フォードから技術者をヘッドハンティング
2000年代のホットハッチ・ファンは幸せだった。多くのメーカーが参入し、ガソリンエンジンの性能は向上する一方。0-100km/h加速時間は、0.1秒単位で刻まれていった。
【画像】小さなファミリーカーを指す代名詞 VWゴルフ 初代から5代目 最新の8代目も 全138枚
4代目で人気を回復したゴルフは、以降でGTIのプレゼンスも復活。どの世代のGTIが最高か、という楽しい悩みも生まれた。そんな中で、歴代最大のアップデートを掴んだ世代が、この5代目だといえるだろう。
新世代の開発でフォルクスワーゲンを刺激した競合が、フォード。控え目な1.6Lエンジン仕様でも、1998年に発売されたフォーカスは素晴らしい仕上がりだった。マルチリンク式サスペンションを備える有能なシャシーは、4代目ゴルフの走りを霞ませた。
この課題解決のため、フォルクスワーゲンが選んだ手段はヘッドハンティング。会長職にあったフェルディナント・ピエヒ氏が、当初狙いを定めたのは技術者のリチャード・パリー・ジョーンズ氏だったが、そのグループ副社長は自身より高給を得ていた。
そこで、ウルリッヒ・アイヒホルン氏を招聘。その頃、フォーカス・ベースのミニバン開発へ携わっていたが、計画は中止になり、移籍を躊躇しなかった。かくして2003年に発売された5代目ゴルフでは、マルチリンク式サスペンションがリアに採用された。
むしろシャシーの設計自体が、フォーカスへ非常に近かった。優れたベースがあれば、優れたGTIも半分完成したようなものだった。
ボルボから2.5L 5気筒エンジンを流用
加えて、フォルクスワーゲンは市場の声にも応えた。通常のゴルフとの差別化を明確にするべく、フロントグリルにはレッドの差し色を約10年ぶりに採用。テレダイヤル・デザインのアルミホイールと、僅かにシャープなフロントバンパーも専用設定された。
車内では、タータンチェックのシートが復活。ボンネットの内側には、アウディA3から搭載が始まった2.0L 4気筒ターボエンジンが収まった。動力性能でも、GTIはクラスをリードする立場へ返り咲いた。
対するフォードも、フォルクスワーゲンの動きを眺めていただけではない。新しい2代目フォーカスに、2.0Lターボエンジンを搭載したSTが登場するという噂は、発表前からグレートブリテン島では広まっていた。
しかし、フォード傘下にあったボルボ由来の、2.5L 5気筒ターボエンジンが載ることまでは予想されていなかった。発売は5代目ゴルフ GTIの翌年で、英国価格は1500ポンド低く設定され、最大のライバルを強く意識していたことは間違いない。
2代目フォーカス STを突き動かす、2.5Lエンジンのトルクは今でも印象的。低回転域から驚くほど力強く、フルスロットルでは特有の5発ビートを車内へ盛大に響かせ、速度をグングン上昇させる。
特に、中回転域でパワフル。高域まで回す必要性を感じない。実際、5000rpmを過ぎると、パワー感は薄れていく。
乗り心地と操縦性を見事にバランス
今回ご登場願ったフォーカス STはマフラーが交換されていたが、純正でもラリーカーのようにアフターファイアを交えたことは有名だ。洗練された音響とはいえなくても、刺激的なサウンドは、エレクトリック・オレンジのボディカラーへマッチしていた。
シャシーは、アグレッシブな視覚・聴覚へ期待する以上に上質。英国の傷んだ一般道でも、乗り心地と操縦性を見事にバランスさせている。コーナーでは圧巻なほど機敏で、挙動を予想しやすい。
コーナリングは明瞭。吸い込まれるように、カーブの頂点をかすめる。リアアクスルが不安定になる素振りはまったくない。唯一、ダイレクトなステアリングは、初代が得ていた濃密なまでの感触を伴わない。
対して5代目ゴルフ GTIは、フォーカス STほどあからさまではない。市街地では、少し熱が入ったゴルフといった感じ。運転しやすく親しみやすく、比べればマイルドだ。
しかしエンジンの回転数を引っ張れば、気持ちを満たすサウンドが放たれる。パワフルで意欲的な個性も見えてくる。シャシーは懐が深く、ステアリングホイールへの活発な入力へ応えてくれる。連続するコーナーを、高い速度域で楽しめる。
