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意外と不労所得っぽくなかった!? ハイエンド・コンバーチブルの優雅な乗りこなし術とは──こんな時代だからこそオープンカーに乗ろう Vol.2

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意外と不労所得っぽくなかった!? ハイエンド・コンバーチブルの優雅な乗りこなし術とは──こんな時代だからこそオープンカーに乗ろう Vol.2

公共交通機関に長時間、乗るのがためらわれる昨今、オープンほど、3密を避けられる移動手段はない。今回は「今やファーストカーとして選べるほどの日常的な歩留まりよさを確保した」ラグジュアリーな4座オープンを取り上げる。

ファーストカーでもいいんじゃないか

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去る5月25日をもって緊急事態宣言が解除されたとはいえ、県境を越えづらい空気の中で、必要かつ至急の用のために、2000万円前後からのハイエンドな4座コンバーチブルのステアリングを操って、巷の自粛ポリスの鼻先を優雅にかすめて走り去るのは挑発的、もっと悪ければ、反市民的とすら映るかもしれない。

人目を気にしないにしても、ハイエンドな4座オープンは、日本の心地よいが短い初夏、五月晴れを過ぎてしまえば梅雨と酷暑とゲリラ豪雨というシーズン・スケジュールに鑑みると、甚だ非合理的な乗り物と見られやすい。あるいはあぶく銭か不労所得で買うもので、まさかファーストカーとは思われまい。そこが盲点だ。

むしろ近頃のハイエンドなオープンカーときたら、幌屋根でも内張りや遮音・遮温性能といった建てつけレベルからキチンと対策されている。高速道路を走っても、ペナペナとはほど遠い今どきのソフトトップ幌は、無闇に膨らんだりバタついたり、あるいは雨に叩かれて機関銃で撃たれているようなバタバタ音がしない。それにボディ剛性すら、下手なコンパクトカーより強靭ではないか? というレベルにある。要は閉じている間も、快適性と落ち着きは想像以上に保たれ、2ドアとはいえ4人が乗れる。開け放っている間の気持ちよさは説明するまでもない。

いわば非スポーツカーたる4座のハイエンド・オープンは、ひと昔前までは「優雅さ」だけが存在理由だったが、今やファーストカーとして選べるほどの日常的な歩留まりよさを確保した、そういう存在なのだ。実際のオーナーは数台持ち体制であることが多いが、屋根つき車庫があれば、1台保有のオーナーのファーストカーでもいいんじゃないか? そう思える選択肢になりつつある。

BMW AG. For Editorial Use only. For any other purpose contact Fabian Kirchbauer時間の流れは“特別な何か”

車種的には、メルセデス・ベンツのS560カブリオレなら4リッターのV8ツインターボは469ps・700Nmに9速ATで2260万円弱。対してメルセデスAMGのS63の4マチックプラス・カブリオレは612ps・900Nmに7速ATで2899万円。シフトフィールの滑らかさと回転数を上げないことを追求した前者と、広大なトルクバンドでグイグイ感とダイレクト感を重視した後者、という棲み分けは看取できる。BMW8シリーズでは、V8の4.4リッターツインターボで625ps・725Nmを絞り出すM8カブリオレ・コンペティションが2541万円だが、840d XドライブMスポーツ辺りなら1500万円弱から用意される。怒涛の加速感とドライビングの快楽を楽しむには前者、クルージング目的で距離を乗りたい人なら後者、という訳だ。

以上は2500万円前後を中央値とするドイツのプレミアム系だが、メルセデスAMGの少し上の価格帯、さらに3000万円台に近づくと、2トン超えのボディを軽やかにオープンエアで走らせるという、倒錯スレスレの重量級コンバーチブルの官能ワールドが開けてくる。筆頭はベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブルのV12だろう。静的状態でもクラフツマンシップが細部から溢れ出る、そんなクルーザーか調度品のように豪奢だがスポーツ・トリムのインテリアは、サルーンとは異なる4座オープンならではの魅力だ。ちなみにコンチネンタルGTはV8なら税込2700万円強となる。もう一方の英国ブランドの雄、ロールス・ロイスの4座オープンといえばドーンが3975万円で、同ブラックバッジ仕様なら4570万円。チューン違いの12気筒の6.6リッターツインターボから、前者は570ps・820Nmを、後者は601ps・840Nmを絞り出す。

2.6トン超の重量級ボディを外連味たっぷりに加速させながら、もしかすると心地よい風を乗員に感じさせるためだけに、この車が存在すると考えると、恐ろしく迂遠でムダな気もする。だがそれは、時計好きがトゥールビヨンの動きを飽かず眺めていられるのにも似て、こうしたハイエンド4座オープンの世界の住人が車上で感じる時間の流れとは、世間の喧騒どころか地球の重力をすら免れた、特別な何かなのだ。逆に同じぐらい重たくても電気自動車はクオーツ時計と一緒で、この種のストーリー性を求めること自体が難しく、ナンセンスだ。

窮屈さを経験したからこそ

かくしてベントレーとロールスは、やはり格が違うということだが、前者はVWグループ、後者はBMWグループなので、非ドイツ系グループで唯一選べる4座オープンという意味で、マセラティのグランカブリオMCの2215万円也と、同スポーツ2037万円の存在感は相当に大きい。加えて、満を持して今夏に市場投入されるレクサスのLC500hが、従来このクラス(というかジャンル)では主流だった大排気量の内燃機関と一線を画す、V8ハイブリッドというパワーユニットで、2000万円を切るであろう価格づけは、注目に値する。

というのも、2000万円オーバーの4座オープンともなると、現金一括で買っていくお大尽ももちろんいるが、償却ブツとしての車を考えて、リースや残価設定ローンで経費化してしまうパターンが圧倒的に多い。自動車税や保険までコミコミで月々の一定額の支払が生じるのは、いわゆるサブスクと同様だ。だが車両価格300万円強の国産SUVを頭金ナシで3年契約しても、月々6~7万円の支払いは生じるし、逆に車両価格は約3000万円のベントレー・コンチネンタルGTコンバーチブルでも、残価を約50%に設定して36回払いで月々払い額は、じつは50万円弱に収まる。つまり資金効率というか、一定の資金に対するゲインというEPS的な考えでいけば、後者の方がむしろ優ってしまう。「コスパ」とは絶対値の小ささの話だけでないし、生き金と死に金の分かれ目も、結局は使う人次第。その意味で自粛の窮屈さを経験した2020年初夏だからこそ、ハイエンド4座オープンは乗り時といえるのだ。

文・南陽一浩 編集・iconic

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