アナログミラーでは気にならない情報もハッキリ視認可能
ルームミラーをカメラ画像で見せる装備は、軽自動車にも採用されるなど、急速な普及が進んでいる。一方、ドアミラーに替わるサイドミラーのカメラ画像化は、レクサスESに初採用されたあと、ホンダeや、アウディe-tronに採用例があるほかは、まだそれほど採用車種がない。
一度経験すると付いていないクルマに乗れなくなるほど便利な装備11選
ルームミラーにしてもサイドミラーにしても、カメラの画像とすることにより、後方の物がより鮮明、かつ的確に認識できる利点がある。夜間や降雨などの影響を受けにくいのも利点だ。一方で、レクサスESで経験したときから、よく見えることが必ずしも最良ではないという感触もある。
鏡の虚像で後方確認する場合、物の大小で遠近を知ることはもちろんだが、小さく映るものは当面差し迫った注意を払う必要が必ずしもなく、何かがいるという認識ができ、記憶に留めておけばいい。ところが、カメラ画像の場合は、小さなものでもハッキリ映るので、当面は注意を払わなくていいと頭ですぐに判断できず、画面に映っているあらゆるものに注意が行ってしまい神経を疲れさせるとともに、必要な情報の優先順位を瞬時に判断しにくい場合がある。
あるいは、対向車とすれ違ったとき、走り去る対向車の後ろ姿が突然カメラ画像に映るため、しかもすれ違ってすぐは大きなものとして映るので、すぐ注意を払うべきものが急に現れたと思ってしまう。しかし対向車の後ろ姿は、もう注意を払う必要のない物体だ。
そのように、安全にクルマを運転するうえで、注意を払うべき必要性の重要度の順位を瞬時に判断しにくいのが、カメラ画像である。
また、レクサスESやホンダeの場合は、ダッシュボード上にモニターが設置され、運転者の前方視界に右側のサイドミラー用の画像が目に入るため、情報過多となって鬱陶しい。一方、アウディe-tronはサイドミラーのカメラ画像をドア内側に設置したモニターで見る。画像を確認する際には、レクサスESやホンダeに比べ首を少し余計に右へ動かす必要があるが、前方を見て運転している際には視界に入ってこないので、鬱陶しくない。
視認性のしやすさなどは今後の進化に期待
かつて、スウェーデンのサーブが、ブラックメーターというものを採用したことがある。これは、運転者にとって必要最小限の情報のみをメーターに表示する仕組みで、もちろん、燃料計や警告灯など必要に応じて表示することは可能だが、運転中に余計な情報で気が散らないようにと考えた仕組みだ。
現代では、メーターのほかにカーナビゲーションを見るなど情報を確認する表示が多くなっているうえ、スイッチを廃してタッチパネルやコントローラーでの操作になるなど、運転中に注意を払うべきことが昔より多くなっている。そこにサイドミラーの画像までがつねに視界に入ってきたのでは、運転に集中しにくく、逆に不必要なものまで映し出されると、いっそう注意が散漫になって運転操作を誤る恐れもある。
使っているうちに慣れるかもしれない。しかし、慣れ過ぎて無視するようになり、逆に見落としを起こしても意味を失う。
アウディe-tronは、速度無制限区間のあるアウトバーンでの走行も視野に、超高速で運転する際には必要最低限の情報の提供に留めるべきだと考え、ドアの内側にモニターを設置したのではないか。なおかつ、それによって、サイドウインドウから外の様子も視野に入り、クルマの真横の様子をじかに目で確認することもできる。それに対し、ダッシュボード上に画面を設ける方式では、画像だけに意識が集中し、窓の外の現実の景色にまで意識が行きにくいのではないか。
まだ良し悪しを判定する段階ではないだろう。逆に、採用例があることで以上のような課題も見えてくるのである。
鏡の虚像を見るのではなく、画面の画像を見るカメラの場合は、とくに老眼になってくると焦点を合わせにくくなる。あるいは焦点が合うまでに時間が掛かる。したがって、顔の近くにあるルームミラーについても、高齢者になると見づらくなる。後席に人が乗っていたり、荷室に荷物を満載したりした際に、後方の安全確認をするにはよいだろうが、走行中の通常の後方確認には役立ちにくい側面もあるのである。
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ミラーなど壊れたら困るものは従来の鏡で十分