5月11日(土)にベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで決勝レースが行われたWEC世界耐久選手権第3戦。長い赤旗中断後の異例の“延長戦”を制したのは、プライベートチームのハーツ・チーム・JOTAが走らせる12号車ポルシェ963だった。
カラム・アイロットとともにこのクルマをドライブしたウィル・スティーブンスは、JOTAが昨季2023年のスパ6時間レースでハイパーカー・デビューを果たしてからちょうど1年後にWECの総合優勝を飾ったことについて、「自分たちがここまで来られたことに驚いた」と語った。
大事故&赤旗の原因となったキャデラックに、次戦ル・マンでグリッド降格ペナルティ/WECスパ
スティーブンスとアイロットは、土曜日に行われたシーズン3回目のラウンドで、ワークスカーを走らせるポルシェ・ペンスキー・モータースポーツを破り、今季からJOTAの2台目として追加エントリーされている12号車ポルシェ963を総合優勝に導いた。
このレースは、2号車キャデラックVシリーズ.Rのアール・バンバーと31号車BMW GT3ドライバーのショーン・ゲラエルが絡む大クラッシュのため2時間近く続いた赤旗中断の後、本来のレース終了時刻を過ぎてから中断していた分の時間を巻き戻して再スタートが切られることとなった。
この結果はサム・ヒグネット率いるチームにとって大きなマイルストーンとなり、2021年にハイパーカーカテゴリーが導入されて以来、JOTAはカスタマーに供給されたハイパーカーで総合優勝を達成した最初のプライベートチームとなった。
注目すべきは、JOTAがLMP2カテゴリーで何年も成功を収めた後、WECでトップクラスデビューを果たしたちょうど1年後に勝利を収めたことだ。興奮冷めやまぬなかでもスティーブンはそのことを忘れなかった。
「週末のスタート地点で、1年前の自分たちの状況を振り返ることになるなんて思ってもみなかった」とレース後に語ったスティーブンス。
「チームとしてここまで来たこと、どこまで成長できたか、どれだけのことを学んだか、そして1年後に今日のような結果を出せたことは、チーム全員の(努力の)証だと思う」
「チームのメンバーひとりひとりの仕事の量は信じられないほど多く、彼らほどこの賞にふさわしいチームはない。彼らはとてもハードに働いているし、このような結果を残せたことを誇りに思う」
「今週末はすべてのパートナーから全員がチームに参加している。たまたま全員が戻ってきて、全員がチームと一緒にいて、(プログラムの)スタートからこの場の一員であることを誇りに思う特別な週末になったよ」
「僕たちはこの結果をずっと待ち望んでいた。パーフェクトなレースをするときは、いつも先頭に立っているべきだと言ってきたが、今日はそれができたと思う」
「多少の運もあったが、このゲームでは自分で運を作り出さなければならないと信じているし、今日はそれができた。それを手に入れたら、その場にいてピースを拾う必要があるんだ」
■突然の勝機到来に動揺
バンバーとゲラエルがケメル・ストレートで激しくクラッシュしてレースが中断される直前、アイロットがピットインした数少ないドライバーのひとりだったことで、JOTAのレース運は大幅に高まった。
アイロットはその後、12号車のクルーが赤旗の時点で良いポジションにいることはわかっていたと認めたが、オフィシャルが赤旗中断の間だけレースを延長することを選択するまで、彼らの勝算は宙に浮いたままだった。
「最初の数分間はクルマの中で待っていてくつろいでいた。状況がどうなっていて、何を修理する必要があるのかわからなかったんだ」
「もちろんドライバー全員が無事で安堵した。なぜなら、あのあたりは(超高速区間であり)クラッシュするのに良い場所ではないからだ」
「(クルマに)戻ってからは、自分たちがいいポジションにいるとわかっていたので気分が高揚していたと思う。(スティーブンスは)大丈夫だったが、エンジニアはとても動揺していた。彼は情熱的なフランス人で、自分たちが正しい側にいるべきだったと感じていた」
「状況が好転すると『よし、あと1時間40分仕事ができる』という感じだった。とはいえ、以前より良いウインドウとポジションにいること以外は何も変わっていなかった」
「僕たちは少しずつ取り組んできたので、攻めなければならないとか、考え方を変えなければならないとか、そういうことはなかったと思う」
レース再開後、アイロットはポイントリーダーのケビン・エストーレがドライブする6号車ポルシェ963を抑え込み、その差を12.363秒に拡げてチェッカーフラッグを受けた。
「最終セクターとオー・ルージュの一部で少し弱かった」と彼はエストーレとのバトルを振り返った。
「だからGTカーとのギャップを何とかしようとしたんだ。簡単なことではなかったけれど、自分のアドバンテージがどこにあるかはわかっていたし、いくつかの場所で良いギャップを作るためにタイヤをマネジメントすることが重要だった」と説明したアイロット。
「あるトラフィックの状況で彼より少しアドバンテージを得ることができ、そこからタイム差を広げていったんだ」
「レース再開当初、彼はいいファイトを見せていた。もし、あの時点で彼に捕まっていたらオーバーテイクするのは大変だったと思う。それは確かだ」
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