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ダイハツ トヨタ ブーン/パッソ試乗レポート ダイハツ主導のAセグメントカーはボディもしっかりでコスパに優れたパッケージ

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ダイハツ トヨタ ブーン/パッソ試乗レポート ダイハツ主導のAセグメントカーはボディもしっかりでコスパに優れたパッケージ

6年振りのモデルチェンジを受け3代目となる、ダイハツ ブーン、トヨタ パッソが2014年4月中旬に登場した。このブーン/パッソは、以前からトヨタ、ダイハツの共同開発モデルで、トヨタがデザイン、商品企画、ダイハツが開発、製造を担当してきたが、この3代目からはダイハツがすべて担当し、トヨタのパッソは車名、バッジが違うだけとなっている。
<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>

トヨタがダイハツを100%子会社とすることに両社で合意したことを発表したのが2016年1月29日で、子会社とする手続きが完了するのは8月といわれている。このブーン/パッソはこうした経営的な動きより前に開発は行なわれていた。そのため特に開発体制が以前とは変わったということではなく、たまたま開発の役割分担がダイハツの100%になったと考えてもいいだろう。しかし我々メディアは初のトヨタ、ダイハツ合同試乗会を経験することになり、ダイハツの子会社化をいち早く実感することになった。

ブーン/パッソは今回から同一モデルになったのでデザイン上の違いはなく、エクステリアだけでなくインテリアも共通だ。また今回のモデルから、軽自動車で採用されているような標準モデルとカスタムモデルという2シリーズのラインアップになり、パッソは、標準モデルと「モーダ(MODA)」シリーズ、ブーンは標準モデルと「シルク(CILQ)」シリーズというラインアップとなっている。

ブーン/パッソは1.0Lエンジンを搭載するコンパクト・ハッチバック、いわゆるAセグメントとなるが、日本市場では従来からイマイチ存在感が薄い。その理由は軽自動車が圧倒的な存在感がありマーケットとしても強大で、その軽自動車に押されまくっているのが実情だ。

またブーン/パッソの一つ上にはBセグメントのハイブリッド・モデルがあり、こちらの販売台数も乗用車全体のトップに位置しており、Aセグメントはまさに隙間の存在となっているのが実情だからだ。

今回登場したニューモデル、ブーン/パッソは、軽自動車の開発技術をフルに活用し、ハイブリッド車に迫る、ガソリン車トップの燃費と、軽自動車に勝るとも劣らない室内の広さを実感できるパッケージ、そして軽自動車を上回る走り、曲がる、止まるという基本性能の実現を目指している。開発の発想は、軽自動車をベースに様々な性能をアップグレードするということだ。これはトヨタではできない発想、技と言える。

■試乗レポート
試乗したのは、パッソが「X Gパッケージ」、ブーンは「シルク Gパッケージ SAII」で、ともにボディカラーは同じマゼンタベリーマイカ・メタリック(ブーンはファイアクォーツレッド・メタリックと呼ぶ)。

標準モデルと「MODA」、「シルク」を比べると後者の方がより上質感を強めており、上級グレードという位置付けだ。インテリアで比べると、標準モデルはビジネスカー的なイメージが強い。上質感というより、もっと明るいデザインの方がこのクラスには似合うのではないだろうか? シルク、モーダはエアコン吹き出し口などが「マゼンタ」のカラーパーツとなり、シートは標準モデルではモノトーンだが、マゼンタのカラーをアクセントにしている。しかしこれももう少しデザイン的な工夫が欲しいと感じた。

インテリアは、フロントシートがセミ・ベンチシートで、座り心地はかなりレベルが高いが、ドライバー席だけはもう少し、尻の落ち着きと左右方向のサポートを強めた方が体の安定はすると思う。ただ、このカテゴリーのクルマを選ぶユーザー層は、体のサポート感を嫌うのかもしれないが。

リヤシートの居住スペースは従来型より拡大され、十分な広さがある。ホイールベースを延長したことが生かされているのだ。そのためもあって、室内の広さ感は、ひとつ上のBセグメントに近く、日常の移動ツールとして不満は出ないだろう。

ブーン/パッソが搭載するエンジンは、996ccの1KR-FE型3気筒エンジンで、アトキンソンサイクル、独立吸気ポート+デュアルインジェクターとするなど更なる改良を加え、最高出力69ps、最大トルク92Nmとしている。パワー、トルクは従来モデルとまったく変わりはないが、燃費を大幅に向上させている。

またCVTの制御は、従来は燃費重視のチューニングをしていたが、今回は街乗りでの扱いやすさを高め、常用域では滑り感を抑え、出足がよく、アクセルの踏み込みに対してリニアな加速フィーリングとしている。

つまり市街地などでアクセルペダルの1/3程度までの踏み込みでの加速は、加速遅れ、滑り感のあるCVT特有のフィーリングが抑えられ、自然な加速感となっている。もちろん急加速のような場面でアクセルを大きく踏み込むとCVTフィーリングになるが。

クルマの重量が約950kgで、エンジン出力は69ps/92Nmなので、市街地で交通の流れに乗って走る分には十分だが、軽自動車を上回る高速走行での余裕を考えるとトルクがもうちょっと欲しい気がした。ちなみに軽自動車のムーヴ・ターボは64ps/92Nm、875ccのフィアット500は85ps/145Nm(2気筒ターボ)だ。ブーン/パッソはやはり28.0km/Lという燃費を最重視したということだろう。

乗り心地は、かなりレベルアップしている。今回は市街地でのフラットな乗り心地を重視したというが、確かに荒れた路面やコーナリングでも落ち着いたフラットな乗り心地で、後席に乗っている人がピッチングで体が縦方向に揺すられることもない。また微振動、騒音のレベルも予想以上に抑えられており、室内の居住性はよいと言える。

また、走行中のボディ全体の剛性感も好ましい。軽自動車はもちろん、一つ上のクラスのBセグメントのクルマでもなかなかこうした剛性感は味わえない。がっちりとしたフィーリングは、安心感、安定感に繋がるのだ。

ステアリング系の取り付け剛性も、従来型より大幅に向上しているとのことで、頼りなさはまったくないが、課題としては操舵フィーリング、特にちょっとステアリングを切った時の手応え、路面インフォメーションが希薄なことだ。これらがもう少しはっきり伝わってくると、安心感はもっと高まるはずだ。ステアリングのギヤ比自体はスローだが、最小半径は4.6mで、市街地での取り回し、扱いやすさは優れている。

燃費、走り、取り回しや使い勝手のよさと、軽自動車に対抗できる価格帯を実現していることがブーン/パッソの価値で、コストパフォーマンスが高く、日常の生活の道具としては過不足ない仕上がりだと感じられた。


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