今後も注目される1台になる
2024年8月15日~17日にRMサザビーズがアメリカ・モントレーで開催したオークションにおいてポルシェ「カレラGT」が出品されました。「0852」のシャシーナンバーを持つ出品車は、多数のオーナーを経て、バケットシートのインサートはダイヤモンドステッチ入りのコニャックレザーに張り替えられている1台でした。
鉄板のポルシェ「カレラGT」は1.8億円オーバー! 20年むかしのクルマとは思えない完璧な造形と機能…スーパースポーツにクラシックの価値が加わりつつあります
往年のモデルからアイデアを取り入れた
2000年のパリ・サロンで、ポルシェが「カレラGT」とネーミングされたスタディモデルを発表した時、多くの者はそれが近い将来プロダクションモデルとして世に送り出されることを確信していたに違いない。
そもそもカレラGTのプロジェクトは、ポルシェがル・マン24時間レースで「911GT1」で勝利を収めた後、新たなLMP1-98プログラム用のニューマシンを開発したことに端を発するものだった。
その最も大きな話題は、911の水平対向6気筒ターボエンジンから離れ、密かにフットワーク・アローズのために開発されていた5.5Lの自然吸気V型10気筒エンジンを採用したことだったが、FIAは1999年にル・マン・プロトタイプ・クラスを廃止。
ポルシェはそれまでに投じた多額の資金を回収する必要に迫られたのだ。結果誕生したのが冒頭で触れた2000年に発表されたカレラGTのスタディモデルであり、2003年のジュネーブ・ショーではトータルで1000台程度という生産台数計画を掲げて、そのプロダクション仕様が公開された。
カレラGTのボディデザインは、卓越したエアロダイナミクスを主張すると同時に、ポルシェの歴史を熟知するファンには特別な感情を抱かせる、きわめて魅力的なディテールを持つものに仕上げられていた。
ヘッドランプの造形はポルシェ「917」から、ボリューム感にあふれるフロントフェンダーは「718RSR」から。インテリアに目を向ければこちらも917が軽量化のためにバルサ材を使用していたことを思い起こさせる、ウッド製のシフトノブなどが装備され、その雰囲気はスポーティでありながら十分にラグジュアリーな空間にまとめられているのが分かる。
最高速は330キロを記録
カレラGTの基本構造体となるのは、もちろん軽量でかつ高い剛性を誇るCFRP製のモノコックタブだが、ポルシェはさらにシェル状のリアサブフレームにもCFRP素材を導入することに成功した。このサブフレームに包まれる宝石のようなエンジンは、もちろんスタディモデルと同様にV型10気筒自然吸気だが、排気量は若干拡大され5.7Lという数字になった。
重量がわずかに193kgというこのエンジンの軽量性は、アルミニウム製ピストン、アルミニウム製インテーク・マニホールド、チタン製コンロッド、鍛造クランクシャフトなどの採用によって実現されたもので、さらに潤滑方式をドライサンプとすることでエンジンの搭載位置を低く抑えることにも成功している。
気になる最高出力と最大トルクは、それぞれ612ps、590Nmというのが発表時のデータ。ちなみにこのエンジンに組み合わされるトランスミッションは6速MTが唯一の設定。静止状態からわずか3.6秒で0-96km/h加速を終了し、最高速では330km/hを記録した運動性能は大いに魅力的だ。
短い間に多数のオーナーの手にわたった1台
最終的に1270台が生産されたとされるカレラGTの中で、今回RMサザビーズのモントレー・オークションに姿を現したのは、「0852」のシャシーナンバーを持つもの。ちなみにアメリカには644台のカレラGTが正規に輸出されているが、0852はもちろんその中の1台で、ポルシェによればその完成月日は2005年6月7日。
じっさいに2005年7月には南カリフォルニアのカスタマーに納車され、以来、多数のオーナーの中で大切に扱われてきた。その間にバケットシートのインサートはダイヤモンドステッチ入りのコニャックレザーに張り替えられたほか、センターコンソールやダッシュボード、ステアリングホイール等々も同色でアレンジされ、その魅力はさらに高められた。
出品時の走行距離はわずかに5855マイル(約9368km)のカレラGTに、RMサザビーズは125万ドル~175万ドル(邦貨換算約1億8280万円~2億5600万円)のエスティメート(推定落札価格)を設定。オークションの結果は135万2500ドル(邦貨換算約1億9780万円)で落札となった。このリザルトは、今後のカレラGT、あるいはその直接の後継車ともいえる「918スパイダー」のオークション価格に大きな影響を与えることは間違いないだろう。
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今も所有しているのかな?