2019年3月にアメリカで試乗会がおこなわれた「X7」は、全長が5150mm、ホイールベースも3100mmと堂々たるサイズが特徴だ。くわえてパワフルなエンジンと、迫力満載の大きなフロントグリルを持つBMWのSUVのトップモデルである。デビューは2018年秋のロサンジェルス自動車ショーだった。
アメリカで乗った試乗車は「X7 xDrive 40i」。最高出力250kW(340ps)、最大トルク450Nmを発揮する3.0リッター直列6気筒ターボエンジンを搭載する。日本へも導入が予定されているモデルだ。
試乗コースは、ユニークだった。メキシコとの国境があるテキサス州エルパソを起点に、ニューメキシコ州を通り、アリゾナ州フェニックスまでの約800kmである。朝、エルパソ市内のホテルを出発し、アメリカの西部をえんえんと走り続けた。
「長い距離を走ってもらうのには、ちゃんとした理由があります」と、ドイツからやってきていたBMWの開発担当者が話す。続けて、「X7は(新型)X5と並行して開発してきました。両モデルは、ロングツーリングでの快適性をとくに重視しているからです」と、述べた。
日本でも2019年2月から販売されている新型「X5」は、ホイールベースが2975mmで、全長は4935mmである。X5とX7の関係はセダンの5シリーズと7シリーズのようなものだろう。より上級モデルを求める顧客層(X5以上)は存在するし、大型高級SUV市場の競争は熾烈になっている背景もあり、X7が投入された。
X7のシートは、メルセデス・ベンツ「GLS」などとおなじく3列だ。2列目は3人がけのベンチタイプか、2人がけのコンフォートシートかのいずれかを選べる(日本仕様は未定)。X7のライバルとして、アメリカではキャデラック・エスカレードなどが挙げられるという。
試乗した印象では、エスカレードとぶつかるのはパッケージングぐらい。ハンドリングなどはBMWそのものだった。標準装備であるエアサスペンションの設定もうまく、ステアリングホイールを切り込んだときの車体の動きのよさは、BMWのイメージを裏切らない。
なによりいいのは、3.0リッター直列6気筒ターボエンジンだ。かなりの大きさの車体にもかかわらず、アクセルペダルの反応はするどい。静止状態から100km/hまで6.1秒というメーカー発表値も納得である。体感的な加速性も上々だし、上まで回転をあげていくとき、それとともにトルクが高まっていく感覚もすばらしい。ブレーキのフィールと、効きのよさにも感嘆した。
家族のためにこのクルマを選んだとしても、結果的にはその選択を正解だと思うはずだ。BMWがSUV(スポーツユーティリティビークル)でなく「SAV(スポーツアクティビティビークル)」という言葉を好んで使うだけある。
いっぽうで乗り心地は、さきに紹介した開発者の言葉どおり、快適そのものだった。2.3トンのボディはいわゆるバネ上荷重の重さゆえ、どっしりしたフィールを感じさせてくれる。X7ならではだ。アメリカ車とは一線を画したしっかりした動きで、まさに7シリーズのSUV版にふさわしい完成度だった。
なおエアサスペンションは自動車高調節機能を備える。BMWの説明によると(高級SUVなので)エアを調節するコンプレッサーの作動音にまで気を遣ったそうだ。
運転支援機能も充実しているからロングドライブは快適だった。ACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は設定も容易だし、速度コントロールも適切なので、長距離を走るときは嬉しい装備である。LKA(レーン・キーピング・アシスト)も長距離を行く時にはありがたい。
コクピットはユニークだった。クオリティの高いレザーやウッド、クロームがたっぷり使われている。基本的な造形デザインは、新型3シリーズなどとおなじであるが、X7は、ダッシュボードとサイドウィンドウのベルトラインが低く感じられる。サイドウィンドウのベルトラインは腰の少し上であるが、これはまさにクロスカントリー型4WDのデザインだ。できるだけ路面状況が把握しやすくなるよう考えられている。
今回のアメリカ西部のドライブでは、予定していた山間部が予想外の積雪により、悪路には行けなかったため、4WD(全輪駆動システム)の実力のほどはわからなかった。
「悪路にいくドライバーは0.1パーセントでしょうか(笑)。とはいえ、悪路での走破性は高いです。あらゆる険しい道を走れないと、胸を張って“SAVのトップモデル”とは言えません」と、BMWの担当者は述べた。
日本へは、2019年の夏ごろ導入の予定という。新世代の大型グリル(そういえば7シリーズもマイナーチェンジで大型グリルになった)を装着したBMWのSAVフラッグシップだけに価格は安くないはずだ。日本の道ではいかに? 今から大いに気になるのであった。
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