気持ちを静めれば、クラッチやブレーキのペダル、シフトレバー、運転姿勢など、操るという体験自体も考え抜かれていることがわかる。すべてが極めて扱いやすく、乗り心地も良い。電子アシストのパワーステアリングが、僅かに鈍く感じられるのが惜しい。
高校教師も若者も、同じくらい楽しめる
この2台は、今回の5編の比較試乗で最も優劣を付けるのが難しいだろう。特徴が意外なまでに似ているからだ。速く快適で研ぎ澄まされたシャシーを備えた、万能選手的なホットハッチに仕上がっている。
それでもエンジンを主体に選ぶなら、フォーカス STだろう。5気筒エンジンは排気量が大きく柔軟。音響的な充足感も高い。
総合的なバランスでは、5代目ゴルフ GTIだろう。運転しやすく、インテリアはより上質。燃費も良好で、スタイリングは上品といえる。知的な高校教師も、ストリート・レーサー気取りの若者も、同じくらい楽しめるホットハッチだと思う。
ドライバーの狙い通りに反応し、不意に驚かせることはない。すべての人へ、すべてのものを、という初代ゴルフ GTIが目指した哲学を取り戻している。歴代のゴルフにおける、マイルストーンの1台といっていい。
フォーカス STは素晴らしい。だが、5代目ゴルフ GTIは最高だ。
協力:サム・ウィルコックス氏
ゴルフ GTI(Mk5)とフォーカス ST(Mk2) 2台のスペック
フォルクスワーゲン・ゴルフ GTI(Mk5/2004~2008年/英国仕様)
英国価格:1万9995ポンド(新車時)/1万5000ポンド(約288万円/現在)以下
生産数:約340万台(Mk5合計)
最高速度:234km/h
0-96km/h加速:7.2秒
燃費:12.4km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1366kg
パワートレイン:直列4気筒1984cc ターボチャージャーDOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:199ps/5100rpm
最大トルク:28.4kg-m/1800-5100rpm
トランスミッション:6速マニュアル(前輪駆動)
フォード・フォーカス ST(Mk2/2005~2010年/英国仕様)
英国価格:1万8495ポンド(新車時)/1万5000ポンド(約288万円/現在)以下
生産数:−台
最高速度:241km/h
0-96km/h加速:6.5秒
燃費:9.9.km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1317kg
パワートレイン直列5気筒2522cc ターボチャージャーDOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:225ps/6000rpm
最大トルク:32.5kg-m/1600-4000rpm
トランスミッション:6速マニュアル(前輪駆動)
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
驚異の9人乗り!? ダイハツ「すごいミニバン」販売好調で反響多数「すげえ」「でも良い感じ」全長4m級ボディに“4列詰め込み“ シェア9割超えの「グランマックス」尼国で人気に
まさかの新エンジン[SKYACTIV-Z]発表!! 決算発表から分かったマツダのすげえ内燃機関魂とは?
日産9000人削減の衝撃! ゴーン前会長が残した3つの“負の遺産”とは何か? 「ルノー支配」「販売偏重」のツケが招いた辛らつ現実を再考する
まさかの「“トヨタ”ノポルシェ」登場!? アンダー350万円で買える「MRスポーツカー」に反響多数! “カレラGT ”…じゃない!「高クオリティマシン」に「見てみたい」の声
約34万円! ホンダ新型「通勤快速スクーター」発表! 7年ぶりのアップデート!? スタイリッシュで洗練されたデザイン! 「リード125」何が変わった?
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?