スズキ ハスラーに続け! 軽SUVの新星、ダイハツ 新型タフトの狙いは「割り切り」と「シンプルさ」にあり!?
ダイハツの新型軽SUV、タフトは発売1か月後の7月10日時点で月販目標台数の4.5倍にあたる約1万8000台の受注を記録するなど好調なスタートを切った。
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近年、軽自動車の高価格化が進むなかで、入口価格135万円という安さでも注目を集めているが、果たしてこの価格でも魅力あるSUVに仕上がっているのか? さっそく公道で走らせた。本稿では、その安さの秘密にも迫っていきたい。
文:渡辺陽一郎
写真:池之平昌信
【画像ギャラリー】都会にも似合う!? 公道で見る新型タフトのスタイルと走り
軽SUVの新星! 新型タフトの「狙い」と「割り切り」
写真は新型タフト 最上級モデル「Gターボ」のメッキパック装着車。フロントにメッキ加飾が施され、TAFTの文字が躍る
今は新車の40%近くを軽自動車が占めており、SUVも約15%に達する。この市場動向を視野に入れて開発されたのがタフトだ。
全高を1630mmに設定した少し背の高い軽自動車で、外観は直線基調のSUV風になる。最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は190mmを確保したから、悪路のデコボコも乗り越えやすい。
ハスラーとは対照的に、直線的なイメージのタフト。開発者は「キャストアクティバに対してSUV感を強めた」と狙いを説明
タントなどと同じDNGAの考え方に基づくプラットフォームの採用で車内は広い。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る乗員の膝先空間は、握りコブシ2つ少々になる。
後席は床面形状を簡素化して、床と座面の間隔を充分に取ったが、座り心地は悪い。乗員と座面の接する奥行寸法が短く、なおかつ座り心地も硬めになるからだ。大腿部付近に違和感が生じる。また後席にはスライドもなく、背もたれが単純に前側へ倒れるだけだ。
この点を開発者に尋ねると「タフトの車内後部は、アウトドアで使う荷物を運ぶ空間」だという。
そのためにGとGターボでは、前席内側のドアハンドルがメッキされるのに、後席は黒の樹脂製だ。内装色も前席はブラック、後席はグレーに塗り分けた。カタログを見ても、後席に同乗者が座る写真はなく、どれも背もたれを倒したりして荷物を積んでいる。
新型タフトは割り切りと引き換えに装備充実
新型タフトのリアシート。スライド機構はなく、シートバックのみ5:5の分割可倒式となっている
ちなみにダイハツには、後席がスライドして、ミニバンのようなスライドドアも備えるタントとムーヴキャンバスが用意される。子育て世代など、後席を使うユーザーには、この2車種を推奨している。
従ってタフトのターゲットは、独身を含む若年層と、子育てを終えた中高年齢層だ。
後部が荷室と割り切るなら、荷物の収納性は大切だ。荷室の床とリアゲート開口部の下端を低く抑えて、重い荷物の収納性を向上させたい。荷室の床が低ければ、全高の割に背の高い荷物も積みやすくなる。
リアシートを倒した荷室。スライド機構を廃した恩恵として、座面の厚みと荷室のフラット化を両立できたという
ところがタフトのリアゲート開口部の下端は、地上高が720mmに達する。N-BOXの470mm、タントの580mmに比べて高い。ハスラーの710mmと同等だが、重くて背の高い荷物の積載に適した車種ではない。後部を荷室と割り切りながら、その機能はいまひとつで中途半端だ。
タフトの内装は、全高が1600mmを超える軽自動車ではシンプルだ。ハスラーのようなマイルドハイブリッドも採用されず、アイドリングストップ後の再始動音も相応に響く。その代わり装備を充実させた。
真骨頂のスカイフィールトップに格安の秘密あり!
