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ラダーフレームにBMWエンジン イネオス・グレナディアへ試乗 目標は最高のオフローダー 後編

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ラダーフレームにBMWエンジン イネオス・グレナディアへ試乗 目標は最高のオフローダー 後編

気になるワイパーの吹き残しと操舵感

最高のオフローダーが目指された、イネオス・グレナディア。右ハンドル仕様ではオフセットしたペダルレイアウト以上に、見逃せない部分を見つけた。

【画像】ラダーフレームにBMWエンジン イネオス・グレナディア 現行ディフェンダーと競合モデル 全138枚

左ハンドル仕様とワイパーの回転の向きが同じで、フロントガラスの右端に拭き残しのエリアが大きく生まれてしまうのだ。Aピラーも太く、悪天候時は特に、右斜め前方の視界が制限されるだろう。

視認性は安全性に直結するため、価格を抜きにして改善するべきだと思う。変換コストも、そこまで高額にはならないのではないだろうか。歩行者や自転車用に、優しくクラクションを鳴らす機能も備えるなど、細部まで気は配られているのだが。

素晴らしい中に惜しい欠点が含まれるような印象は、実際の走りにも続く。とりわけ、Gクラスやディフェンダーを運転したことのないドライバーは、グレナディアの操舵感へ戸惑うに違いない。

本格的なオフローダーとして、グレナディアは肉厚なオールテレーン・タイヤを履く。そこにクラシカルなボールナット式のステアリングラックが組み合わさリ、スローなレシオと相まって、ステアリングホイールの操作が絶え間なく求められる。

直進状態でも、滑らかな路面でも、腕を動かし続ける必要がある。ロックトゥロックは3.85回転。セルフセンタリング性も弱い。少なくとも慣れるまでの数kmは、グレナディアが進む向きへ集中しなければならない。

オフロードでの操舵感や、回す軽さを求めた設定の代償とはいえる。それでも、もう少し落ち着いていて欲しい。パワーステアリングは油圧式だ。

静かな車内 BMW由来の好印象なエンジン

サスペンションはしなやかにストロークし、アスファルトが剥がれた穴を滑らかに吸収してくれる。グリップ力は充分で、ボディロールは控えめ。カーブへの侵入速度が速すぎた場合は、穏やかなアンダーステアで教えてくれる。

とはいえ、車重が2.8tもあるラダーフレームのオフローダーだから、動的なバランスが高いわけではない。カーブの続く一般道をハイペースで走らせることは、ちょっとした挑戦といえる。ある程度の充足感は得られるけれど。

グレナディアで洗練されていると感じるのは、車内の静けさ。四角いボディ形状にも関わらず、高速道路の速度域でも風切り音は殆ど聞こえてこなかった。うっすら、ZF社製の8速オートマティックやトランスファーの唸りが響く程度だ。

エンジンはBMW由来の3.0L直列6気筒ターボで、試乗した最大トルク56.0kg-mのディーゼルの他に、45.8kg-mのガソリンも選べる。とても滑らかに回転し、上質な印象を与えてくれる。

回転域を問わず、どちらもパワーにはゆとりがあり、スムーズに余裕の加速を引き出せる。太いトルクを生み出すディーゼルの方が扱いやすく、燃費は7.8km/Lと比較すれば勝る。ガソリンは5.3km/Lへ落ちるが、質感としてはより魅力的ではある。

速度域の低いオフロードでは無敵

肝心のオフロード性能だが、今回の条件では限界まで突き詰められなかったものの、決して低くはないだろう。デフロック機能がうまく働かないというトラブルに見舞われたが、ぬかるんだ急斜面を登り切ることはできていた。

指定された壮大なコースを、グレナディアは難なく走りきっている。1番大変だったことといえば、ローレンジのセレクターレバーがかなり重たかったこと程度だ。

筆者とは別の日に、同僚が氷と雪に覆われた急斜面へ挑んでいるが、信じられないほどの走破性だったらしい。「速度域の低いオフロードでは無敵」。だとすら話していた。

ちなみに、グレナディアの開発テストでは、メルセデス・ベンツGクラスを超える耐久性を求めて、アルプス山脈の過酷なシェックル峠を何度も走り込んでいる。相対的な評価には実際の比較が必要とはいえ、互角の能力を備えていると考えて良さそうだ。

当初は初代ランドローバー・ディフェンダーのコピーのような存在だったかもしれない。だが、グレナディアの仕上がりは他に類を見ないものだといえる。

ほぼ果たされたイネオスの目標

第一線のサプライヤーによる協力と、経験豊富なマグナ・シュタイア社の技術が投じられた、イネオス・オートモーティブ初の量産モデル、グレナディア。個性的で圧倒的なオフローダーを開発するという目標は、ほぼ果たされたといえそうだ。

いくつかの弱点がなければ、圧倒されるほどの訴求力を持つ1台に仕上がったであろうことは想像できる。見事な内容ではあるものの、特に右ハンドル仕様には不完全さも含まれていることが惜しい。

確かに、初代ディフェンダーの枠を超えてはいないかもしれない。だが、グレナディアはライバルに伍する選択肢として充分に値する。長いとはいえない開発期間を考えれば、驚くほどの成果といえるかもしれない。

イネオス・グレナディア・ステーションワゴン 3.0TD トレイルマスター・エディション(英国仕様)のスペック

英国価格:6万9000ポンド(約1104万円)
全長:4856mm
全幅:1930mm
全高:2036mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:9.9秒
燃費:7.8km/L
CO2排出量:276-319g/km
車両重量:2811kg
パワートレイン:直列6気筒2993ccターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:248ps/3250rpm
最大トルク:56.0kg-m/1250rpm
ギアボックス:8速オートマティック+2速トランスファー

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