヤを温存していた菅波冬悟(B-Max Engineering 320)に先行を許したものの、タイトルを争った平良を抑え2位でフィニッシュ。表彰台では感極まるシーンもみせた。
表彰式後、木村は「嬉しいです。それだけですね」と晴れやかな笑顔で喜びを語った。
「この第6大会はポールポジションを2回獲り、3連勝するしかチャンピオンの芽がないと思っていたので、そこしか考えていませんでした。チャンピオンを獲るために今年開幕戦から頑張ってきて、一年間最終大会を迎えるまで、思い残すことがないようにやりたいという気持ちがありました。今週もてぎに入るまでにやり切った気持ちもあったので、金曜はウエットになって走れず、流れがつかみにくい中でも、自分が何をしなければいけないか常に気持ちをぶらさず、最後まで集中し続けました」
そんな木村は、キャリアの中で初年度の2022年が最も辛い一年だったと振り返る。「自分のレースキャリアの中でも、いちばん何をやってもうまく噛み合わない年だったかもしれません。専有走行までは常にトップを獲っていたのに、予選では5~6番手に沈んでしまって、自分でもなぜか分からず、苦しい1年目でした」と木村。
「その点では、2年目になってアドバイザーとして武藤英紀さんに来ていただいたりと、ホンダさんのおかげで強力なバックアップを作ってくれましたし、B-MAX RACING TEAMさんもチーム全体が一体になりレースができたと思います。『チャンピオンを獲りにいく』という思いがどのチームよりも強かったと思っています」
そして、これまでも国内外で戦うトップドライバーたちを輩出してきたのがこのカテゴリー。木村はチャンピオンを獲得したことで「自分はこれまでずっと、海外でレースがしたいという思いがあって、レーシングカートから戦ってきました。HRSに入ったのも国内のトップカテゴリーはもちろんですが、F1やTCR、インディカーやIMSAなど、Hondaさんが幅広くレースをされているメーカーだったからでした。だから、最終的には海外で速い、『日本人ナメるなよ』という気持ちをみせたいと思っています」と将来へ向けた思いを語った。
「来シーズンに向けての希望は正直いろいろありますが、用意していただいたシートのなかで最高の結果を出すだけだと思うので、そこに集中していきたいです」
そして木村は、「ここまでサポートしていただいたホンダさん、B-MAX RACING TEAMさん、スポンサーさん、ファンの皆さんのおかげで獲れたチャンピオンだと思っています。自分ひとりだけではこの場に来ることはできなかったと思いますし、チャンピオントロフィーを掲げて表彰台に立つことはできなかったと思います」とチャンピオン獲得に対し、周囲への感謝を伝えた。
「チャンピオントロフィーは実際にも重いのですが、多くの人たちの思いが詰まった重さだと感じています。たくさんの支えてくださった皆さんに『ありがとうございます』と言いたいです」
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