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なぜ冬場に脱輪事故が増加? 大型車の9割で「左後輪」が外れる理由

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なぜ冬場に脱輪事故が増加? 大型車の9割で「左後輪」が外れる理由

■年々増える脱輪事故、発生しやすい場所と地域、部位があった?

 2020年2月、長野県でトラックのタイヤが脱輪した事故があり、ドライブレコーダーの映像がニュースなどで拡散されました。幸いにもタイヤが衝突したクルマの運転手にケガはなかったようですが、映像を見ているだけでも恐ろしい事故です。

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 冬シーズンになると大型車の脱輪事故が増加してしまうのでしょうか。また、いざという時の対処法はあるのでしょうか。

 大型車による脱輪事故は毎年のように発生しており、死亡事故に繋がってしまったケースもあります。
 
 2002年1月には、大型トレーラーから外れたタイヤが母子3人が乗る乗用車に直撃し死傷事故が起こっています。

 さらに2008年4月には、高速道路を走行中のトラックから外れたタイヤが対向車線の大型観光バスに直撃しバスの運転手が死亡、乗客が7人負傷するといった事故まで発生しているのです。

 国土交通省によると、大型車の脱輪事故は2015年から毎年10件以上増え続けています。2018年度の車輪脱落事故は、81件(うち人身事故3件)発生しており、これは過去15年間で2番目です。

 2018年度では、全81件のうち「11月から2月」で54件(66.6%)が発生しており、冬期に集中しているほか、北海道や東北の積雪地域で46件(56.8%)と、冬場の積雪地域で多く発生していることがわかります。

 その理由として、タイヤの交換作業時に適正なトルクでボルトやナットが締め付けられていほか、1度装備したタイヤを慣らし運転後にもう1度締めなおす「増し締め」が不十分であることが、脱輪へ繋がる要因とされています。

 加えて、脱輪が起こるのは初度登録年から4年から6年経過した車両がもっとも多く、38.9%(95件)を占めているとのことです。

 国土交通省は、その原因を「積雪地域で使用される車両は、ボルト、ホイール、ハブの錆の進行が早く、また、その確認が不十分のままタイヤ交換がおこなわれている可能性が考えられる」と説明しています。

 雪国で使われる凍結防止剤は、塩分を含むことから塩害の原因として知られています。そのため、交換時の人的ミスに加えて、錆による部品の劣化も関係しているようです。

 また、外れやすい位置も存在します。国交省のデータでは、車輪が脱落したのは全81件のうち「左後輪」が74件であり、割合はなんと91%となっています。

 大型車などの脱輪に対する今後の対策について、国土交通省は次のように説明しています。

「2018年度は、新たに緊急対策を実施するなどの取り組みを積極的におこないました。依然として不適切なタイヤ交換作業、交換後の保守管理の不備がおもな要因となっています。

 そのため、『大型車の車輪脱落事故防止対策に係る連絡会』において、2017年度に取り組んできた緊急対策に、2018年度の事故発生の傾向対策を追加した『令和元年度 緊急対策』をまとめたため、大型車ユーザーなどの関係者に対し、その徹底を図ってまいります。

 また、実態に即した広報啓発方法や点検整備方法などを検討するワーキングループを今後設置し、さらに効果的な事故防止対策を追加的に策定し取り組むこととしております」

※ ※ ※

 前述の「令和元年度 緊急対策」では、おもに大型車の運行計画や「ホイール・ナットの規定トルクでの確実な締め付け」、「タイヤ交換後、50kmから100km走行後の増締めの実施」、「日常(運行前)点検における確認」、「ホイールに適合したボルト及びナットの使用」などのポイントを周知。

 また、著しく錆びたホイール・ボルト、ナット、ディスクホイールでは、適正な締付力が得られないため、点検・清掃をおこなっても錆が著しいディスクホイール、スムーズに回らないボルト、ナットは使用せず、交換するよう呼びかけています。

■人的ミスだけじゃない? 道路環境や世界ルールも脱輪の要因?

 一般的には、タイヤ交換時の人的ミスが脱輪のおもな要因とされていますが、タイヤ自体に掛かる負荷も大きく影響しているとされています。

 日本の左車線通行においては、右折時は比較的スピードが出た状態で大周りをすることが多いとされ、遠心力によって左側に負荷がかかりやすくなります。

 さらに、左折時は小回りに旋回しなくてはいけないため、左後輪がねじれた状態になってしまうため大きな力が働いてしまいます。

 また、道路は水はけを良くするため、センターライン部分から路肩に掛けて、人が認識できない程の傾斜があるために、重量がある大型車では左側に荷重がかかりやすくなります。

 とくに、後輪は前輪と違いドライバーが違和感を持ちにくいため、脱輪するまで気付かなかったといったケースも多いようです。

 ボルトやナットが緩んでしまう原因には、締付け方式の規格が変わったことも関係しているといわれています。東北地域の車両整備スタッフは以下のように話します。

「従来のJIS方式では『右側のタイヤは右ネジでの締め付け』『左側のタイヤは左ネジでの締め付け』となっているため、タイヤが前進すると同時にナットも締め付けられる仕組みとなっていました。

 しかし、新たに採用された世界基準のISO方式では、『左右どちらのタイヤも右ネジ』となっています。これは一般的なクルマと同じ構造ですが、重量がある大型車ではこの些細な違いがナットの緩む引き金になっているのと思われます」

※ ※ ※

 外れたタイヤは軌道の予測が難しいだけでなく、いきなりバウンドをしてフロントガラスに突っ込んでくることも考えられます。被害を最小限に抑えるにはいかに減速して衝突時のダメージを和らげるかがポイントです。

 過去に大型トラックの脱輪事故を担当した警察官は、以下のように話します。

「幸いにも、周辺にクルマはいなかったので、大きな事故にはなりませんでした。しかし、交通量の多い道路であれば、大事故になっていたと思います。

 正直、突然猛スピードで転がってくるタイヤに対し、適切な回避行動を取ることは難しいです。仮に避けることができても、二次的な事故を引き起こしかねません。トラックやバスのドライバーは、くれぐれも整備不良のまま走行しないように注意してください」

※ ※ ※

 大型車を運転するドライバーは、作業時の確認と日常点検、これらを徹底的におこなうことで事故を未然に防げる確率が高くなります。

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