真骨頂のスカイフィールトップは運転中も開放感抜群。モノレールを見上げながらお台場の街をゆく
装備で最も注目されるのは、全車に標準装着されるガラスルーフのスカイフィールトップだ。開閉はできないが、サンシェードを開くと開放感が得られる。「毎日を楽しくしてくれる」というタフトのコンセプトに基づく象徴的な装備だから、全車に標準装着した。
また、全車に標準装着すれば、2種類のボディを用意する必要はなく、開発費用を含めてコストダウンしやすい。スカイフィールトップをオプションに換算すると、一般的には6~8万円に相当する。
車両価格の最も安い2WD・Xは135万3000円だが、スカイフィールトップ、LEDヘッドランプ、電動パーキングブレーキなどを標準装着した。
一般的にこの価格帯の背の高い軽自動車では、ヘッドランプはハロゲンで、パーキングブレーキは足踏み式が多い。タフトはシートアレンジなどを簡素にする半面、快適装備を分かりやすく充実させた。
中級グレードの2WD・Gは、Xに比べて13万2000円高い148万5000円だが、アダプティブドライビングビーム(ハイビーム状態を保ちながら対向車や先行車の眩惑を抑える機能/eKクロススペースは同様の装備を7万7000円でオプション設定)、アルミホイール、ルーフレールなど、総額22万円相当の価値を加えた。
最上級の2WD・Gターボは、Gに比べて12万1000円高い160万6000円だが、運転支援機能の全車速追従型クルーズコントロール、車線の中央を走れるようにパワーステアリングを制御する機能(Gのオプション価格は4万4000円)も加わる。この金額を差し引くと価格上昇は7万7000円だ。
しかも、ターボのCVT(無段変速AT)は、変速比の大きな4軸タイプのD-CVTだから、2WDのWLTCモード燃費は20.2km/Lになる。
ノーマルエンジンは一般的な3軸のCVTで20.5km/Lだから、ターボは動力性能を向上させながら、燃費数値はほとんど悪化させていない。そうなるとターボの正味価格は6万円程度だ。このようにタフトの場合、上級グレードになるほど価格が割安になる。
スクエアな見た目を象徴する新型タフトの「乗り味」
写真はNAエンジンの「G」。プレーンなフロントマスクも好印象で、軽のノンターボながら実用上充分なトルクをみせる
次は走行性能を確認したい。まずノーマルエンジン車を発進させると「ヒューン」という甲高いノイズが聞こえた。加減速を繰り返す状況では少々耳障りに感じる。
ノーマルエンジンの最大トルクは6.1kgmにとどまるが、実用域の3600回転で発生するため、パワフルではないが扱いやすい。
発進してアクセルペダルを軽く踏んだ1600回転付近でも、相応の駆動力が発生する。登坂路でアクセルペダルを深く踏むと、ノイズは高まるが、4000回転を超えた時の吹き上がりも良い。
アイドリングストップは、停車中に運転姿勢を変えたりしてブレーキペダルを踏み増しても(緩めるのではなく)エンジンが再始動する。従って停車中もブレーキペダルの踏み方を一定に保つ必要がある。このタイプのアイドリングストップは最近では珍しい。
力に余裕があるのはやはりGターボ。D-CVTの採用と相まって、カタログ燃費もNAエンジン車とほぼ変わらない
ターボは最大トルクが10.2kgm(3600回転)で、ノーマルエンジンの1.7倍だから、動力性能も大幅に向上する。1500回転以下では駆動力が下がるが、この領域はほとんど使わない。
常用域の2000~2500回転で走行中に、アクセルペダルを緩く踏み増すと、若干の時間差を置いて駆動力が高まった。ややターボのクセを感じるが、実用回転域の駆動力に余裕があるから運転はしやすい。
タフトは最低地上高が190mmだから、重心高も気になるが、全高は1630mmとあって極端に高くはない。カーブを曲がる時は、ボディが相応に傾くものの、唐突に振られる印象はない。挙動の変化も穏やかで安心できる。
峠道を走る時も、カーブの外側に位置する前輪が踏ん張り、旋回軌跡を拡大させにくい。SUV感覚の軽自動車らしく、全高が1600mmを超えるものの、少しアクティブな運転感覚に仕上げた。
サスペンションの設定は、前輪駆動の2WDと4WDでは異なるが、ノーマルエンジンとターボの区別はない。タイヤも全車共通で、サイズは15インチ(165/65R15)。試乗車の銘柄はヨコハマ・ブルーアースAE30であった。
指定空気圧は前後輪とも240kPaで、転がり抵抗を抑えて燃費数値を向上させるため、高めの設定にしている。そのために乗り心地は少し硬い。40km/h以下で街中を走ると、路上の細かなデコボコを伝えやすい。大きめの段差を通過した時の突き上げ感は抑えたから、不快感は強まらない。
わかりやすい新型タフトの長短
角ばったデザインの印象と同じく機敏な走りを見せる新型タフト。ストロングポイントのわかりやすさで、ハスラーとの差別化も明確だ
以上のようにタフトは、長所と短所が分かりやすい。
長所はスカイフィールトップなどの装備を充実させながら、価格を割安に抑えたことだ。衝突被害軽減ブレーキは、カメラセンサーを刷新して、夜間の歩行者検知機能も高めた。
電動パーキングブレーキも採用され、全車速追従型クルーズコントロールが追従停車した後、止まっている時間が長引いた時にはパーキングブレーキを自動作動させる。最低地上高は190mmだから、少々深い雪道も走りやすい。
その半面、後席の座り心地に不満があり、荷室のアレンジは簡素だ。スライド機能も付かず、子育て世代向けではない。これらの特徴を考慮した上で選びたい。
なお、納期は約2か月だ。外観デザインが人気を高めたこともあり、軽自動車では少し長い。またGターボ、サンドベージュとフォレストカーキの外装色は、受注が予想以上に多く約3か月を要する。購入するなら早めに商談を開始した方が良いだろう。
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